「清原和博という背中を見てきて、夢のある舞台」慶大・清原正吾、プロ志望届提出 秋季リーグ戦の目標「３冠王」

取材に応じた慶大・清原は、バットを手に笑顔でポーズをとる（カメラ・岡野　将大）

　西武、巨人、オリックスで通算５２５本塁打を放った清原和博さん（５７）の長男で、慶大の清原正吾内野手（４年＝慶応）が１２日、１０月２４日のドラフト会議に向け、東京六大学野球連盟へプロ志望届を提出。全日本大学野球連盟から発表された。横浜市の同大学グラウンドで、父も決断を尊重してくれたことを明かした。進路をプロ一本に絞った上で１２球団ＯＫの意向を表明。１４日開幕の東京六大学秋季リーグ戦の目標に「３冠王」を掲げ、指名を勝ち取る決意を示した。

　瞳は燃えていた。９月とは思えない強烈な太陽に照らされ、清原はプロ志望届を提出するに至った経緯を自身の言葉で口にした。

　「自分の中で挑戦と覚悟というのが一番大きい。シンプルに、父親である清原和博という背中を見てきて、夢のある舞台。父親がダイヤモンドを一周する姿というのは本当に華がありますし、僕も小さい頃から見ていた景色。そこに対しての憧れというのは常にありました。人生で一番大きな決断をさせていただきました」

　前夜、寮の一室にて志望届にボールペンで氏名と生年月日を記した。「気持ちを込めて書きました」。決断までの道のりは、平たんではなかった。「不安要素だらけ。悩んで寝られない日もあった」。父はプロの厳しさを骨の髄まで知る男。母・亜希さんはそんな和博さんを必死に支えてきた。家族会議では「互いに熱くなる時もあった。本音でぶつかり合い、このような結果になった」。最後は和博さんのこんな言葉で、方向性は決まった。

　「正吾の人生なんだし、正吾の意見を一番尊重する」

　悩みから解放され、腹は決まった。「両親共々、自分の人生を一番尊重して最優先に考えてくれた。感謝の気持ちでいっぱいです」と感慨深げに言った。

　６年間のブランクを経て、大学で野球に再挑戦。今春から不動の４番で、一塁手のベストナインに輝いた。東京六大学選抜の４番として臨んだ８月３１日の日本ハム２軍戦（エスコン）では、育成左腕の山本晃大から２ランを放った。だが、六大学通算は１８試合で打率２割４分６厘、７打点で本塁打はなし。ドラフト候補にふさわしい実績は、まだない。それは清原自身、百も承知だ。

　指名順位へのこだわりは「ないです。言える立場ではない」と言い切り、育成指名には「どこまで広げるかは、監督や家族と話し合いたい。もし評価をしてくださる球団があるのであれば、真剣に考えたい」と語った。

　「父親の息子で生まれてきた以上は、その使命を請け負いながら生きていくことになる。そこには全然ネガティブな要素は一切ない。注目していただけるのはありがたいこと。この秋が勝負。そこに集中したい」と清原。有終の美を飾る秋。自らの未来とチームの勝利は、そのバットで切り開く。（加藤　弘士）

　◆清原　正吾（きよはら・しょうご）２００２年８月２３日、東京都生まれ。２２歳。慶応幼稚舎（小学校）３年から「オール麻布」で野球を始め、中学ではバレーボール部、慶応ではアメフト部でプレー。慶大入学後に野球に再チャレンジ。２年秋にリーグ戦デビュー。通算１８試合で６１打数１５安打７打点。打率２割４分６厘。今春のリーグ戦で一塁手のベストナイン。１８６センチ、９０キロ。右投右打。

　◆清原正吾に聞く

　―エスコンではプロから本塁打。

　「自分の中でも特別な一本。強い意志に変わった一因なのかなと思います」

　―家族での話し合いはいつから？

　「エスコン（８月３１日、９月１日）が終わってからこの期間の間に何回か」

　―決断は悩んだ？

　「最後の最後まで考えて悩んだ末に、覚悟を決めて挑戦することを決めました」

　―１２球団ＯＫ？

　「はい」

　―幼少期、父から感じたプロの厳しさとは？

　「打てない日もあれば、打てる日もある。そこで気性の上げ下げが少なからずあったのは、僕も感じていました。そこまでになる、厳しい世界なんだなというふうには実感しました」

　〇…日本ハム・新庄監督がプロ志望届を提出した慶大・清原に言及した。練習後に報道陣から伝え聞き「あ、そう！？　男前やし、いい打撃しますし。どこかの球団に入ってもらえたらプロ野球も盛り上がる」と歓迎。「あれだけ偉大なお父さんがいろいろ打撃の指導をして、プロに行くまでの選手になって…。楽しみですね」と頬を緩ませた。