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【U-18】記者が目撃した献身的な高校侍 打撃投手を志願 裏方仕事も率先 チーム一丸でつかんだ銀メダルに誇りを

スポーツ報知 / 2024年9月9日 13時13分

台湾でのアジア選手権で準優勝し、銀メダルを獲得した高校日本代表ナイン(カメラ・加藤 弘士)

 金メダルにはあと一歩、届かなかった。歓喜に沸く台湾ナインが身体をぶつけ合い、派手に喜びを表す中、高校日本代表のナインは肩を落とし、最後の整列に加わった。

 高校侍は「第13回BFA U18アジア選手権」の決勝で1-6で敗れ、準優勝に終わった。18人全員が夏の甲子園の出場メンバー。聖地における真夏の死闘後、もう一度力を振り絞ってアジアの列強との戦いに臨んだが、頂点には立てなかった。

 私は大会中、日本ベンチの脇に設けられたカメラマン席で全試合を見届けた。今回、日本が戦った3球場はいずれも構造上、ベンチに隣接しており、首脳陣や選手たちの表情や声がよく分かった。その上で書き残しておきたい。

 日を追うごとに高校日本代表は一体感を増し、強固な絆で結ばれたチームになっていった。彼らは日本の高校野球選手の代表にふさわしい、スポーツマンシップにあふれた18人だった。

 象徴する出来事が、7日の韓国戦(新荘)前にあった。

 球場到着後、198センチの長身を誇る今秋ドラフト候補左腕の藤田琉生(東海大相模3年)が、投手担当の坂原秀尚コーチ(下関国際監督)にこう話しかけた。

 「韓国、左(投手)ですよね。自分がバッピやりますか?」

 前夜に先発し79球を投げ、大会規定により球数制限で今後の登板ができない。そんな男が、自ら打撃投手を買って出たのだ。

 反対側のベンチでは韓国ナインが長身のサウスポーを興味津々の様子で見つめていた。小倉全由監督(67)はうれしそうに語った。「自分からね、投げたいって言うんですよ。その心意気が、ありがたいですよね」

 打撃投手を終えた藤田をベンチの誰もが拍手で迎えた。「ありがとう!」の声が飛んだ。藤田は恥ずかしそうにタオルで汗をぬぐった。

 決勝の台湾戦の試合前には、関東第一の準優勝投手で最速151キロ右腕の坂井遼(はる・3年)が打撃投手を志願し、熱投した。坂井は試合中もユーモアにあふれた声出しで、ベンチを盛り上げた。

 スタメンから外れた選手は、何が自分にできるのか、率先して仕事を見つけていた。バット引きに捕手のプロテクター装着、キャッチボールの相手。全員で戦う。全員で金メダルを奪う。そんな意識が充満していた。

 しかし台湾は強かった。日本語のできる現地メディアの記者は、大会後にこんな話を聞かせてくれた。

 「去年の今ごろ、U18ワールドカップの決勝で、台湾は日本に負けました。大観衆の熱烈な応援の前で、2位に終わったんです。だからこそ、『今年こそ』という思いは強かったですよ。『絶対に日本に勝つんだ』という意識でこの1年間、ずっとやってきましたからね」

 若き侍たちの野球人生は続いていく。異国の地で学んだ勝つ喜びと負ける悔しさ。そして学校の枠を超えて得た、最高の仲間。大きな財産を得た台湾での10日間だったに違いない。魂を燃やしてつかんだ銀メダルに胸を張って、それぞれの学舎に戻ってほしい。

(編集委員・加藤 弘士)

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