【高校野球】5歳時に亡くした母との最期の約束を忘れたことはない…滋賀学園・高橋俠聖が天国に捧ぐ好救援
スポーツ報知 / 2024年8月8日 5時0分
◆第106回全国高校野球選手権大会第1日 ▽1回戦 滋賀学園10―6有田工(7日・甲子園)
高校球児による真夏の祭典が開幕した。開幕戦では、滋賀学園が終盤に有田工(佐賀)を突き放し、待望の夏1勝。5歳時に母を亡くした左腕・高橋俠聖(3年)が4回途中から8回まで無失点に抑える好救援を見せた。
雄姿は届いた。6点リードで迎えた9回。2点を返されながら、滋賀学園・高橋俠聖は冷静さを失っていなかった。最後は遊ゴロ併殺でゲームセット。好プレーの遊撃手・岩井天史に向け、笑顔で左拳を突き出した。「みんなが思い続ける聖地で、こういう結果を残せた。天国にいるお母さんにも、しっかり報告したい」。特別な1勝をかみしめた。
初回に3点を先制したが、先発の脇本耀士が4回に5安打を集中されて逆転される展開。なおも2死一、三塁でマウンドを託され、空振り三振でしのいだ。「あの場面で行くってことは、多少信頼を置いてもらっている。ここは結果で見せつけないと」。5~8回は無失点と流れを引き寄せ、終盤の6点勝ち越しを呼び込んだ。
野球好きな両親の元で育った。朝早くから、家族で父・伸浩さん(44)の草野球について行くのが日課。変化があったのは5歳の時だ。母・千穂さんが、がんのため23歳で他界した。“ママっ子”だった高橋は「どうしても野球をやらせてほしい。お母さんが野球をやっている姿を見たいと言っていたから」と父に頼み、本格的に取り組み始めた。伸浩さんは仕事で帰りが遅くなることも多かったが、高橋はその間も一人でグラウンドに足を運び、練習に明け暮れた。
野球を始めて以降、遺骨ペンダントを常に持ち歩く。帽子のつばには「寝ても覚めても思い続ける大切な人」という意味の4文字「昼想夜夢」を記す。「お母さんの大好きな野球で、お父さんを支えてあげて」。母と病室で交わした最期の約束を、一瞬たりとも忘れたことはない。迎えた最後の夏、滋賀大会ではエースナンバーを背負って15年ぶりの優勝に貢献。そしてこの日、アルプスで見守った父と天国の母に、チーム待望の夏1勝を届けた。「目標は優勝なので、みんなと協力してやっていきたい」。滋賀県勢悲願の日本一へ、高橋は力強く歩み始めた。(瀬川 楓花)
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