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東京五輪「銀」→「ダメ人間」経て雪辱の金メダル 文田健一郎の勝ちに徹したハイブリッドレスリング…担当記者が見た

スポーツ報知 / 2024年8月7日 23時15分

金メダルを獲得し、日の丸を掲げる文田(カメラ・岩田 大補)

◆パリ五輪 第12日 ▽レスリング(6日、シャンドマルス・アリーナ)

 レスリング男子グレコローマンスタイル60キロ級で文田健一郎(28)=ミキハウス=が悲願の金メダルに輝いた。6日の決勝で曹利国(中国)を4―1で下し、銀メダルだった21年東京五輪の悔しさを晴らした。試行錯誤の末に完成した“ハイブリッド・レスリング”で、日本勢のグレコローマンスタイルでは、1984年のロサンゼルス五輪の宮原厚次以来、40年ぶりの快挙を達成した。その過程や変身ぶりをレスリング担当の林直史記者が「見た」。

 文田の3年間が凝縮された金メダルだった。4―1で勝ち切ると、マットの中央に立ち、会場の外にあるエッフェル塔に向かって右人さし指を掲げた。銀に涙した東京五輪から3年。「たくさんの苦悩や葛藤があった。でも、それと同じぐらい楽しいこともあって、トータルしてプラスが上回っていたので優勝できたのかな」。妻・有美さん(37)と長女・遥月(はづき)ちゃん(1)が見守る観客席へ笑顔を向けた。

 五輪に憧れたのは12年ロンドン大会。父・敏郎さん(62)に連れられ、父の教え子の金メダリスト・米満達弘(38)の決勝を観戦し、国歌を聴いた。世界選手権を2度制して本命として同じ舞台に立った21年東京五輪。投げを徹底的に警戒され、決勝で敗れた。大会後は交際していた有美さんと朝まで酒を飲んで昼過ぎに起き、また酒を買いに出た。「ダメ人間みたいな生活」を1週間ほど続けたという。

 それでも切り替えられず、大学時代の同期の山本貴裕さん(29)に会いに神奈川から山口まで車を運転した。関西や四国を回りながら約2週間の旅。再会した友人が悔しさを押し殺していた様子を見て、不思議と気持ちが軽くなった。「僕の周りの人も皆、悔しいけど頑張って前を向いてくれている。自分も頑張って前を向かなきゃな」。13時間かけて自宅まで戻り、練習を再開した。

 ただ、東京五輪の苦い経験から小学校時代から父と磨いた「投げてナンボ」のスタイルを否定。「自分への罰」と投げを封印し、守りを固めて勝ちに徹した。練習も試合も楽しめなくなったが、金メダルを取るためと割り切っていた。転機は昨年9月の世界選手権だ。決勝で相手の超攻撃的なレスリングに屈し、目が覚めた。「ハイブリッドなレスリングでいいんだ」。極端すぎた考えを改めた。

 準決勝は豪快なそり投げで制し、決勝は手堅く勝ち切った。試行錯誤の日々があったからこそ、勝ち得た金メダルだと感じた。グレコでは日本勢40年ぶりの頂点。「日本のグレコローマンがこの一歩から二歩、三歩と闊歩(かっぽ)していけるような、そんなメダルになったら」。高い壁を乗り越えた男の言葉には重みがあった。(林 直史)

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