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北口金でも心残り「名言が残せなかった」3か国語で取材対応「疲れ、言語も交ざりすぎて言えなかったのが残念です」

スポーツ報知 / 2024年8月12日 5時0分

女子やり投げで金メダルを獲得し、日の丸を掲げて喜ぶ北口榛花(カメラ・岩田 大補)

◆パリ五輪 第16日 ▽陸上(10日、フランス競技場)

 10日の女子やり投げ決勝で世界女王の北口榛花(26)=JAL=が日本女子トラック&フィールド種目初の金メダルに輝いた。1投目に65メートル80を投げ、一度も首位を譲らなかった。昨年の世界選手権に続く優勝で、陸上では2004年アテネ五輪の男子ハンマー投げの室伏広治、女子マラソンの野口みずき以来5大会ぶりの金。閉会式ではブレイキンの半井(なからい)重幸(22)と旗手を務めることになった。

 世界の頂点に立った瞬間、北口の目には涙が浮かんだ。「うれしいだけじゃ足りない。言葉にできない」。勝利した選手だけが鳴らすことを許される、フランス競技場の鐘。力強く8回鳴らす。会場が沸く中で日の丸を掲げながら競技場を駆けた。「金メダルがとれるか不安があった。不安が一気に抜けていくようだった」と表情が緩んだ。

 圧倒的な勝負強さを見せた。昨年7月から今年5月まで11連勝。そのうち最終投てきがベストとなったのは8試合。まさに“逆転の北口”。だが、今回は違った。「全員実力がある。いつも通り6投目までゆったりしてられない」。いきなり美しい弧を描き、65メートルラインを越えた。1投目の自己最高記録で今季ベスト。競技場が揺れるほどの歓声が、北口に押し寄せた。5投目の64メートル73を含めても、誰も北口を上回れない。最終6投目を残して優勝が決まった。

 危機を乗り越えた。5月14日夜、東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンターの1階会議室。北口は泣いていた。状態が上がらない日々に苦しみ、ダビド・セケラク・コーチに必死に訴えた。「私は北口榛花。他の人とは違う」

 筋力強化中心で、半日の休みが週に1度しかない練習日程を組んだ。上半身が硬直する、経験のない症状が出た。「体が全く動かなくなった」。コーチやトレーナーを交え、約2時間話した。練習の負荷を修正して休みも増やした。細心の注意を払ってケアを徹底。何とか間に合わせた。

 モットーは「自分自身が競技を楽しむこと」。元プロバスケットボール選手の母からの教えで「自分が楽しくしていないと見ている方も楽しく見られないし、選手として憧れられる存在にもなれない」。そんな北口が「君が代」を聴きながら流したのは「不安とか苦しみとかから解放された」安堵(あんど)の涙。「自信を持って臨めたのは、信じてくれる人がいたからだと思っています」と言葉を紡ぎ出すと、張り詰めていた気持ちが一気にほどけた。

 悲願の五輪金メダル。全てが終わってから、一つ心残りが生まれた。「名言が残せなかった」。英語、チェコ語でも取材対応し「疲れているのもあって、言語も交ざりすぎて言えなかったのが残念です」と笑った。「現実的に70メートル投げたい。満足できない理由があるのは、とても幸せだなって思います」とかみしめるように話した。女王が見据える未来は、希望に満ちあふれている。(手島 莉子)

 ◆北口 榛花(きたぐち・はるか)1998年3月16日、北海道・旭川市生まれ。26歳。バドミントンは小学6年時の全国大会団体戦で優勝も、旭川東高で陸上やり投げに転向。2年時から全国高校総体を連覇。3年時の2015年世界ユース選手権(コロンビア)で金メダル。16年に日大へ進学。19年に66メートル00の日本新(当時)を樹立した。20年にJAL入社。21年東京五輪12位。世界陸上は22年オレゴン大会で銅メダル、23年ブダペスト大会で金メダル獲得。23年9月に67メートル38の日本新記録をマークした。家族は両親。

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