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【未来アスリート】2年連続日本一を目指す立命大日本拳法部。女子団体三銃士が団結力で頂点に立つ

スポーツ報知 / 2024年11月22日 17時38分

インカレ連覇を目指す立命大日本拳法部の(左から)野村麻央、大川桜弥女子主将、宝得未知。変わらぬ団結力で女子団体戦に挑む

 立命大日本拳法部の女子三銃士が、12月1日に行われる第69回全日本学生拳法選手権大会(エディオンアリーナ大阪)で連覇を目指す。昨年のVメンバー、大川桜弥女子主将(総合心理学部・4年)、宝得(ほうえ)未知(産業社会学部・3年)、野村麻央(産業社会学部・2年)が今年も健在。日々の鍛錬で自らの技を磨き上げた精鋭たちが、今季の集大成となるインカレで2年連続日本一の栄冠を勝ち取る。

 京都市・衣笠キャンパスにある地下の格技場にピンと張り詰めた空気が漂う。股関節や体の柔軟性を高めるストレッチと基礎練習を入念に繰り返した後、女子選手たちが剣道の防具に似た鉄面と胴を着装し、股当て、さらに拳(こぶし)にグローブをはめると、2人1組となって一斉に突き、蹴り、投げ技を浴びせ合い、連続技を繰り出す実践練習が始まった。3分1ラウンドで短い休憩を挟み、男子部員も交えて相手を変えていきながら10ラウンド以上をこなす。中身の濃い2時間の練習を週2日行い、土曜には「びわこ・くさつキャンパス」の男子部員も合流して3時間、汗を流す。女子主将2年目の大川は「昨年は優勝に導けたが、今年は夏の全国(全国大学選抜選手権大会)で準優勝に終わったので、気を引き締めてもう一度、優勝に向かって皆を引っ張っていきたい」と、言葉に思いを込めた。

 昨年11月の全日本学生選手権大会は、前年の決勝で敗れた関学大を相手に先鋒・宝得、中堅・野村、大将・大川で臨み、3-0で完勝した。「勝てる手応えがあった。(当時1年の)野村の調子が良くて無茶苦茶強かった」と証言する大川。同7月の全国大学選抜選手権大会は前年の王者・関学大を破った関大と決勝を戦い、宝得が破れたものの、大将の大川が決めて優勝。昨年は西日本学生選手大会を含めた主要な団体戦3大会を同じメンバーのチームワークですべて制した。だが、V2を狙った今年6月の全国大学選抜選手権大会は決勝で、京産大に1-2で敗戦。先鋒・大川、大将・宝得が足をすくわれた。「元々、プレッシャーに弱くて、決勝は緊張して体が動かなかった」と宝得。大川は「(先鋒の)私が一度も負けたことがない相手に負けてしまったことが、(1ー1で迎えた大将の)宝得にプレッシャーを与えてしまった」と、無念そうに振り返る。

 日本拳法は防具を着装した総合格闘技だ。「突き」、「蹴り」、「投げ技」、「関節技」、「寝技」を駆使して勝敗を競う。柔道、空手など多くの格闘技の要素を併せ持ち、3分間3本勝負。2本先取した方が勝ちとなる。防具着装部へ形に則った強烈な突き、蹴りを決めるか、倒した相手の動きを封じて追撃を加えるか、あるいは関節技に成功して初めて1本となる。防具を着装していない部位への攻撃はできない。打撃だけではなく、立ち技や組み技、寝技などを絡めて攻撃を仕掛けるなど、戦術は非常に多彩で複雑だ。他の打撃武道と違うのは足運び。遠い間合いからの打撃や、蹴りの間合いから拳を飛ばす。体重に制限はなく、まさに「小よく大を制す」が、醍醐味のひとつでもある。大学の女子団体戦は3人制で行い、先鋒、中堅、大将にだれを起用するかは「試合前まで相手校の様子を見ながら決めます。相性や作戦など人選の駆け引きで勝てることがある」と、大川は明かす。

 女子団体戦は圧倒的に関西勢が強い。立命大、関大、関学大に京産大を加えた4強が大学の日本拳法界を席巻する。「以前の関学大はだれと対戦しても厳しい戦いだったが、今は関大。最もライバル視しています」と口をそろえる。関大のエース、岩木美朱(2年)は、大商大堺出身で野村と同級生。2人の戦いは「世代ナンバー1決戦」とも呼ばれ、高校日本一を争う大きな大会で優勝を分け合ってきた。関大にはさらに新戦力の1年生コンビとして高校時代、全国での優勝経験がある中井天鈴(大商大堺)と、宝得の後輩にあたる長身の前田望結(大阪高)が加入している。「今年の西日本(学生選手権大会)の決勝で、1-2で負けたのも関大でした」と大川。宝得も「(全国大学)選抜(選手権大会)の決勝でプレッシャーがかかったのも、その関大を京産大が準決勝で下していたから」と打ち明ける。関大を筆頭に関西勢に勝たない限り、インカレ連覇の道が開けないことは、だれもが承知の上だ。

