日本卓球女子、50年ぶり中国撃破V 歴史動かしたのは16歳・張本美和 早田ひな欠場も決勝で世界ランク1&4位に競り勝つ
スポーツ報知 / 2024年10月10日 22時35分
◆卓球 アジア選手権 第3日(9日、カザフスタン・アスタナ)
女子団体決勝で、世界ランク2位の日本が同1位の中国を3―1で破り、2大会ぶりの優勝を飾った。国際大会の決勝で中国を破ったのは、1974年横浜大会以来、50年ぶりの歴史的快挙となった。シングルスで世界ランク7位の張本美和(木下グループ)が同4位の王芸迪、同1位の孫穎莎からともに3―2で金星を挙げた。平野美宇(木下グループ)も同6位の陳幸同を3―1で破った。
歴史を動かしたのは16歳だった。マッチポイントで張本がサーブで攻めて4球目、中国の孫の球が返ってこない。ついに王国に勝った。満面の笑みで小走りでベンチに駆けた。平野に抱き寄せられ、伊藤美誠、団体戦で出番がなかった早田ひなとハイタッチ。「高い壁」と見てきたシングルス世界1位の女王に競り勝ち、50年ぶりに中国を破って頂点に立った。
パリ五輪で左腕を負傷した早田を欠く布陣。1―1から平野が陳を破り、歴史的勝利に王手をかけて美和にバトンが回ってきた。過去6連敗の強敵を相手に2Gを先取されたが、表情は変わらなかった。第3Gの5―6。タイムアウトを取り、ベンチの早田の助言にうなずく。そこから磨いてきたフォア、逆回転のサーブと多彩な攻防で5連続得点。流れを引き戻した。第4Gでは孫のフォアを拾い、中陣(台から一歩引いた位置)のラリーから、バックでクロスに決めるスーパープレー。孫のサーブにも対応し、緩急をつけたバックでミドルに厳しく攻めるなどラリーで圧倒した。
悔しさを糧にした。2月の世界選手権団体戦の決勝。孫に0―3で敗れた。早田、平野が勝って2―2で回ってきた五輪2冠の陳夢戦。第1Gを11―4で取って見せた。第2G以降、陳夢は大きな声で自らを鼓舞。1―3で敗れたが、中国を“本気”にさせた新鋭をたたえる声が多かった。ただ、張本は「一番悔しい」と納得せず、早田の胸元で涙が止まらなかった。これを機にサーブなど1球の精度を追究し、劣勢でも「冷静に」と一定に保ち、中国に追い込まれた際のメンタルも磨いた。パリ五輪決勝では王曼昱に惜敗したが「想像より(差が)少ない。必ず超えられる」と感じられた。9月のチャンピオンズマカオで孫に敗れた際も「真っ向勝負で、通用してきた」と口にした。王国の背中をついにとらえた。
日本女子は五輪や世界選手権の決勝で中国の牙城に阻まれ、今年のパリ五輪も0―3で屈した。中国は五輪団体金メンバーの陳夢と王曼昱が不在だったが、日本にとっては今後の覇権争いへ自信のつく勝利となるのは間違いない。その立役者となった張本。28年ロス五輪での金メダル獲得へ、新エース誕生を予感させる快挙になった。
【視野が広い16歳】
張本は俯瞰でものをとらえられる。今年の中学卒業時のインタビュー。「学校の思い出」を問うと、さまざま語る中、最後に「(海外遠征があり)1回出られた合唱コンクールで(自身のクラスは)賞を取れなかった。けど、私がいない2回は取れた。うるさくて、いない方がバランスがいい」と笑いながら明かしてくれた。「一に健康、二に勉強、三に卓球」という両親の下、幼少時から「宿題をやらないと練習はできない」と勉強にも励んだ。得意科目は小学校で算数、中学では日本史も好きだった。試合ではベンチコーチもいることが多いが、敵と戦うのは自分。「1人で考えるしかない。そこは生きている」と世界で戦う16歳を支えている。(宮下 京香)
◆張本 美和(はりもと・みわ)2008年6月16日、仙台市生まれ。16歳。元選手でコーチの父・宇さん、母・凌さんの影響で兄・智和(21)に続き卓球を始め、3歳で大会に初出場。22年からシニアの国際大会に参戦し、昨年のフィーダーアンタルヤで世界ツアー初優勝。神奈川・川中島中から今春、星槎国際高横浜に進む。今年は全日本選手権女子単準V。世界選手権団体戦銀、パリ五輪団体銀。身長166センチ。
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