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巨人18年ドラ3右腕「チャンスをものにできるようにやり切りたい」戦力外通告→育成再契約の現在地

スポーツ報知 / 2024年11月17日 11時0分

育成からはい上がることを誓った直江

 巨人の若手選手の今を伝える「From G」。第15回は直江大輔投手(24)。10月下旬に戦力外通告を受けたが、11月上旬に育成選手としての再契約を打診された。球界でも珍しいケースの裏側で、球団との間でどんなやり取りが行われていたのかを明かし、戦力外を宣告されてからの数日間で考えていたことや感情の動きを赤裸々に語った。(取材・構成=小島 和之)

 戦力外通告からの育成再契約という形で、直江は再び巨人のユニホームを着ることになった。紆余(うよ)曲折を経た現在の心境を素直に明かした。

 「まだやれる年齢ですし、やりたいとも思っていました。(戦力外通告を受け)NPBでできたらと思っている中でもう一度、巨人からお話を頂けた。完全に(巨人で)野球を続けることはないと思っていたので安心しました」

 22年にプロ初勝利を挙げ、昨季は自己最多の16登板。だが今季は、2軍から参加した3月12日のソフトバンク戦(平和リース)で先頭打者への四球後に2ランを浴び1回2失点。1日で2軍行きとなった。

 「年間を通して攻めの投球が全くできなかった。一番の要因は直球に自信を持てなかったこと。去年は1軍でも『打ってみろ!』という気持ちで投げられていたけど、今年は春先のオープン戦で一気に自信をなくして(気持ちが)折れてしまった。年間を通してその場しのぎで、マウンドで自信が全くなかった。ピッチングが小さくなり、対打者ではなく自分自身の問題からなかなか抜け出せないことばかりの1年でした」

 プロ6年目は、5年ぶりに1軍出場なしに終わった。「クビもあるだろう」と覚悟していたが、その日が近いことを感じた時があった。10月下旬、参加していた、みやざきフェニックス・リーグからの帰京を伝えられた。

 「僕も含めて4人呼ばれて、帰京してほしいと言われた。育成契約か、クビもあるという覚悟はしていたので別に驚きはなかった」

 巨人は同26日、山田、菊地、松井、中田を自由契約とすることを発表。球団はこの4選手には育成契約を打診したとみられるが、そこに直江の名前はなかった。

 「呼ばれるなら一緒にだと思っていたので、なんだろう?と。ですが、その2日後に呼ばれたんです」

 同27日、直江の電話が鳴った。「明日、球団事務所に来てほしい」。翌28日、事務所へ向かうと、球団幹部の待つ部屋に通された。

 「『来季うちとしては契約をしないと考えています』と。初めての経験でしたが、そこに呼ばれるということはそういうことなので」

 野球漬けの生活は激変した。早朝のG球場で戦力外を受けた他の選手と練習は続けたが、時間を持て余していたという。

 「すごく暇でしたね。残りの時間は何しよっかな~という感じ。一回(地元の長野に)帰ろうかなとも思っていたし、これまで引っ越しを担当してくれた方に『こういう場合はどうなりますか?』と連絡したり…。そういう準備もしてました」

 ここから、右腕の野球人生は本人も予想していなかった展開を見せる。11月2日、球団の編成担当から着信があった。

 「朝、球場で運動をして球場近くのスターバックスで時間をつぶしていたら、編成の人から『今どこにいる? 球団事務所に来てほしい』と電話がありました。急いで家に帰って、スーツに着替えたけど、理由が分からなかった。考えていたのは他球団から話があったのか、それとも僕がプライベートで何かやらかしちゃったのか?ということ(笑い)。どういうこと?という感じでしたね」

 都内の球団事務所に着くと、球団幹部が待っており、再び契約を結びたいと伝えられた。一度は戦力外となったが、球団内で慎重に検討した結果、方針が変更となった。

 「SNSで『ありがとうございました』という投稿をしていたんですが、その何日か後にこうなって、どうしよう…と。プレミア12に参加している3人(戸郷、大勢、井上)とトレーナーさんにはLINEで連絡して、盛大に別れを告げていたんですけど、もう一回お願いしますって…(笑い)」

 翌3日から秋季練習に合流。巨人と再契約する意思を固め、ユニホームを着られる喜びを再確認した。

 「球場を使うにも、練習内容にしてもそう。いろんな人がいないとできない。個人で練習している時は自分たちでノックを打っていたし、キャッチャーもいなかった。いろいろと感じることがありました」

 クビを宣告され、いわば「一度は死んだ身」。現在地を明確に理解できたからこそ迷いは消えた。

 「実際、『もうここには要らない』と言われているわけなので。自分自身にもう一回、集中できるんじゃないのかなという気持ちがあります。環境をフルに使って、自分の能力を上げていくことを最初に考えたい。結果的に必要とされて、チームに還元できればそれでいい。1年勝負だと思うので、チャンスをものにできるようにやり切りたい」

 誰のものでもない、自分だけの野球人生。どん底から、もう一度はい上がる。

 ◆G直江のこれまで

 ▽19年 1軍出場なしも2軍では先発1試合を含む3登板で1敗、防御率10.80。

 ▽20年 8月23日の広島戦(マツダ)で1軍初登板初先発し、4回1失点。3登板で0勝0敗、12イニングで防御率3.00。10月に腰の手術を受け、育成選手として再契約。

 ▽21年 6月に支配下に復帰。7月1日の広島戦(東京D)で283日ぶりに本拠地のマウンドに上がり、3回を完全投球でプロ初セーブ。先発3試合を含む4登板で0勝1敗1セーブ、防御率4.91。

 ▽22年 8月13日の広島戦(東京D)で6回3安打無失点の好投を見せプロ初勝利。先発3試合を含む9登板で1勝1敗、防御率3.38。

 ▽23年 中継ぎとして開幕1軍入り。5月中旬に抹消されるまでに自己最多16登板。一時は勝ちパターンの一角を担い、0勝1敗、6ホールド、防御率3.86。

 ▽24年 3月のオープン戦で結果を残せず開幕2軍。2軍では先発6試合を含む17登板で2勝3敗、防御率3.20だったが、1軍登板なし。

 ◆直江 大輔(なおえ・だいすけ)2000年6月20日、長野市生まれ。24歳。松商学園では2年夏の甲子園に出場し、2回戦敗退。18年ドラフト3位で巨人に入団。今季は1軍登板なし。185センチ、87キロ。右投右打。

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