【番記者の視点】浦和「残留から目をそむけると落ちる」…1時間の選手ミーティングで定まった目標
スポーツ報知 / 2024年10月24日 7時0分
◆明治安田J1リーグ▽第25節 浦和1―0柏(23日・埼玉スタジアム)
【浦和担当・星野浩司】ラストプレーだった。浦和は0―0の後半アディショナルタイム5分。MF関根貴大の左クロスからFWチアゴサンタナのシュートが相手DFの手に当たり、PKを獲得。これを自らゴール右へ突き刺した。ゴール裏サポーターから「We are REDS!」の大合唱がこだまし、「サポーターが最後の最後まで後押ししてくれた結果、僕は決められた」。5戦ぶり白星に助っ人の笑顔がはじけた。
長いトンネルから、ようやく脱出した。
19日のアウェー・東京V戦は逆転負けで4連敗を喫し、16位に転落。試合後、GK西川周作とMF原口元気がゴール裏のサポーターと話し合いの場を持ち、「1人1人が責任感を持って戦う姿を見せてほしい」などの言葉を受け止めた。残留争いに巻き込まれる厳しい状況を好転させるため、21日の練習前にクラブハウスで選手だけでミーティングが行われた。東京V戦後にチアゴから発案があったといい、主将GK西川周作や原口、関根らが中心となり、意見を交わす場が設けられた。
チアゴは「ピッチに立つのは選手。自分たちしかこの状況を変えられない」と訴えた。関根は「ピッチ上にリーダーがいない現状がある。方向性が定まらないというか、ピッチの中で解決できないのが今、一番の問題。1人1人が発信していくことで、隣のポジションの選手がつながっていくことが、すごく大事」などと伝えたという。
横浜FCで21年にJ2降格を味わったFW松尾佑介は「残り6試合で残留(という目標)を明確にしないといけない。みんなが同じ方向を向けばこのクラブは強い」と強く呼びかけたという。その言葉を聞いたDF井上黎生人は「彼はJ2に落ちたことがあったので重みがあった。僕も(京都で)残留争いを2年間した。そこから目をそむけると、気がついたら落ちてしまう。彼が発信したことで、みんなの気が引き締まった」とかみしめた。
MF大久保智明が特に胸に刺さったのは、DFマリウス・ホイブラーテンの言葉だった。「苦しい状況の時に、周りで見てる人たちは非難してくるし、どの記事を見ても『大丈夫か、浦和レッズ…』とか、SNSを見ても『あいつが駄目だ、レッズは駄目だ』と。こういう時に、エネルギーが周りに向いてしまうことがあるのが一番良くない。自分たちが自分にできることに集中して、みんなで固まってやるのが大事。結果を出したい、周りを黙らせたいっていう気持ちも、もちろんあるけど、そういうエネルギーが良いエネルギーではないから、できることをやろうと、話してくれた。本当にそうだな…と思った」
年齢や経験、国籍など関係なく考えをぶつけ合い、試合の出場機会が少ない選手からも多くの意見が出た。西川は言う。「ウガ(宇賀神友弥)や(興梠)慎三の言葉はみんなにグッときたと思う。安部裕葵は試合に絡めていないけど、彼が言ったのは『選手1人1人に対してありがとうの気持ちを持つ、愛をもらっていることを考えないといけない』。ミスしても自分がカバーするぜ、という気持ちが表れる。彼の言葉はすごく大事にして、今後も戦っていきたい」
ミーティングは約1時間に及んだ。大前提として、ミーティングをやれば全てが解決するわけではない。だが、選手同士で意見を言い合い、方向性を定め、それぞれが感じたものをピッチで表現していくことはプラスにつながるはずだ。大久保は「とにかく残留という目標を掲げて戦うしかない、と話をした」。意思統一を図って臨んだ柏戦はMFグスタフソンを中心にビルドアップが改善され、決定機の数が少ない中でも勝ち点3という結果を手にした。
残留を争う柏との「6ポイントマッチ」を制し、前節の16位から暫定12位に浮上した。西川は「自分たちはまず残留をしっかり決めるために、腹をくくって、割り切って戦わなければいけない。内容どうこうよりもがむしゃらに戦って、諦めない姿勢が今は試される」。残り5試合。向かうべき道筋が見えたレッズは息を吹き返しつつある。
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