「監督役」森保一氏が語る組織の姿は「円だと思っています」糸井重里さんと白熱の議論に…特別対談最終回

スペシャル対談に臨んだ糸井重里氏さんと森保一監督（カメラ・小泉　洋樹）

　サッカー日本代表の森保一監督（５６）と、コピーライター・糸井重里さん（７５）のスペシャル対談。最終回は、日本サッカー界など「組織のあり方」。チーム作りの関係性を「船」や「円」に例え、互いのマネジメントへの考え方について熱く語り合った。（取材・構成＝星野浩司）

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糸井さん「昔はピラミッド型の組織が多くて、トップが一番上にいて、一番下っ端が大勢いる形を取っていた。それは多分、軍隊の組織を動かすのに一番都合のいいやり方だったんです」

森保監督「はい」

糸井「たくさんの製品を作る工業社会の時代は便利だったけど、今はもう敵（かな）わなくなっていて、いくら作っても在庫になっちゃうから、その時代にどうありたいかを考えた時、ピラミッドをパタンと倒したらいいんじゃないか。倒すと船になる。トップだと思っていた人が前を見る人になればいいと。あっちに行こうと言う人、食事のジャガイモをむく人、それぞれに平らな組織で仕事をしていくチームを作ろうと思ったと、昔、僕が本で書いたんです。森保さんが『監督役』と、おっしゃることも似ている気がします」

森保「似たような感覚でいます。いま監督係みたいな感じで仕事をしていて、ピラミッドの頂点に日本代表がいて、各カテゴリーや地域に支えられてることを図で表されていると思います。逆に重力でいうと、いろんな方々が地域や普及・育成から我々につなげてくださり、その人たちから落としていただいている感覚がある。ピラミッドや船ではないけど、円だと思っています」

糸井「円！」

森保「中心にＡ代表があって、各カテゴリーやライト層の方々が円を形成しているイメージでいます。あと、自分のイメージでは砂時計として、普及・育成からやってもらっていることが、砂時計のように落とされていって（砂時計をひっくり返す動きを見せ）我々日本代表が活動する時、それが普及や育成の人たちの目標、勇気や自信につながり、我々の活動からまた落としていく関係を築いている。サポーターの方々に応援していただき、我々はピッチ上で頑張ってお返しする。砂時計の関係だと思います」

糸井「絶えず行ったり来たりしているわけですよね」

森保「組織図としては円で考えることが多いです。みんな同じ目線で役割が違うけど、全部が日本サッカーファミリーっていう」

糸井「何より、監督役とおっしゃる森保さんが、自分がサポーターであると言ったことの中に全部入っている気がしますね」

森保「それは本当に、選手の時からずーっと前から思ってました。指導者になってからも、日本代表の１サポーターでありながら、クラブの仕事をしているみたいな思いはありました。自分がクラブで仕事をしている時も、選手を輩出するんだ、何か日本のためになることが、クラブや地域から何かできないかなって考えていましたね」

糸井「一番のサポーターがそこにいると思いながら、試合を見たいと思います」

森保「魅力のある試合をできるように、まずはピッチ上からベストを尽くしたいと思います」

＝おわり＝

　◆森保　一（もりやす・はじめ）１９６８年８月２３日、静岡・掛川市生まれ、長崎市育ち。５６歳。長崎日大高から８７年にマツダ（現広島）入団。９２年に日本代表初選出。国際Ａマッチ３５試合１得点。京都、広島、仙台を経て２００３年に引退。Ｊ１通算２９３試合１５得点。０５年からＵ―２０日本代表コーチ。１２年に広島監督に就任し、３度のＪ１優勝。１７年１０月から東京五輪代表監督。１８年７月からＡ代表と兼任監督。２１年東京五輪は４位。２２年カタールＷ杯は１６強。２６年Ｗ杯まで続投。家族は妻と３男。

　◆糸井　重里（いとい・しげさと）１９４８年１１月１０日、群馬・前橋市生まれ。７５歳。株式会社ほぼ日代表取締役社長。コピーライター、エッセイストとして幅広い分野で活躍。７８年に矢沢永吉の自伝「成りあがり」の構成を担当。７９年に沢田研二の「ＴＯＫＩＯ」を作詞。「おいしい生活。」「不思議、大好き。」など西武百貨店やスタジオジブリ作品のキャッチコピーなどを手がけている。本紙でコラム「Ｇを語ろう」を連載中。妻は女優の樋口可南子。