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尾上松也、17年前からの念願「朧の森」で幸四郎とWキャストで主演「挑戦します」

スポーツ報知 / 2024年11月10日 5時0分

「稽古が刺激的で楽しい」と語る尾上松也(カメラ・小泉 洋樹)

 尾上松也(39)が歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」(東京・新橋演舞場、11月30日~12月26日)で松本幸四郎(51)とのダブルキャストで主人公のライを演じる。「レジェンドの幸四郎さんと同じ役をやるのは夢みたい」と心を躍らせ、世界一に輝いたドジャース・大谷翔平投手(30)の名言を引き合いに「舞台では憧れるのをやめて挑戦します」と意欲を燃やす。40歳の節目を来年に控え、次のステージを目指す決意も語った。(有野 博幸)

 圧倒的な躍動感で縦横無尽に駆け回り、キラキラと輝くオーラで劇場の空気を支配する雄姿が脳裏に焼き付いている。松竹と劇団☆新感線がタッグを組み、幸四郎(当時は市川染五郎)が主演した「朧の森―」の初演は2007年。松也は「自分もいつか、この舞台に立ちたい」と羨望のまなざしを向けていた。

 あれから17年。歌舞伎の新たな可能性を追求する「歌舞伎NEXT」としてよみがえる伝説の舞台で、幸四郎とのダブルキャストでライとサダミツの2役を勤めることになった。「まさか憧れの作品で、憧れの幸四郎さんとダブルキャストとは…。びっくりしました」。幸四郎から「勝負だ!」と鼓舞され、「おこがましいです。勝負というより、僕と幸四郎さんで違うライが楽しめる公演になれば」と意気込んでいる。

 新感線を主宰する、いのうえひでのり氏(64)の演出作品は18年の「メタルマクベス」以来、6年ぶり。「いのうえさんは、稽古で動きからセリフのタイミングまで、あらゆることを細かく演出してくれる。形を作ってから感情を乗せていく感じ。歌舞伎も先輩からご指導いただく場合、形をまねすることから始まって自分で吸収していくので、なじみやすいし、すごく納得できる」と信頼を寄せる。

 通常の歌舞伎より長い約1か月間の稽古で「朧の森」の世界を創造している。「刺激的で楽しい毎日です。幸四郎さんが稽古する姿を見て『あ、ライがいる!』と感動したり、『幸四郎さんが言っていたセリフを俺が言っているよ!』と興奮したり。ダークヒーローのライが悪の限りを尽くす物語。その悪の美徳を存分に楽しんでいただきたい」と声を弾ませた。

 前回、古田新太(58)が演じたマダレ役を市川猿弥(57)、阿部サダヲ(54)が演じたキンタ役を尾上右近(32)、真木よう子(42)が演じたシュテン役を市川染五郎(19)が勤めるなど歌舞伎俳優が勢ぞろいする。「セリフ回しは、普段の新感線に近い雰囲気で、歌舞伎の演出が加わる感じです」。前回も好評だった花道での飛び六方、本水の立ち回りに加えて、宙乗りなどダイナミックな演出も取り入れ、新感線と歌舞伎の融合が加速する。

 20歳で父・尾上松助さん(享年59)を亡くして、来年で20年。後ろ盾を失ったが、自主公演「挑む」などで地道に経験を積み、今年6月に博多座で上演した「身替座禅」「東海道四谷怪談」など古典の大役を任される機会も増えた。「歌舞伎俳優としての生い立ちを考えたら、夢のようなことばかり。歌舞伎を好きで諦めずに信じていれば、報われる日が来るんですね」と感慨深げに語る。

 昨年、演出に初挑戦した新作歌舞伎「刀剣乱舞」は連日満員の大盛況で、来年7、8月に第2弾が決定。今年1月には若手の登竜門「新春浅草歌舞伎」を卒業した。「演出を経験して視野が広がった実感があります。来年は40歳の節目なので、さらに意識を変えて先輩方に追い付け、追い越せで挑戦していきたい」と気を引き締めている。

 ◆「朧の森に棲む鬼」 作・中島かずき、演出・いのうえひでのり。シェークスピアの「リチャード三世」を題材に、源頼光による大江山の「酒呑童子伝説」の要素も取り入れ、噓と欲望に支配された男の栄光と破滅の物語。幸四郎、松也、猿弥、右近、染五郎のほか、中村時蔵、坂東新悟、澤村宗之助、大谷廣太郎、片岡亀蔵、坂東彌十郎らも出演する。11月30日~12月26日に東京・新橋演舞場、来年2月4~25日に福岡・博多座で上演する。

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