ラヴェルの名曲「ボレロ」の誕生秘話

（ｃ）２０２３　ＣＩＮ―＠―ＣＩＮＦＲＡＮＣＥ　ＳＴＵＤＩＯＳ―Ｆ　ＣＯＭＭＥ　ＦＩＬＭ―ＳＮＤ―ＦＲＡＮＣＥ　２　ＣＩＮＭＡ―ＡＲＴＭＩＳ　ＰＲＯＤＵＣＴＩＯＮＳ

◆「ボレロ　永遠の旋律」 （アンヌ・フォンテーヌ監督、公開中）

　パリの天才音楽家モーリス・ラヴェルの人生とともに描く、代表曲「ボレロ」の誕生秘話。第１次世界大戦後、新しい表現や価値観が求められた１９２０年代のフランスは「狂乱の時代」といわれる。１７分間の名曲はそんな中、２８年にバレエ音楽を目的に作られた。

　序盤で天才の若い頃の挫折が出てくる。七転八倒で「ボレロ」を完成させるも、バレエの官能的過ぎる演出を見て曲を侮辱されたようなショックを受ける様子などが次々に展開。１２１分の上映時間があっという間に過ぎていく。孤高に生きる主人公の、音楽に向き合う純粋さとともに、独特のカメラワークが印象的だ。

　これらの背景を知った上で改めてこの曲に触れると、それまでとは違って聴こえる。リズムを刻み続けるあのメロディーが単純に心地良いものでなく、ラヴェルの叫びのように思えてくる。