17歳 戦後夏季五輪男子最年少の銀メダル スポクラ安楽宙斗、あと3手…つかめなかった金も「最強」への挑戦続く
スポーツ報知 / 2024年8月10日 6時0分
◆パリ五輪 第15日 ▽スポーツクライミング(9日、ルブルジェ・スポーツクライミング会場)
9日の男子複合で、高校3年生の安楽宙斗(そらと、17)=JSOL=が銀メダルを獲得した。この競技で日本男子初の表彰台に立った。準決勝を首位通過した安楽は、決勝のボルダーで第1課題から完登するなど首位通過。メダルを懸けた後半のリードは完登まであと一歩で力尽きて、首位選手を超えられなかった。
金メダルまで、あと3手だった。この種目で日本勢初の表彰台も、頂点にはわずかに届かなかった。安楽は「初めての五輪で銀をとれたのはうれしい。でも悔しさの方が大きい」と率直な胸の内を語った。首位で迎えた後半のリード。あっという間にメダル圏内に入ったが、金を確定させる手前のホールド(突起物)をつかみきれなかった。「単純に、やっちゃった」。首位と9・8点差の銀メダルに、17歳は「まだまだ改善の余地がある」と悔しそうに壁を見上げた。
「脱力系クライマー」と呼ばれる。男子は筋肉量の多い選手がほとんどだが、安楽は力を逃がして最小限のパワーで登る。スタイル確立のきっかけは「我慢がどんなことにおいても苦手」。クライミングが上達してくると一般的には力で登ることを覚えるが、「つらくないように常に腕を伸ばして、重心を落として登っていたら『力を逃がす』が分かった」と話す。知らず知らずのうちに、誰にもないような武器が身についた。
身長168センチと大きくはないが、腕を横に広げた長さは驚異の181センチ。遠い突起物も難なくつかむ。22年5月からは週2回、1~2時間の筋トレも開始。「技術に力が加わっただけで動きに磨きがかかった。肩幅もかなり広くなった」と誇らしげだ。昨季W杯に初参戦すると、ボルダーとリードの両種目で年間総合王者に輝く史上初の快挙を成し遂げ、海外からは「クレイジー」と称賛された。
興味があるのは“壁”。今大会、準決勝のボルダーは首位だったが登り切れなかった第4課題が頭から離れなかった。選手村に帰るバス、ご飯を食べながら、部屋に戻っても「う~ん」。夕方急に、「分かりました! こうやれば良かった」。それを聞いた日本代表の安井博志コーチ(49)は「パズルを解く楽しさのようなものを感じている。将棋とか囲碁の選手に近いようなメンタリティーかな」。大会は決勝に残れなくても最後まで観戦。現地に行けない大会も動画視聴。とにかくクライミングが好きだ。
「脱力系クライマー」の名を、世界に知らしめた高校3年生の夏休みの挑戦は幕を閉じた。頂点に届かずも、目の前の壁と向き合い続けた先に銀メダルがあった。「もっと最強と言われるクラスになれるように頑張ります」。まだ17歳。安楽の挑戦は、またここから始まる。(手島 莉子)
◆日本男子の五輪年少メダル 安楽は17歳269日で、夏季では戦後最年少のメダル獲得となった。17歳でメダルを取っているのは56年メルボルン大会400メートル自由形銀の山中毅(321日)、12年ロンドン大会400メートル個人メドレー銅の萩野公介(348日)、88年ソウル大会体操団体銅の池谷幸雄(360日)のみ。戦前では32年ロサンゼルス大会の1500メートル自由形で北村久寿雄が14歳309日で金メダルを獲得している。
◆安楽 宙斗(あんらく・そらと)2006年11月14日、千葉・八千代市。17歳
▽競技歴 小学2年時に父と近所のクライミングジム「グリーンアローボルダリングパーク八千代店」に行ったことがきっかけで競技を始める。21、22年リード種目で世界ユース選手権を連覇し、22年複合ジャパンカップ、23年ボルダー&リードジャパンカップ優勝。23年シーズンはW杯初参戦にして、ボルダーとリードの2種目で年間総合王者に輝く史上初の快挙を達成。
▽名前の由来 父・武志さんが宇宙好きで、宇宙の漢字から「宙」。音の響きから「と」をつけ、ひしゃくの意味を持つ「斗」を漢字に選んだ。母・久美子さんは「壮大な宇宙のような入れ物を心に持った人間になって欲しい」と思いを込めた。
▽ニックネーム ふわふわクライマー。必要以上の筋力を使わず登る技術にたけていることから「脱力=ふわふわ」。
▽安楽家のルール 誕生日の人がホールケーキにそのままかぶりつく。
▽母の手料理で好きな物 鶏の唐揚げ、豚肉の生姜焼き、ハンバーグなど
▽得意科目 数学
▽苦手科目 社会、古文
▽家族 両親と弟
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
安楽宙斗、金メダルまで“あと3手”「中盤、ぐちゃぐちゃした」17歳の高校生 この先は「最強と言われるクラスに」
スポーツ報知 / 2024年8月9日 22時59分
-
スポクラ安楽宙斗が日本男子初メダルの銀「リードは完敗」 準決勝、決勝ボルダーを首位通過も頂点届かず…パリ五輪
スポーツ報知 / 2024年8月9日 21時19分
-
安楽宙斗、日本男子初の銀メダルもリードは「ダメダメな登り。完敗」 競技開始は父のダイエットがきっかけ
スポニチアネックス / 2024年8月9日 20時42分
-
スポクラ安楽宙斗が銀 日本男子初のメダルを獲得「金を狙っていたので悔しい」夏休み中の現役高校生が五輪で躍動…パリ五輪
スポーツ報知 / 2024年8月9日 20時27分
-
安楽宙斗は第1種目のボルダーをトップでリードへ 日本男子初のメダルなるか…スポーツクライミング男子複合決勝
スポーツ報知 / 2024年8月9日 18時59分
ランキング
-
1スポクラ、17歳・安楽宙斗の日本男子初の銀メダルにネット絶叫「惜しかった~!!! 4年後に期待!」
スポーツ報知 / 2024年8月9日 20時39分
-
2AMI ブレイキン女子初代金メダル!早朝ながらもネット大興奮「日本人として誇らしい」「歴史的快挙!」
スポニチアネックス / 2024年8月10日 5時11分
-
3卓球男子 3大会連続のメダル届かず 涙の張本智和「最悪の大会」から「凄くいい大会」へ
スポニチアネックス / 2024年8月9日 20時18分
-
4現役高校生17歳の安楽宙斗が銀メダル! せんべい好物の昨季W杯王者 スポーツクライミング男子日本初
スポニチアネックス / 2024年8月9日 20時30分
-
5やまぬ誹謗中傷と嫌がらせ 常連だった五輪選手についてTV取材を受けただけなのに…一時休業に追い込まれた飲食店店主の嘆き
NEWSポストセブン / 2024年8月9日 16時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)