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羽生結弦さん「届け」 金沢から能登へ 愛と希望の波動 こだわり抜いた石川でのチャリティー演技会

スポーツ報知 / 2024年9月16日 5時0分

演技する羽生結弦さん(C)矢口亨

 プロフィギュアスケーターの羽生結弦さん(29)が15日、石川・金沢市内の健民スポレクプラザで行われた「能登半島復興支援チャリティー演技会」に出演。無良崇人さん(33)、鈴木明子さん(39)、宮原知子さん(26)とともに、1時間の演技会に被災地への祈りを込めた。「少しでも笑顔の輪が広がってくれたらいいなと思いながら滑りました」。全身全霊を注いだ全力のスケートで表現したエールだった。4人によるオープニングナンバーは輪島市の和太鼓チーム虎之介の「能登國切籠(のとのくにきりこ)祭」。太鼓のリズムに乗って息の合ったステップを軽快に刻んだ。大トリで「春よ、来い」を舞い、フィナーレで再び4人が集い、Mrs.GREEN APPLEの「ケセラセラ」に希望を重ねた。

 石川で滑ることに大きな意味があった。配信で届けたチャリティー演技会。観客席のない金沢市内のリンクで、羽生さんが能登への祈りを胸に舞った。

 「他の地域で滑るということも可能だったし、本当にいろんなことをしようと思えばできたとは思う。ただ、やはり僕は、つらかった方々、今現在つらいと思ってる方々、いろんなことで悩んでいる方々の近くで滑りたいと思った。ちょっとでも、この場所から波動として、ちょっとでも空気が動いて、皆さんの元へ届け、って思いながら滑らせていただいた」

 県内に通年リンクはない。会場となった健民スポレクプラザが氷を張るのは、例年10月になってからだ。今回の演技会のために、3週間前倒ししてスケートリンクを作り、この日に備えた。

 仙台市出身の羽生さんは東日本大震災を経験した。「3・11もそうだけど、首都圏から離れているから(状況が)なかなか報じられない。いい意味で知名度を使い、お金でも注目度でも、少しでも力になれれば」と口にした。会場には被災者を招待。映像配信サービス「Lemino」を通して生配信され、配信収益は石川県に寄付される。13日時点で1万人以上が配信チケットを購入した。

 通常のアイスショーのような派手な照明はない。会場のライトのみに照らされ、自ら希望の光を放った。3月に「能登のために何かできることはないか」と働きかけ、主催のテレビ金沢とともに実現に向けて動いてきた。「予算を抑えて寄付に回すことが第一の目標だった。制作資金を削減していくにあたって、最終的に照明なしということになった」と明かした。「春よ、来い」の演目中の、体全体を横たわるように滑るハイドロブレーディング。「この周辺の地面が大きく揺れたということもあり、何とか鎮まってほしいという気持ちがあった」。願いを抱き、氷に頬を寄せた。

 開演直前まで調整を重ねた。前日のリハーサル。全体での練習終了後、羽生さんは1時間氷上に残った。ひたすらオープニングとフィナーレの振り付けの確認と、滑り込みを繰り返した。静かなリンクに羽生さんの「もう一回お願いします」の声が何度も響いた。フィナーレの「ケセラセラ」。肩で息をし、ときおり両膝に手をつきながら、曲かけをぶっ通しで6度行った。「いいものを届けたい」という本気と覚悟。妥協を知らないアスリートによる全力の滑りは雄弁だった。

 会場を去る際、エレベーターを降りると、真っ先にリンクの受付窓口に向かった。スタッフに「時期じゃないのに、リンクを作っていただいてありがとうございました」とお礼の言葉を述べた。ぶれることのない被災地支援への信念。金沢から能登へ届けた、愛と希望の波動。羽生結弦にしかできない使命を、これからも果たしていく。(高木 恵)

◆テレビ金沢常務が会場選びに奔走

 〇…演技会の実現へ中心となって動いたのが、テレビ金沢の常務取締役・佐藤圭一さん(55)だった。まず会場選びに苦心したという。「体育館に氷を張るには数千万円かかる。それでは趣旨が違ってしまう」。健民スポレクプラザを所有する石川県に自ら掛け合い、スケートリンクを作る時期を早めてもらった。「羽生さんのひたむきな姿、演技を見ることに意味がある。間違いなく能登の皆さんへのメッセージになったと思う」と感慨深げだった。

 ◆配信 「Lemino」の見逃し配信は30日午後11時59分まで。

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