王貞治さん「巨人に入ったからこそ僕の野球人生はあった。巨人に入ったからこそ人間らしく生きられなかった」

１９７７年９月３日、後楽園球場で行われた巨人・ヤクルト戦で一本足打法を見せる王。この日、通算７５６号を放った

　巨人球団創設９０周年記念の連続インタビュー「Ｇ九十年かく語りき」の最終回を飾るのは、世界のホームラン王・王貞治さん（８４）＝現ソフトバンク球団会長＝だ。長嶋茂雄さんとの「ＯＮコンビ」で栄光のＶ９。４７年前の１９７７年９月３日には、ハンク・アーロンを抜く世界新記録７５６号を放ち、日本中を熱狂の渦に巻きこんだ。メモリアルデーを前に、野球人生の喜怒哀楽を語った。（取材・構成＝太田　倫、取材協力＝報知新聞社ＯＢ・田中　茂光）

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　王さんにとって、「巨人」とは。インタビューした全員にしてきた問いを、最後に投げかけた。王さんは短い単語に集約する代わりに、次のように語った。

　「巨人に入ったからこそ、僕の野球人生はあった。他のチームだったら、もっと成績も行いも、悪かったと思う。

　逆に言うと、巨人に入ったからこそ、人間らしく生きられなかった。他のチームに行けば、悪さもしたり、好き勝手に振る舞ったりできたかもしれない。でもそれをやってしまっては、今に至るような野球人生は送れなかった。何かを捨てたり、犠牲にしないと、ここまでの数字は残せなかった。

　自分が打つことによって巨人が勝つ。だから責任が出てくる。去年打ったのに今年は打てない―では、ファンにも申し訳ない。ＣＭで使ってくれる会社に迷惑をかけてはいけないという気持ちもあった。だから余計に、野球、野球、野球になってね。いい面もあるが、窮屈でもあった。しょうがないことなんだけれどね。

　常に『気をつけ！』と言われているような人生を歩まなくてはいけなくなった。それはやはり、『ＧＩＡＮＴＳ』だからなんだ」

　◆王　貞治（おう・さだはる）１９４０年５月２０日、東京都生まれ。８４歳。早実時代の５７年春のセンバツで優勝投手に輝くなど、甲子園には春夏４度出場。５９年に巨人入団。７７年、７５６号の世界新記録を樹立し、国民栄誉賞第１号に。８０年に現役引退。８４年から５年間、巨人監督を務め、８７年にセ・リーグ優勝。９５年にダイエー（現ソフトバンク）監督に就任し、２００８年まで１４年間指揮。９９、０３年に日本一。０６年３月には第１回ＷＢＣの日本代表監督として、初代世界一に輝く。現ソフトバンク球団会長。