「今永クラスのポテンシャルはある」井端弘和監督が巨人23歳左腕に将来の侍エースへの成長を期待
スポーツ報知 / 2024年11月8日 5時0分
野球日本代表「侍ジャパン」の井端弘和監督(49)が7日、「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」(9~24日)に向けて、スポーツ報知のインタビューに応じた。日本の初戦、13日のオーストラリア戦(バンテリンD)の開幕投手に抜てきした巨人・井上温大投手(23)には今回の経験を糧に侍ジャパンのエース格への成長を期待。巨人・戸郷翔征投手(24)、大勢投手(25)には絶大な信頼を寄せた。(取材・構成=阿見 俊輔、長井 毅)
開幕オーストラリア戦では井上に先発を託すと1日に公表した。
「CSの負けられない試合【注1】で、あのような投球をした。代表も負けられない戦い。初めてなので当然、緊張すると思うが、CS同様の精神状態で、同じような投球をしてくれたら最高。シーズンの後半戦は素晴らしかったので、その勢いで投げてくれれば。井上投手と話すのは今回が初めてで、おとなしい子という印象ですが、おとなしかろうと、うるさかろうと、野球をしっかりやってくれればいいだけです」
3月5日付の本紙インタビューでネクスト侍候補として井上を挙げるなど高く評価していた。
「ずっと気にして見ていた。レギュラーシーズン途中から1軍で先発登板して、いい球を投げるなと。前橋の登板【注2】ぐらいから強烈な球を投げ始めて、一皮むけた印象。巨人でも勝ち頭だったエース級に近い球を投げるようになり(日本ハム・伊藤の辞退で)すぐに井上と思った。宮崎に来る前に阿部監督と話したとき、『ここ(13日)で投げます』と言ったら『えっ? 中継ぎだと思っていました』と驚いていました。巨人は内海コーチも杉内コーチも代表で投げているので、代表でやることが(成長につながるか)というところに理解があったのかなと思います」
次回26年WBCの指揮も執る井端監督は、井上に大きな期待を寄せる。
「将来的には、日本の先発の一員、先発投手と聞かれたら『井上でしょう』というくらいの投手に成長してほしい。(カブスの)今永投手クラスまで成長できるポテンシャルはある」
エース格として戸郷も招集。23年のWBCでは「第2先発」の位置づけだったが、26年WBCもにらむ。
「巨人では先発で、あの時(前回WBC)は中継ぎをやっていた。次のWBCでは(戸郷も)『先発で』と思っているのではないか。すでに投げる試合も言ってあるし、プレミア12で先発の柱としてやってもらえればと。レギュラーシーズンでは、相手エースとの対戦が多い中、優勝に貢献したと思う。途中ちょっとへばったなと感じられたけれど、終盤で息を吹き返した。先発ローテをけがなく守っているのはさすが。投げ続ける体力、イニング、球数も抜群と思っています」
守護神は大勢と決めている。事前合宿のライブBPでも150キロ以上の直球を連発。順調に仕上げている。
「入団1年目から、抑えを任せられている。そこではトップだと思う。リードしているところで投げたらきっちり抑えてくれればいいし、勝ってくれれば点を取られててもいい。それが彼の仕事。絶大なる信頼を持ってマウンドに送れるので良かった」
巨人・岡本和、吉川、日本ハム・万波、伊藤が故障で辞退し、井上、日本ハム・清宮、楽天・村林、DeNA・桑原を追加招集。ヤクルト・村上やソフトバンク・近藤らの招集も故障で見送った。
「レギュラーシーズンが終わってからの大会だと、こういうことがあるのは分かっていた。想定はしていたので、全然問題ない。(追加招集組も)結果を出せる選手を呼びましたので当然、使うつもりでいます。4番はまだ決まっていない。(日本シリーズ出場組の4選手が8日に)全員そろって練習などで見て、本番までに決めたいです。清宮選手は(プロ入り後)途中、苦しんでいる時もあったのですが、やっと自分のフォームが見つかったのかなと。後半戦はすごく成績も良かったですし、国際試合を経験し、来年以降も(侍ジャパン)メンバーにきっちり入ってくるのではないか」
就任以降、常勝ジャパンの構築を目標に掲げている。プレミア12は通過点。
「ヤマ場は全部ですが、初戦(オーストラリア戦)をうまく切り抜けられたら。何が何でも勝ちたい。当然、世界一になるのが目標です。長い間、ジャパンが世界一でいるには、ずっと同じメンバーでもそうはいかない。若い選手を国際試合で経験させることが次のWBC、ロス五輪予選、ロス五輪へとつながっていく。少しでも、何か1つでもつかんで、この大会を終えてもらえればいいですね」
◆井上と今永 22年のオフに「今永さんは一番、日本ですごい左投手。今ここにいるうちに教えてもらいたかった」と弟子入りを志願して熊本県内で合同自主トレ。8割の力で10割の直球を投げることや食事管理など、多くのことについて助言を受けた。
【注1】DeNAに王手をかけられて迎えた10月19日のCS最終S第4戦(東京D)に先発。6回1死まで完全投球、6回1安打1失点でチームを勝利に導いた。
【注2】7月3日の中日戦(前橋)に先発し5年目で自己最長の8回を投げ5安打無失点。3勝目を挙げた。
◆井端 弘和(いばた・ひろかず)1975年5月12日、川崎市生まれ。49歳。堀越から亜大を経て97年ドラフト5位で中日入団。ベストナイン5度、ゴールデン・グラブ賞7度受賞。2013年WBC日本代表。同年オフに巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。巨人のコーチなどを経て、昨年10月に侍ジャパンの監督就任。プロ通算1896試合で打率2割8分1厘、56本塁打、510打点。右投右打。
■取材後記 井端監督の本紙インタビューは4回目とあって昨秋就任直後だった初回と比べると、緊張も解けて和やかな雰囲気で進んだ。明るい口調で応えてくれた指揮官だったが今回、故障で辞退した巨人・岡本和、吉川について尋ねると、神妙な顔つきになった。
「吉川選手が『ここ(ギリギリ)まで待ってほしい』という強い意志があるというのは十分伝わった。何とか間に合わせようとした。僕も一緒にやってるので、かなり精神的に強くなったなと。そこはうれしかったです。岡本選手が『痛い、かゆい』と言うのだから、相当だなと想像がつく。まずは早く治して、来季に向けて頑張ってもらえれば」。2人とも巨人コーチ時代の“まな弟子”で、戦力的に辞退のダメージも大きいはずだが、復活を願う言葉からは信頼感の強さを感じた。26年WBCでは井端監督と一緒に戦う姿が見たい。(阿見 俊輔)
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