井上尚弥が現役最多世界戦２３勝目 ドヘニー下し防衛に成功…最後は挑戦者が腰痛めて棄権、７回ＴＫＯ勝ち

防衛に成功した井上尚弥(カメラ・小林　泰斗)

◆プロボクシング　▽ＷＢＡ、ＷＢＣ、ＩＢＦ、ＷＢＯ世界スーパーバンタム級（５５・３キロ以下）タイトルマッチ１２回戦　統一王者・井上尚弥―ＷＢＯ同級２位ＴＪ・ドヘニー（９月３日、東京・有明アリーナ）

　世界４団体スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥（大橋）が３日、ＷＢＯ同級２位ＴＪ・ドヘニー（アイルランド）の挑戦を退けた。７回、パンチを受けたドヘニーが腰をおさえて、レフェリーが試合を止めた。ＷＢＣ、ＷＢＯは３度目、ＷＢＡ、ＩＢＦは２度目の防衛に成功した。「ダメージが少なからず蓄積していたと思う。みなさんの期待していた試合ではなかったですが、また次に期待してください」と冷静試合を振り返った。

　前ＷＢＡ世界スーパーフライ級（５２・１キロ以下）王者・井岡一翔（志成）、ＷＢＡスーパー、ＷＢＣ、ＷＢＯ世界スーパーミドル級（７６・２キロ以下）統一王者・サウル・アルバレス（メキシコ）と２２で並んでいた通算世界戦勝利数を２３とし、元世界３団体ミドル級（７２・５キロ以下）王者ゲンナジー・ゴロフキン（カザフスタン）と並ぶ現役単独最多となった。自身が持つ日本人最多世界戦連勝数も２３に更新した。

　昨年、スーパーバンタム級に階級を上げ、４試合目となった尚弥。戦前から相手が力不足で楽勝ムードが漂う中、油断なく調整を行った。「気を抜かないためにっていう意識で練習をしていたら、やっぱり一番よく練習をしたなという自負がある」と”過去イチ”の肉体に仕上がりで臨んだ一戦。経験豊富な３７歳の元ＩＢＦ王者もモンスターに屈するしかなかった。

　「ザ・パワー」の異名を持つドヘニーは前日計量の５５・１キロから６６・１キロと１１キロ増量。ウエルター級（６６・６キロ以下）相当になった相手に対し、尚弥は５５・３キロから７・４キロ増の６２・７キロで試合に臨んだ。スーパーライト級（６３・５キロ以下）相当で、ドヘニーより３・４キロ軽く、”１階級下”だったが、力負けすることなく圧倒した。

　１回は静かな立ち上がり。５月に東京ドームで行われたルイス・ネリ（メキシコ）戦でまさかのダウン。反省を生かして、冷静にスタートした。２回には体格で勝るドヘニーが無理やり体をぶつけて尚弥をロープ際まで押し込むと、観客からどよめきが起こった。

　ワンツーやフックで少しずつリズムをつかんだ王者は５回にボディーから左フックをヒットさせた。迎えた７回、右のストレートを受けたドヘニーが足を引きずるように後退。さらにワンツーパンチを受け、腰を押さえたところでレフェリーが試合を止めた。

　すでに、この階級には対等に戦える相手がいないと海外メディアやファンからはフェザー級（５７・１キロ以下）への階級アップを望む声が高まっている。「数年後にフェザー級を見据えるのであれば、やっぱりまだまだやらなきゃいけない」と語っていた尚弥は体格で勝るドヘニーに勝利したことで、準備は進んでいることを証明。「体ができていない。上げる選択肢は今はない」と早急にではないが、早ければ再来年にも階級を上げることになりそうだ。

　次戦は国内でＩＢＦ、ＷＢＯ１位のサム・グッドマン（オーストラリア）との対戦が有力視される。来年の初戦はＷＢＡ１位のムロジョン・アフマダリエフ（ウズベキスタン）らを候補に２１年以来、３年ぶりに米国ラスベガスで試合を行うプランも浮上している。