「かわいいペットのような“相棒”に」持続可能な野球界へ 芝中学硬式野球部がグラブのメンテナンス講習会を開催
スポーツ報知 / 2024年9月18日 12時27分
東京・港区にある中高一貫校・芝中学の硬式野球部(芝リトルシニア)が17日、1、2年生の部員を対象にグラブのメンテナンスに関する講習会(ワークショップ)を開催した。「野球グローブ再生工房Re-Birth」の代表取締役・米沢谷友広さん、グラブマスターの阿部樹さんを講師に招き、2時間にわたって効果的なメンテナンス術、野球道具を大切に扱う意義を学んだ。
講習会の冒頭、米沢谷さんはナインに問いかけた。
「グラブのメンテナンスや手入れは、何のためにやると思う?」
「傷つかないようにするため」「うまくなるため」「長い間、使えるようになるため」-。様々な意見が出た後、それらを肯定した上で、米沢谷さんは言った。
「もう一つ、重要なことがあるんです。それは『エラーしないため』。大切な場面でエラーをして、後悔したくないですよね。そのためにもしっかりグラブの手入れをしていきましょう」
ブラシで砂をとり、オイルを用いて汚れを落としていく。汗の汚れが残る手のひら部もケアするなど、ナインはワイワイと野球談議しながら、自らの“相棒”を磨いていった。
今回の講習会を企画した狙いについて、東京六大学野球リーグの慶大で助監督を務め、羽黒(山形)の監督としては2018年夏の甲子園に導いた顧問の小泉泰典さんはこう語る。
「選手に道具に対する興味を持ってほしい、うまくなるために上手に道具を扱ってもらいたいということが一つです。もう一つは、今後持続可能な野球界であるために、『道具を大切に使う』『グラブを再生利用する』ということの重要さを生徒たちに知ってほしい。そして彼らが親や指導者になった時、次の世代に伝えていけるような人材になってほしいと思い、企画しました」
確かに野球道具は高価であり、昨今の“野球離れ”の一因にもなっている。大人になった今、子供の成長を心から願い、買い与える親御さんの気持ちは痛切なほどよく分かる。だが子供の頃にそこまで感謝の気持ちを持てたかは、十代だった我が身を振り返ってみると、恥ずかしながら疑わしい。
米沢谷さんはこう語った。
「かわいいペットのような“相棒”として、親御さんに買ってもらったグラブを使っていければ、ものを大切にする心が自然と身についていくと思います。グラブをチェックして、手入れをする習慣が生まれれば、ひものコンディションや形についての“気づき”が生まれて、それが少しずつプレーの上達にもつながると思うんです」
選手が軟式から硬式に移行する際、グラブの買い替えは出費を要する。その場合、まだポジションが固まっていない場合も多い。そんな時のために、同社では1万1000円で軟式グラブを硬式対応にアップグレードするサービスも展開中だ。「新品のグラブを買うのは、ポジションが決まってからでも、遅くないと思います」と米沢谷さん。新品の約半値で購入可能な「再生グラブ」など、様々な選択肢を提示している。
7月に北海道で行われた日本リトルシニア第15回林和男杯野球大会では「全国1勝」を挙げるなど、文武両道を突き進む芝中学。ワークショップを終え、横山蒼十主将(2年)は「グラブは今まで、お父さんに磨いてもらっていました。グラブの大切さに気づけて良かったです。道具の大切さをチームでどんどん共有して、さらに勝っていけるように頑張りたい」と意気込んだ。
グラブには、成長を願う親の愛情がたっぷり詰まっている。それを大事に使うことは、技術力の向上と同じぐらい、若き野球人にとって大切なことだ。持続可能な未来の野球界へ、現場から何ができるだろうか。学びにあふれた2時間だった。(編集委員・加藤弘士)
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