ミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」振り付け総監督・前田清実さん、主演の子役にも「心を鬼に」指導
スポーツ報知 / 2024年9月12日 11時0分
ミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」(10月26日まで、東京建物 Brillia HALL/11月9~24日、大阪・SkyシアターMBS)が、3度目となる日本公演を開催している。
1980年代、英国の炭鉱の町を舞台に、バレエダンサーを目指す少年と彼を取り巻く大人たちの姿を描いた映画「リトル・ダンサー」(2000年公開)をもとにし、05年に海外でミュージカル化された。06年には英国ローレンス・オリヴィエ賞4部門、09年にはトニー賞で10部門を獲得。日本では17年に日本人キャストで初演。約16万人を動員し、菊田一夫演劇賞大賞や読売演劇賞選考委員特別賞などを受賞した名作だ。
主演は約1年間の子役オーディションで決定する。今年も1375人の中から4人が選ばれた。作中では演技、歌、バレエ、タップダンス、器械体操など、さまざまな技術が求められる中、日本版の振り付けの総監督を務めているのが前田清実さん(67)。「DREAM BOYS」など、さまざまな作品の振り付けを担当し、自身もダンスカンパニー「ドラスティックダンス“O”」を設立している。
そんな百戦錬磨の前田さんでさえ、「とにかくハードな作品」と苦笑いしながら明かす。「公演が始まってからもずっと稽古をしている。主演はクワトロキャストなので、1人が舞台に立っている一方で、終演後は別のキャストが練習。もちろん、主演以外の稽古も見るし、キャストの体の状況などもリポートで毎日確認する」。初演の時は、フライングやバレーも含め約40人分の振り付けを体にしみ込ませたという。
主演の子役に教えるのは、ダンスの技術だけではない。タイトルロールとしての立ち居振る舞いをたたき込むのも前田さんの仕事だ。「私は子役として接していない。あいさつの仕方からかなり厳しくやる」。前田さんのポリシーはキャストの前では心を鬼にすること。「みんなの成長を見ていると、通し稽古をした時だけでもうれしくて泣きそうになるけど、我慢している。稽古場では鬼で通っているので」。“鬼の目にも涙”の瞬間は舞台本番だけだという。
教え子の舞台中の成長を見届けられるのはもちろん、千秋楽後に世界に羽ばたいていく姿を見届けられるのも、醍醐(だいご)味の一つだ。「ビリー役の子が有名なコンクールなどで活躍しているのを見るとうれしい。こんなに指導していて大変だけど面白い舞台はない」。稽古場の鬼は今日も目を光らせる。(増田 寛)
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