レスリング・高谷大地 兄と4度目の挑戦でついに銀メダル「受け取ったたすきをメダルにつなげられた」…パリ五輪
スポーツ報知 / 2024年8月12日 5時20分
◆パリ五輪 第16日 ▽レスリング(10日、シャンドマルス・アリーナ)
10日の男子フリースタイル74キロ級の高谷大地(29)=自衛隊=は決勝で敗れ、この階級では28年ぶりのメダルとなる銀を手にした。
最後まで高谷らしかった。準決勝まで痛快に攻めて強豪を撃破してきたが、一転して決勝は、あっさりと2分12秒で首を固められてフォール負け。試合後、対戦相手を抱き上げて祝福し、「決勝でフォール負けするのも僕らしい。これが僕の歩んできた道。良く頑張った!」と努めて明るく振る舞った。目は真っ赤で声も震えていたが、決して後ろ向きな言葉は口にしなかった。
自分を「脇役」と決めたのは16年リオ五輪の時だった。大きく見えた兄の惣亮(35)=拓大職=がメダルに届かず「自分より才能がある兄でさえここまで。自分では届かない」と悟ったからだった。21年東京五輪は選考レースで敗れ、同五輪に出場する兄のサポートに回った。練習相手を務め、2人で部屋を借りて洗濯など生活面でも支えた。
本番は無観客だったためにテレビで観戦。兄が初戦で敗れた姿に、喪失感に包まれた。支えてきた時間が無駄だったとさえ感じた。「人が頑張るのを応援しているだけだと、その人のせいにしかできない。これじゃもったいない」。兄の敗戦を機に「物語の主役になる」と覚悟を決めた。
東京五輪の選考レースを当初は65キロ級で戦っていた。普段の体重から減量幅は12キロもあり、無理がたたった。摂食障害になり、会場で嘔吐(おうと)し、試合で体力が3分も持たず、観客に叱責(しっせき)されたこともある。心配した兄から「そんな状態でやってるお前は見てられん」と自身が守ってきた74キロ級に上げるように促された。世界の層が厚い激戦階級を託され、兄弟で4度目の五輪挑戦でついに銀メダルをつかんだ。
「僕一人ではかなえられなかった。高谷惣亮という人間が3大会見せ続けてくれて、受け取ったたすきをメダルにつなげられた。高谷兄弟の物語としては十分な成果を得られた」。主役となった弟は胸を張った。(林 直史)
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