「なんで自分の球が投げられないんだ?」育成再契約の巨人24歳右腕が直面した“狂い”からの脱却
スポーツ報知 / 2024年11月19日 12時45分
巨人の松井颯投手が、どん底を味わった今シーズンを振り返った。自身初となる開幕1軍入りを果たしたが、4月上旬に2軍降格。その後は腰を痛めた影響で投球フォームの感覚に狂いが生じ、3軍落ちも経験した。昨季、プロ初登板で初勝利をつかんだ若武者が2年目にぶつかった壁の詳細を明かし、育成再契約して迎える来季への決意を語った。(取材=小島 和之)
松井にとってのプロ2年目は、自分自身と深く向き合い、悩み続けたシーズンとなった。明星大から育成1位で入団したルーキーイヤーの昨季は、5月に支配下登録され球団史上初となる育成新人初登板初勝利をマーク。さらなる飛躍が期待された今季は初の開幕1軍入りを果たしたが、結果を残せず2登板で防御率13・50に終わり「体やフォームのことで試行錯誤した1年だった」と振り返った。
体を異変が襲ったのは、2軍合流後の4月から5月にかけてのことだった。4月28日のイースタン・楽天戦(楽天モバイル)で6回1失点と好投し、5月6日の同ヤクルト戦(戸田)へ向けた調整中に腰に違和感を覚えた。つかんでいた先発ローテを手放したくない思いもあり、「投げていくうちに良くなっていくかな」と考えていたが、投球への影響は明らかだった。
同ヤクルト戦からの4登板で、21イニングを投げて18失点。特に6月2日の同DeNA戦(平塚)では1イニングで8点を奪われた。「球速も落ちたし、簡単に打たれるようになってしまった。このまま投げ続けても1軍には上がれないと思い、桑田さん(2軍監督)に話をした」。同中旬、3軍合流が決まった。
復調への道も簡単ではなかった。患部をかばいながら投げ続けた代償は大きく、患部の状態は良くなってもフォームの狂いは直らなかった。「無理をして1ケ月間投げ続けちゃったから、変にかばいながらというフォームが(体に)染みついてしまった。メカニクスもそうだし、脳とか体が覚えている感じがもう全然ダメ。思いっきり投げているんだけど力が入らない。もう全然、自分の球がいかない。そういう状況に陥ったことがなかったので、『なんで自分の球が投げれないんだ?』って。ずっと模索して、練習していたんですけど、全然分からなくて」。3軍では約1か月半の間、もがいた。
8月上旬に2軍戦に復帰した後も、フォームの試行錯誤は続いている。腰をかばい、横振りとなっていた体の動きを縦に使うように矯正。久保巡回投手コーチらの助言を受けながら、地道にシャドーピッチングなどで正しい動きを体に染み込ませてきた。「シーズン中はシュートして打ちごろみたいな球だったけど、ちょっとずつ伸びがある球になってきた。球速や強さという面ではちょっと物足りないんですけど、そこは今後継続してやっていこうと」。9月中旬以降に2軍で先発した3試合では、14イニングを投げて2失点と結果も徐々についてきた。
今オフは、23日に台湾で開幕するアジア・ウィンターリーグ・ベースボール・リーグに参加。「力強い真っすぐをアウトローに投げる精度を念頭に置いてオフシーズンやっていきたい」とテーマを設定。再び育成契約からスタートする来季へ向けて「来年はしっかり成長して、また1軍の舞台に立って結果を残せるようにやっていきたい」と巻き返しを期す。どん底から、もう一度はい上がる。
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