巨人・阿部慎之助監督がＣＳ切り札に２２歳の絶好調男を指名「代打の１番手で使いたくなっちゃうよね」

８回無死、右越えにソロを放つ中山礼都（カメラ・宮崎　亮太）

◆みやざきフェニックス・リーグ　斗山０―４巨人（８日・ひむか）

　巨人の阿部慎之助監督（４５）が８日、中山礼都（らいと）内野手（２２）を１６日に東京Ｄで開幕するクライマックスシリーズ（ＣＳ）最終ステージ（Ｓ）の代打の切り札に指名した。宮崎で行われているフェニックス・リーグ韓国・斗山戦（ひむか）を視察。豪快な本塁打を見届け「代打の１番手で、いいところで使いたくなっちゃうよね」と明言した。レギュラーシーズン最後の２試合で７打数５安打だった４年目の絶好調男が、１２年ぶり日本一を目指す短期決戦を前に存在感を増してきた。

　秋のひむかスタジアムに快音が響いた。白球は低い弾道で一直線に右翼フェンスを越えた。ネット裏の部屋で視察した阿部監督は、中山の豪快な本塁打に何度もうなずいた。

　「ずっと調子がいいから、これを維持してほしいな。代打の１番手で、いいところで使いたくなっちゃうよね」

　１６日から始まるＣＳ最終Ｓ。勝負どころでの代打の切り札として期待感を高めた。

　「３番・二塁」で出場し、８回無死、カウント１―１から、この試合初対戦の右投手の内角高め速球に反応した。腕をたたんで強振し、芸術的なバットコントロールで放った価値ある一発。初見の投手相手に対応力の高さも示した。５回は無死二塁、フルカウントから食らいつき、チーム打撃の進塁打となる二ゴロ。ＣＳ前の実戦確保のために１軍から参加する中で、状態の良さをアピールした。

　９月上旬に約１か月ぶりに１軍昇格して以降、２４打数１１安打、打率４割５分８厘。同７日のＤｅＮＡ戦（東京Ｄ）で９回２死一、二塁から代打で同点打を放つと、同１１日の広島戦（マツダ）は２点を追う９回先頭で代打で四球で出塁し、一挙９得点の大逆転勝利を呼んだ。リーグ優勝に貢献すると、ラスト２試合は計７打数５安打。打率が３割１分８厘まで上昇してレギュラーシーズンを締めた。

　レギュラーシーズン中、２軍落ちを経験するたびに、悔しさをバネにはい上がった。７日のフェニックス・リーグ初戦、阪神戦も２安打。中山の打撃面は何が変わったのか。阿部監督は「やっぱり１軍での成功体験が大きいんじゃないかな。その積み重ねが、どんどん自信になっていくだろうしね。打席が少ない中、頑張って数字が残ったから」と成長を感じている。

　今季の巨人のチーム代打打率はリーグ２位の２割１分８厘。中でも代打で３３打数９安打、打率２割７分３厘の長野と、同２０打数６安打、打率３割の中山の勝負強さが光る。現役時代に代打の経験がある阿部監督は「途中から出ていく難しさは分かる」と１打席勝負の重みを知る。その指揮官が代打の切り札として名前を挙げるほど、今の中山には高い技術と集中力がある。

　試合後、中山は「９月からしっかり相手投手をイメージして打席に立てています。自分のやるべきことを果たせるように頑張ります」とＣＳに向け力強く決意を口にした。阿部監督をうならせたプロ４年目の絶好調男に短期決戦で大仕事が託される。（片岡　優帆）

　◆ポストシーズン代打の切り札

　大道典嘉　０９年、２勝２敗で迎えた日本ハムとの日本シリーズ第５戦で８回裏に代打で同点打を放った。

　高橋由伸　１１年ヤクルトとのＣＳ第１Ｓ第２戦で１点リードの９回２死満塁から走者一掃の二塁打。１５年、阪神とのＣＳ第１Ｓ第１戦では延長１０回１死満塁から、ポストシーズン初のサヨナラ押し出し四球。

　石井義人　１２年、中日とのＣＳ最終Ｓ第５戦で９回１死満塁からサヨナラ打。シーズンでも左の代打の切り札として打率４割５厘をマークした。

　◆記録メモ　今年の巨人で代打起用が多かった５人の成績は

起用　　　　打　安本点　　打率

３７長　野３３　９－７　．２７３

２４中　山２０　６－１　．３００

２０オコエ１８　５１１　．２７８

１８佐々木１５　１－０　．０６７

１８立　岡１４　３－０　．２１４

　中山は２番目に多く起用されて打率．３００。オールスター戦を挟んで前半戦は７打数１安打の．１４３だったが、後半戦は１３打数５安打で．３８５。９月７日のＤｅＮＡ戦では、９回２死から代打で同点タイムリー。延長１２回のサヨナラ勝ちにつなげた。