「マジで絶頂。金超えたっす」パリ五輪閉会式でトム・クルーズと握手のレスリング金メダル・日下尚が帰国

トム・クルーズと握手した右手をみせる日下尚（カメラ・岩田　大補）

　パリ五輪に出場した日本選手団が１３日、成田空港と羽田空港に分かれて帰国した。１１日閉幕の大会で海外開催では最多となる金メダル２０個を獲得。銀１２、銅１３と合わせた総数４５個も前回東京五輪に次ぐ歴代２位で、連日のメダルラッシュに沸いた。レスリングの男子グレコローマンスタイル７７キロ級金メダルの日下尚（くさか・なお、２３）＝三恵海運＝は、１１日の閉会式で米俳優トム・クルーズ（６２）と握手する強運に恵まれ、「オリンピックドリームを存分に楽しませてもらった」と余韻に浸った。１４日には都内で解団式が開かれる。

　８個の金を含む１１個のメダルを量産した史上最強のレスリング代表の帰還に、空港には約６００人のファンが詰めかけた。午後４時５分、到着ロビーに姿を見せた選手を「おめでとう」「お疲れさま」のかけ声が包んだ。胸元にメダルを光らせたレスラーたちは、出迎えに訪れた家族や関係者と笑顔の再会を果たした。

　ひときわオーラ全開だったのは、明るいキャラクターと巧みな話術で一躍人気者になった日下だった。胸を張り、にこやかに人垣の前を“行進”した。１２日にパリを離れる前の空港で、１１日の閉会式に参加した際に、米俳優トム・クルーズと握手したことを明かしていた。式に出演したクルーズが、会場の屋根部分からワイヤで下りた直後に訪れた幸運だった。

　「トイレに行こうとしたらスタッフの方に『いいことがあるから、待っておけ』と言われた」。素直に待っていると、目の前にクルーズが下りてきた。映画のような話が、現実に起きた。「やばいっす。まじで絶頂。金、超えたっす。持ってますよね」。代表作「トップガン」を５回は観賞したほどのクルーズマニアの興奮は、今も冷めぬままだ。

　一生の思い出とともに、成田に降り立った。夢舞台を満喫し、金メダリストとして日本に帰った。ご褒美のような握手もあった。自らを凡人と称する２３歳が、超人へと進化を遂げたパリの夏物語。「オリンピックドリームを存分に楽しませてもらいました」。仁王立ちで決めぜりふを残し、日下は空港を後にした。（高木　恵）

　◆岸田首相と面会

　岸田文雄首相（６７）は１３日、パリ五輪の日本選手団メダリストと官邸で面会した。既に帰国していた柔道男子６６キロ級で２連覇を果たした阿部一二三は「チームジャパンは一体感を持って挑み、最高のパフォーマンスの発揮を心がけた」とあいさつ。首相は「素晴らしい勇気を全ての国民に与えてくれた」と謝意を伝えた。面会には、メダリスト計６６人が参加した。