森保一監督の考える監督退任の捉え方、糸井重里さんがスポーツを伝える意図と共通する思い…特別対談(7)
スポーツ報知 / 2024年10月9日 12時0分
サッカー日本代表の森保一監督(56)と、コピーライター・糸井重里さん(75)のスペシャル対談。第7回は「文化となることを目指して」。2022年カタールW杯後、日本代表史上初めてW杯後に継続指揮となった森保監督。監督退任の捉え方は、糸井さんがスポーツを伝える意図と共通する思いがあった。(取材・構成=星野浩司)
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糸井重里さん「日本代表で、W杯の後に続けて監督をおやりになったのは、森保さんが初めてなんですってね。4年を2回、8年ですね」
森保一監督「はい。最後まで完結するつもりで日々仕事をさせていただいてます」
糸井「はい」
森保「一試合一試合、次につながるか、道が途絶えるか、勝負の世界で覚悟しながら、最後まで目標を達成して終わることを目指していますけど、どんな終わり方があっても後悔がないように、我々も先人の方がつないだバトンを託されて今があるので、自分たちがやったことが次にいいバトンとなるようにつながっていけるようにしたいです」
糸井「ほお」
森保「ネガティブに終わりを捉えるつもりはないです。私自身は監督をやっていても、いちサポーターとして、日本代表の勝利と日本サッカーの発展を願っている中で、今、たまたま監督という役割をいただいて仕事をしていると思っているので、それがどんな途絶え方をしたとしても次は、いちサポーターに戻ってまた日本サッカーを応援しようって気持ちにはなると思います」
糸井「サポーターでもあり、広報担当の役もしますよね。世界が見ているところでサッカーをしている人なんてそんなにいないわけですから、いい試合をすることはいい宣伝をしている。それを森保さんの頭の中に相当、意識があるような気がします。期待をかけすぎた人が、がっかりしたとか言うなよって言っている割には、その目があるってところでやっている誇りと喜びですよね」
森保「はい」
糸井「たくさんの人がすげ~ってことを分かるのが文化だと思うんです。例えば、お茶のお茶わんを『これはいいものだね』と分かる人が何人いるかは、その文化のないところの人はあんまり分からない。桜の咲き具合が『いいねぇ』って言うのも、初めて桜を見た人には全部よく見える。でも『この桜はいいね』って言い合えるじゃないですか」
森保「はい」
糸井「サッカーでも、100年やってきた国の人たちは『あのサッカーは枝ぶりがいい』『あのプレーはね~』『あいつはいい顔して走った』とか、とんでもないところを裾野の人が見ていると思うんです」
森保「そうですね。すごく想像がつきます」
糸井「それにいろんなものをたどり着かせるのが、僕の仕事だと思っているんです。野球を見てても、あれは感心したなぁと言った時に、『ああ、なるほど』って言う人がいっぱいいるところで選手が試合をしていたら、プレーも気持ちいい。サッカーも森保さんがやっていることが増やしていくことになると思うんで、その裾野のお手伝いを僕らができればと、いつも思っているんですね」
森保「ありがたいお言葉です。考えていることが、どっかに書いてあるかなと思うぐらい、私が思っていることを言葉にしてくださってます」
◆森保 一(もりやす・はじめ)1968年8月23日、静岡・掛川市生まれ、長崎市育ち。56歳。長崎日大高から87年にマツダ(現広島)入団。92年に日本代表初選出。国際Aマッチ35試合1得点。京都、広島、仙台を経て2003年に引退。J1通算293試合15得点。05年からU―20日本代表コーチ。12年に広島監督に就任し、3度のJ1優勝。17年10月から東京五輪代表監督。18年7月からA代表と兼任監督。21年東京五輪は4位。22年カタールW杯は16強。26年W杯まで続投。家族は妻と3男。
◆糸井 重里(いとい・しげさと)1948年11月10日、群馬・前橋市生まれ。75歳。株式会社ほぼ日代表取締役社長。コピーライター、エッセイストとして幅広い分野で活躍。78年に矢沢永吉の自伝「成りあがり」の構成を担当。79年に沢田研二の「TOKIO」を作詞。「おいしい生活。」「不思議、大好き。」など西武百貨店やスタジオジブリ作品のキャッチコピーなどを手がけている。本紙でコラム「Gを語ろう」を連載中。妻は女優の樋口可南子。
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