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【独占手記】井上尚弥の防衛成功に父・真吾トレーナー「満足」 強さの源は隙作らない準備力

スポーツ報知 / 2024年9月4日 5時5分

ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体タイトルマッチで7回TKO勝ちした井上。日本選手歴代単独1位となる世界戦23勝目を挙げた(カメラ・小林 泰斗)

◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦 ○統一王者・井上尚弥(TKO7回16秒)WBO同級2位TJ・ドヘニー●(3日、東京・有明アリーナ)

 井上尚弥(31)=大橋=がTJ・ドヘニー(37)=アイルランド=を下し、スーパーバンタム級の4団体統一王座防衛に成功した。息子を「過去イチ」の状態に仕上げて送り出した父の真吾トレーナー(53)は3日、スポーツ報知に独占手記を寄せた。勝利の喜びを示すとともに、強い信頼関係で結ばれている父子のエピソードを披露した。

 尚弥は期待通りの戦い方をしてくれて満足です。今回も「過去イチ」の仕上がり。毎回、同じことを言うようですが、そうでなければ志が止まることになる。尚弥の志は高いですから。

 試合前、挑戦者とは力の差があるなどと言われていたようですが、井上家は過小評価はしていなかった。自分の思いや考えがブレるのは嫌なので、そういう情報は極力、耳に入れないようにしていましたから。世界戦に出てくる選手とは“紙一重”。相手を格下と見ると隙が出てしまう。だから自分はそういう雰囲気は作らないし、尚弥もそれは分かっています。何より、モチベーションが低ければ、あの体は作れない。彼の体をまじまじと見た時、肩も背中もどこも無駄なところはない。それを練習で作り上げてきたんです。

 ドヘニーは、どうにも気持ち悪い存在で、かみ合ってパンチを当てられたら、怖いものがありました。尚弥には「丁寧に、慎重に」と伝えました。それを貫けば怖いものはないし、その通りに戦ってくれました。尚弥が圧をかけていたから、相手は出たくても出られなかったと思います。

 自分の誕生日(8月24日)を前に、尚弥から化粧水をもらいました。「そろそろ(肌の手入れを)やった方がいいよ」って。尚弥はSNSでメッセージもくれました【注】。マネジャーがスクショで送ってくれたんですが、何度も読み返しています。ちょっと時間があると、見ちゃうんです。昨日も今日も。移動している時も立ち止まって、ちょっと見たりとか…。うれしいじゃないですか、こんなことを思われていたのかって。

 尚弥には一度だけ、手をあげたことがあるんです。ボクシングを始める前の、幼稚園の頃。尚弥は冗談半分だったのかもしれないけど、うそをついてごまかそうとした。それが親としてはすごく悔しくて、そういうふうに成長してもらいたくないというのがあったから、ここは流してはいけないと、フルスイングでバーンと。父さんはこれだけ真剣に思っているんだよって伝えたかった。尚弥を吹っ飛ばした、その手の痛みは今でも残っています。SNSを読んだ時、やってきたことは間違っていなかったって。子供たちに恥じない父親として、一人の男として、改めて頑張んなきゃって思う。

 今後については、何も話していません。ただ、どんな展開でも、周りがワクワクしてくれなきゃダメだし、そうでないと面白くない。あとは自分と尚弥がしっかり仕上げて、バッチリ結果を出しますから。(大橋ジム・トレーナー)

 【注】幼い頃のツーショット写真とともに「この人のおかげで今がある。どれだけ強くなろうが、この人は越えられない」と投稿。

 ◆井上 真吾(いのうえ・しんご)1971年8月24日、神奈川・座間市生まれ。53歳。有限会社明成塗装代表取締役を務め、不動産業などの実業家の顔を持つ一方、大橋ジムにトレーナーとして所属し、息子の井上尚弥、拓真兄弟、おいの浩樹らを指導している。2014年には、最も功績を残したトレーナーをたたえるエディ・タウンゼント賞を受賞。23年は年間表彰で最優秀トレーナーに選ばれたほか、WBCからも表彰された。

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