大谷翔平「有意義なアウトならＯＫ」の自己犠牲学び成長 エ軍から移籍で変化した打撃…担当記者が見た

◆米大リーグ　ワールドシリーズ第５戦　ヤンキース６―７ドジャース（３０日、米ニューヨーク州ニューヨーク＝ヤンキースタジアム）

　ドジャース・大谷翔平投手（３０）が、メジャー７年目にして悲願の世界一にたどり着いた。ド軍は３０日（日本時間３１日）、ワールドシリーズ（ＷＳ）第５戦の敵地・ヤンキース戦で最大５点差を逆転して７―６で勝ち、４勝１敗で２０年以来４年ぶりにＷＳ制覇を果たした。ついにＷＳ制覇の夢をかなえた大谷。密着してきたメジャー担当の中村晃大記者が、今の大谷を「見た」。

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　「投げることはできないけど、たくさん走りたい」。右肘手術明けの大谷は、そう周囲に宣言し、有言実行の「５０―５０」を達成した。歴史的なシーズンは世界一という形で幕を閉じた。キャンプ初日。「新しいチームなので、まずは環境に慣れる、チームメートに慣れることが最優先」と言って始動し、１年で“ドジャースらしい”選手になった。

　「不動」の準備力の一方で、ある「変化」も見られた。象徴的だったのが９月２日（日本時間同３日）の敵地・Ｄバックス戦。０―０の３回無死二塁で進塁打となる二ゴロで走者を進め、一挙３得点を演出した。「状況によっては生産的なアウトなら別にいい」。終盤になるにつれ、この手のコメントが増加。ＷＳ開幕前日にも「変な話、有意義なアウトならＯＫ」と自己犠牲の精神を語っていた。

　エンゼルスで過ごした６年間、大谷にかかる負担は大きかった。主砲・トラウトも２１年以降は故障がちとなり、自分が打たなければ負けるという状況が当たり前だった大谷の打撃は、常勝ドジャースに移籍してきた当初はチームの面々に時にわがままに映る部分もあったようだ。ベッツでもフリーマンでも、最優先は勝利につながるプレー。「勝ちたい」から入団した大谷が、同僚の野球を見て「勝つため」の規律を学んだ。

　今季５９盗塁のうち７月以降だけで４３盗塁と激増した陰には技術の他に意識の進化もあったはずだ。大谷は「全部のバランス力が素晴らしい」とド軍の強さを表現する。洗練された組織に身を置き、また一つ成長した。（中村　晃大）