パラリンピック車いすテニス２冠・上地結衣の激闘が映画になる 東京大会後から３年間密着のドキュメンタリー

自身のドキュメンタリー映画が上映される車いすテニスの上地

　８日に閉幕したパリ・パラリンピックの車いすテニスで、日本選手大会史上初の単複２冠の快挙を達成した世界ランキング２位の上地結衣（３０）＝三井住友銀行＝の奮闘が、ドキュメンタリー映画になることが１２日、分かった。「Ｔｈｅ　Ｂｒｅａｋ　世界一、負けず嫌いのテニスプレイヤー、上地結衣」（ギークピクチュアズ製作）のタイトルで、１０月１８日から全国で順次公開される。ナレーションは、アニメ「鬼滅の刃」竈門炭治郎役で有名な声優の花江夏樹が担当。五輪、パラリンピックを通じ、アスリートが劇場映画になるのは異例のこと。

　上地を３年間、追い続けたドキュメンタリーは大団円を迎えた。パリ・パラリンピックで、田中愛美（２８）＝長谷工コーポレーション＝と組んだダブルスで日本女子初の金メダル。シングルスは、世界女王で２１年東京大会金メダルのデフロート（２７）＝オランダ＝を下し、日本人初の２冠を達成した。

　映画は東京大会後、上地が快挙を達成するパリ大会までの３年間に密着した。東京大会決勝でデフロートに敗戦以降、上地はデフロートに１勝２３敗。世界２位の座は揺るがないが、女王の背中は遠かった。４大大会でデフロートに勝ったのは、１８年全仏決勝が最後だった。

　この映画のキャッチフレーズに「いつも２位。それでも負けたくない」とある。１８年に世界ランク１位の座を奪われてから６年もの間、上地は偉大な２番手だった。その「万年２位」が最後の最後で女王を下し、２個の金メダルに輝く感動のドキュメンタリーだ。

　上地のひたむきさや勇気、喜びや悲しみが映し出された映像を、さらに彩るのが、声優の花江夏樹だ。本作のナレーションで、上地の人となりや車いすテニスの世界を浮き彫りにしていく。監督を務めた新山正彰氏は「この映画は、１人のアスリートが金メダルを目指してひたむきに努力する姿を描いています」とコメントした。

　４度の４大大会優勝を誇る大坂なおみ（２６）のドキュメンタリーが、２１年にＮｅｔｆｌｉｘで配信されたことはある。また、錦織圭（３４）や国枝慎吾さん（４０）ら、テレビでのドキュメンタリー番組は多い。しかし、アスリートの映画が劇場公開となるのは異例のこと。企画・製作は、２２年に上地の応援・サポートプロジェクト「ＹＵＩ　ＫＡＭＩＪＩ　ＲＯＡＤ　ＴＯ　ＰＡＲＩＳ」を立ち上げたギークピクチュアズ。映画の公式ＨＰはｈｔｔｐ：／／ｙｕｉｋａｍｉｊｉ―ｍｏｖｉｅ．ｃｏｍ

　◆主な五輪アスリートの映画化

　▽カーリング日本女子代表　０２年ソルトレークシティー五輪に出場した、女子日本代表チーム青森をモデルにした映画「シムソンズ」（佐藤祐市監督）が０６年２月に公開された。

　▽バスケットボール男子代表　２４年６月に映画「ＢＥＬＩＥＶＥ　日本バスケを諦めなかった男たち」（大西雄一監督）が公開された。パリ五輪予選を兼ねて沖縄などで開催された２３年Ｗ杯での日本代表の激闘を収録。

　◆上地　結衣（かみじ・ゆい）１９９４年４月２４日、兵庫・明石市生まれ。３０歳。先天性潜在性二分脊椎症のため歩行困難になり車いすの生活に。姉の影響で１１歳で車いすテニスを始め、２０１３年４月に日本女子として初のプロ転向。４大大会シングルス８度、ダブルス２０度の優勝。パラリンピックは１２年ロンドン大会に初出場。１６年リオデジャネイロ大会シングルス銅メダル、２１年東京大会同銀メダル、ダブルス銅メダル。２４年パリ大会で日本人初の単複２冠を獲得。得意なショットはフォアハンド。シングルス世界ランクの自己最高位は１位。