玉井陸斗「最高」の銀 王国の中国が最大級に警戒していた17歳が歴史作った “有言実行”飛び込み界初の表彰台
スポーツ報知 / 2024年8月11日 5時0分
◆パリ五輪 第16日 ▽飛び込み(10日、アクアティクスセンター)
10日の男子高飛び込み決勝で玉井陸斗(17)=JSS宝塚=が507・65点で2位となり、銀メダルを獲得した。1904年セントルイス五輪から実施されている飛び込みの日本勢で初めて表彰台に立つ快挙。7位だった21年東京五輪に14歳で初出場してから3年。今大会は予選2位、準決勝を3位通過し、トップレベルの実力を発揮。飛び込み界の申し子が世界の壁を打ち破った。
こん身のガッツポーズとともに、新たな歴史の扉を開いた。玉井は3位で迎えた最終演技。5255B(後ろ宙返り2回半2回半ひねりえび型)を99・00、この日最高点で締めて銀メダルをつかんだ。1920年、競泳選手だった内田正練(まさよし)がアントワープ五輪で男子高飛び込みに初出場してから104年。「自分が(日本勢)第1号のメダリストになれるように」と夢を語っていた17歳が、その言葉通りの偉業を成し遂げた。
これまでの飛び込み最高成績は1936年ベルリン大会、男子板飛び込みの柴原恒雄と女子高飛び込みの大沢礼子の4位だった。男子高飛び込みでは、2000年シドニー五輪の寺内健がマークした5位。王国・中国を中心とする世界の壁にメダル獲得を阻まれてきた。所属の先輩でもある寺内氏に「僕は凡人。(玉井)陸斗は天才」と言わしめた才能が、ついにパリで花開いた。
世界と比べて160センチ、55キロとサイズはないが、体をひねって回転させる際に必要な体幹の強さは天性のものを持っていた。馬淵崇英コーチ(60)が「普通は高校生以上(で習得する)」という難易度の高い技も、小学6年時にマスター。体幹が強いことで体が締まり、足先までが一本の棒のようになるという。黙々と競技に取り組む姿勢も一級品。幼少時は高さへの恐怖よりも、なかなか技ができずに悔し泣きした。高さ10メートルから「人の倍」という1日30本を飛び、努力を重ねて成長してきた。
昨冬、毎年恒例だった上海(中国)での合宿が中止となった。馬淵コーチが明かす。「陸斗がライバルになった。もう、練習場に入れてもらえない」。王国が最大級に警戒するほどの選手に成長。この日、その中国の一角を崩した。「陸斗が出てきたことは奇跡。金を目指すというのは、彼こそが実現できる」と同コーチ。日本飛び込み界の至宝が、ついに表彰台にたどり着いた。(大谷 翔太)
玉井「(メダルは)夢、目標であるものだったので、すごい重みがある。すごいうれしい。最高です。(史上初の表彰台は)知っています。今までにないくらいうれしい。実感が湧かない。1位を目指せる位置にいたので、1位を目指していきたい」
◆玉井 陸斗(たまい・りくと)2006年9月11日、兵庫・宝塚市生まれ。17歳。3歳で水泳、小学1年から飛び込みを始める。シニアデビューとなった19年4月の日本室内選手権で史上最年少優勝。21年東京五輪男子高飛び込み7位で21年ぶりの入賞を果たし、22年世界選手権で日本史上最年少、過去最高位の銀メダル獲得。160センチ、55キロ。家族は両親と兄。
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