井上尚弥「階級制のあるボクシングって、体重があればいいだけではない」相手が試合日に増量予想も、総合力で勝つ

計量台の上で鍛え抜いた上半身を見せつけるようにポーズを決める井上（カメラ・小林　泰斗）

◆プロボクシング　▽ＷＢＡ、ＷＢＣ、ＩＢＦ、ＷＢＯ世界スーパーバンタム級（５５・３キロ以下）タイトルマッチ１２回戦　統一王者・井上尚弥―ＷＢＯ同級２位ＴＪ・ドヘニー（３日、東京・有明アリーナ）

　世界４団体スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥（大橋）が２日、横浜市内で防衛戦（３日、東京・有明アリーナ）の前日計量を行った。５５・３キロのリミットでパスし、「数年後」フェザー級に階級を上げることを見据え、進化を続ける「過去イチ」ボディーに自信を見せた。対するＴＪ・ドヘニーも５５・１キロでクリア。試合日には体重を１２・６キロ戻したことがあり、“過去最大の敵”となる可能性があるが、モンスターにとってはフェザー級での戦いへ絶好の試金石となる一戦。総合力で現役最多の世界戦２３勝目、自身が持つ日本人最多を更新する世界戦９戦連続ＫＯ勝利を目指す。

　ほおが少しこけた尚弥の目は野獣のようにギラついていた。約１９秒のフェースオフでは身じろぎもせず、ドヘニーの顔をにらみつけた。体重こそスーパーバンタム級リミットの５５・３キロだが、盛り上がった僧帽筋、割れた腹筋はこれまでとは明らかに違う。過去一番の体に「仕上がりはバッチリです」と自信を口にした。

　相手のドヘニーは過去に前日計量から体重を１２・６キロ戻した経験を持つ。今回も一回り以上大きくなって、リングに上がることが予想される。それでも「自分相手に１０キロ以上戻したら、（重くて）ボクシングできないぞっていうところを見せたい。階級制のあるボクシングって、体重があればいいだけではない。明日（３日）は、ボクシングを見せていきたい」とキッパリ。スピード、技術、駆け引きを含めた総合力で圧倒することを宣言した。

　８月２１日に練習を公開した際、「一番よく練習をしたな、という自負がある。かなり追い込みました」と語った。実際、心肺機能を上げるためのプールトレーニングやフィジカルトレーニングで筋肉量も上がった。「ザ・パワー」の異名を持つドヘニーに負けないためだけではない。「数年後にフェザー級を見据えるのであれば、やっぱりまだまだやらなきゃいけない」と再来年に予想される階級アップに向けた体作りでもあることをこの日、明かした。

　練習内容や減量方法などもいろいろと模索しながら、来たる日へと準備を整える。相手が今まで以上に大きく、パワーのある相手と対峙（たいじ）しなくてはいけないフェザー級での戦い。体重を大幅に戻し、過去最重量の相手となりそうなドヘニーとの戦いは、日本人初の５階級制覇に向けた絶好の物差しとなる。「試合をやる楽しみ、喜びっていうものが一番。自分自身に期待してますし、楽しみにしてます」。進化を続けるモンスターが、有明アリーナで新たな可能性を示す。（戸田　幸治）

　◆尚弥に聞く

　―スーパーバンタム級で４戦目。

　「体の仕上げ方も、かなりうまくきている」

　―体が変わった。

　「筋肉量の作り方だったり、プラスそれに対してスピードも落とさずっていうところも意識しながら」

　―フェザー級を見据えている？

　「今までやってきたものをそのままやっていくんじゃなくて、新しいことを取り入れながら。手探りですけど、進めていかないと現状維持で止まってしまう」

　―進化している。

　「すぐに変わるものじゃないと思いますけど、いずれ、フィジカル強化として表れてくると思う。今後、一つ一つ試合をしていく上で、少しずつ蓄積されて、いい形になればいいなと」

　―プレッシャーは？

　「いつもと変わらない」

　◆５階級制覇

　過去７人が達成。トーマス・ハーンズ（米国）がウエルター級からライトヘビー級までを制したのが最初。シュガー・レイ・レナード、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー（以上、米国）、マニー・パッキャオ（フィリピン）、ホルヘ・アルセ（メキシコ）、ノニト・ドネア（フィリピン）が達成。デラホーヤとパッキャオは６階級制覇に成功。日本人では、井岡一翔（志成）と尚弥、田中恒成（畑中）の３人の４階級制覇が最高。