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20年ぶりにメダルを獲得したセーリング470級 五輪種目存続のため奮闘した日本セーリング界…パリ五輪

スポーツ報知 / 2024年8月8日 22時18分

◆パリ五輪 第14日 ▽セーリング 混合470級(8日、マルセイユ・マリーナ)

 メダルレースで3位となり、岡田奎樹(トヨタ自動車東日本)、吉岡美帆(ベネッセ)組が銀メダルを獲得。日本に20年ぶりのメダルをもたらしたセーリングの470級は、実は、パリ五輪で行われなかった可能性が高かった。日本のお家芸である470級を五輪に残すため、日本のセーリング界は、世界を巻き込み、一丸となって立ち向かった。

 2018年5月12日から4日間、ロンドン・チェルシーで、日本のセーリングの運命を握る会議が行われていた。国際セーリング連盟中間総会。24年パリ五輪の種目を決める舞台だ。まず12日にイベント(種目)委員会が出した結果は、470級の削減という衝撃の報だった。

 日本で、一報を聞いた日本470級協会の堀川郁子国際委員長は「ついに来たか」と天を仰いだ。しかし、2日後の14日に、評議員会が開催され、投票で最終決定となる。「そこでひっくり返すしかない」と、堀川は願った。日本にとって、五輪でメダルを2個取った470級は、生命線。失うわけにはいかなかった。

 セーリング競技は、各種目がライバルだ。五輪が、どの種目を採用するかは死活問題。1人乗りで簡単にできるレーザー級は普及度で飛び抜ける。テレビ映りなど、引きつける魅力はナクラ17級や49er級だ。大型クルーザーで派手にと考える国もあり、世界の駆け引きの中で、470級は、常に不利な立場にいた。

 現場では、日本連盟の河野博文会長(当時・故人)を中心に、票読みとロビー活動がひんぱんに行われた。斎藤愛子オリンピック強化委員(当時)は「評議員のリストを作って、説得に当たった」。東京五輪10種目のうち、5種目の存続は決まっていた。残り5種目は、各種目の協会や国の思惑で、50種類以上の組み合わせ案が机上に乗った。

 国際470協会は、当然ながら男女2種目存続を強く主張した。日本にとっても最高の選択だったが、河野会長は「それでは470は五輪からなくなる。生き残るなら混合1種目にするべき」と、種目数を減らすことを主張した。

 米国やオーストラリアは、大きい体格向けのフィン級というのが得意種目だった。同級も削減対象だったので、同級の関係者らは470級を攻撃してきた。斎藤強化委員は、それを逆手に取り、フィン級を快く思わない協会や関係者を仲間につけていった。

 パリ五輪採用種目の評議員投票は7回にも及んだ。3種類の組み合わせが残った6回目の投票。そこで、470級が存続する2種類の案が最終投票に残り、どちらが選ばれも470級は混合としての存続が決まった。日本が一丸となって470級の存続を決めた瞬間だった。

 その日から、5年が経った。日本セーリング界が必死で守ったパリ五輪の混合470級で、岡田奎樹、吉岡美帆組が、日本勢として20年ぶりの銀メダルを獲得した。470級存続に精力をつぎ込んだ河野博文元会長は、この日のメダルを見ることなく、2022年11月5日、76歳の生涯に幕を閉じた。(吉松 忠弘)

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