「見栄えよりも結果」ヤクルト20年ドラ1慶応ボーイが目指す鉄腕ロード「ランナー出しても0点で帰る」
スポーツ報知 / 2024年8月18日 6時30分
各担当記者の推し選手を紹介する「推しえて」第9回は、ヤクルト・木沢尚文投手(26)。今季はここまで44試合(16日時点)に登板し、プロ初セーブを挙げるなど3勝2敗、16ホールド、5セーブをマーク。3年連続50登板のみならず、自身初の60登板も視界に入れる“慶応ボーイ”の成長過程に迫った。(取材・構成=長井 毅)
石の上にも3年―。木沢は、2年目の22年から2年連続で50登板を達成。名リリーバーへの道を着実に歩んでいる。4月18日の中日戦(バンテリンD)では8回途中から登板し、イニングまたぎの末、プロ初セーブをマーク。重要なポストも任されるまでになった。プロ生活で一番濃密な時を過ごしていることが、ここまでの振り返りでも伝わってきた。
「年々、投げる場面のシチュエーションも、よりハードなものになっています。そこで新しい失敗や経験があるので(これまでと)変わらず勉強、勉強。課題が出たら、どう潰すか、その繰り返し。あっという間にここまでが終わってしまったという感じです」
慶応から慶大商学部に進み、20年に入団したドラ1右腕は、理論派に映る。
5月24日の中日戦(バンテリンD)では2―1の8回1死走者なしの場面で登板。福永に中前安打。続く細川に右翼フェンス直撃の適時二塁打を許し、追いつかれた。なかなか勝ち星に恵まれていなかった先発・サイスニードの白星を消してしまい、ベンチ裏でうなだれた。
細川には追い込んでから高めに浮いたカットボールを痛打された。
「あの試合は福永選手、細川選手の右打者2人に打たれてしまった。自分の中で迷いを持ちながら投げてしまったボールがあった。『この失敗だけは許されない』という失敗をしてしまった。場面的に失投のリスクが大きい場面だったので、すごく後悔の残るマウンドにはなりましたけど、その経験も勉強になりました」
外角へのカットボールと対になる内角へのツーシームで勝負したが、その球種の選択や精度を反省した。
冒頭のコメントにあるように、その後も「課題が出たらどう潰すか」。まるで試験対策のために公式を覚えて問題を解くように―。何度も自問と実践を繰り返した。
交流戦最終カードとなった6月14日のオリックス戦(京セラD)では4―3の8回に登板し1回を無失点に抑えた。だが、杉本と紅林にともに初球のツーシームを狙い打たれ、満塁のピンチを迎えるなど課題が残った。この反省を生かしたのが2日後だった。16日の同カード3戦目。1点差の9回から登板すると、初戦で打たれていた両者に対して強気に内角を攻めて打ち取り、2セーブ目をつかんだ。
「この試合は『ツーシームを待たれているな』って感じるところでも押し切ってアウトを取ることができた。課題の一つでもあるツーシームやシュート系の球を待たれていても行くということができた。昨年はツーシームを待たれている時はカットボールを投げていた。それはそれでリスクヘッジ(危険回避)にはなるんですけど、それだと、打者に踏み込まれやすくなった。今年は『待たれていても、行かなきゃいけない』という話をコーチ陣ともしました。僕はそういう(内角を攻める)タイプなので」
どんな状況で投入されても、目的はブレない。
「セーブシチュエーション、ホールドシチュエーションでもやることは変わらない。セーブシチュエーションだからといって必要以上に入れ込み過ぎると、自分で投球を難しくしてしまう。今年に関してはどんな展開でもやることは変わらずマウンドに上がれている。リードしていたら、そのまま次の投手にバトンを渡せるようにしたい。見栄えよりも結果にフォーカスをして、ランナーを出しても0点で帰ってくる。3点リードがあったら失点は2点までに抑えるという粘り強い投球ができれば」
自己最多となる57登板、そして、その先の60登板も実現可能な状況にある。最後に残りシーズンへの意気込みを聞いた。
「(22年に)55登板、(23年が)56登板と来ているので、登板数は1試合でも多く投げられたら。リリーフは“3年やって一人前”と言われる世界でもあるので、何とか今年は最後まで投げきって、また来年に向けて頑張っていければと思います」
最速156キロの剛腕は失敗と成功の“実験”を重ね、枠に収まりきらない成長曲線を描いていく。
◆木沢 尚文(きざわ・なおふみ)1998年4月25日、千葉・船橋市生まれ。26歳。小学6年時にロッテジュニア入りし、12球団ジュニアトーナメントで優勝。慶応では甲子園出場はなく、3年夏の県大会準優勝が最高成績。慶大に進み2020年ドラフト1位でヤクルト入団。183センチ、90キロ。右投右打。今季年俸5200万円(推定)。
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