 3人とも幼い頃から日本拳法に触れ合ってきた。大川は小学5年の時、大阪市内の実家近くの道場へ通い始めた。6年からは体幹を鍛えるためにボクシングジムに通い、今でも続けている。ミット打ちや相手がいればスパーリングも行う。「道場は指導が行き届いていなくて、ボクシングジムの方に週3、4回は行っていた。日本拳法は減量がないけど、ボクシングはそれがあるのが残念で…。本格的に日本拳法に取り組んだのは高校(関西福祉科学大高)に進んでから」という。宝得は3歳から三重・名張市で隣家の道場の先生に勧められて始め、転居した小学6年からは大阪市内の道場で鍛錬した。2歳上の姉・美咲さんも同じ大阪高で活躍し、現在は大阪の大学で指導者。6歳下の妹・未来(みくる)さんも競技に取り組み、高校進学を控えている。野村は父・定徳さんが大阪市内の道場で指導しており、6歳頃から父がいる道場で始めた。中学では「部活がやりたくて」柔道部に在籍したが、2019年の全日本拳法少年個人選手権の女子中学3年の部で優勝。それ以前からライバルの岩木美朱(現関大)と世代トップの座を競い合ってきた。

 宝得、野村は高校時代、全国大会の個人戦で優勝経験を持ち、大川はインターハイ3位の猛者ぞろい。大阪の高校で腕を磨いてきた3人が立命大で初めて一緒になった。「とにかく強い大学へ行きたかった」と話すのは大川。4年前のインカレで立命大が団体戦で優勝するのを見届けてから翌年に進学し、個人戦4冠を達成するなどレジェンドと呼ばれる角野円香や坂本佳乃子とともに、21年のインカレでは1年生でメンバー入りして見事、連覇達成に貢献した。宝得は「高校(大阪高)の2つ上、1つ上の先輩がいずれも関学大に進学したので、あえて立命大に入学して先輩方を倒そうと思った」と、当時の気持ちを口にする。大学での先輩との対戦は、ほぼ五分。「目標は少し達成できた」と、笑顔を見せる。野村は実際に立命大の練習を見学してメリハリと雰囲気の良さが決め手となった。「他校のように週6日の練習は私にはストレス。やりたいこともたくさんあるので両立したかった」。その言葉通り「複雑な現代社会の問題を多面的に研究できる」という産業社会学部の学びに向き合いながら、多くの資格取得を目指し、週1回ジムでのトレーニングも欠かさない。宝得は同学部の「子ども社会専攻」で子どもとの関わりにより興味を抱き、大川は「大阪いばらきキャンパス」の総合心理学部で人間が直面する様々な課題に取り組み、練習のために京都へ通う。それぞれがキャンパスライフを満喫しながら、2年連続日本一への道筋を描いている。

 心掛けているのは主体性だ。練習は自分たちで考えながら積極的に取り組む。大川の武器は身長165センチのサイズを活かせる組み技。柔道のように組み合い、相手を倒して仕留める。153センチと小柄な宝得は面突き。158センチの野村は父直伝の左フックで、2本を取る強い気持ちを貫く。大川は「得意な技や弱みがそれぞれ違うので、どこを磨いて、どこを改善するか、皆の意見を聞き、話し合って練習内容を決めている」と説明する。宝得は「男子と一緒に実践練習をすると身長の高さや力も違う。スピードもあるのでプラス面が大きい」という。今年は格闘技未経験の男子部員が多数入部したため、衣笠キャンパスの練習では女子部員が指導役を担う。オフ明けの春、夏の1、2泊の合宿では、強化よりお互いの絆(きずな)を深めることに主眼を置き、部員28人(男子20人、女子5人、マネージャー3人)が気持ちをリセットしてシーズンに向かうなど、団結力の強さにどこよりも誇りを持つ。

 いよいよ3年ぶりの2年連続日本一をかけた決戦が始まる。このインカレを最後に、一線を退く大川は「年の締めくくりで一番ビッグなタイトルを、今年も取ることを目標にしてきた。絶対に倒れない組み方を貫きたい」と誓う。女子の次期主将が決まっている宝得は「スピード感あふれる鋭いパンチを磨いてきたので、絶対に負けたくない」と言い切る。野村は10月に行われた全日本学生個人選手権大会で、ライバルの関大・岩木に準決勝で敗れたが、さらに闘志を燃やす。「目標のために一日一日の練習を大切にしてきた。来年からはチームを支える立場になるし、より自覚と責任が必要。学生の間に(女子個人日本一を決める)総合選手権大会で勝ちたいので、こだわりの速いパンチを繰り出します」と、自らを奮い立たせた。心をひとつにした三銃士が、立命大の黄金時代を築くために今年も頂点を極める。

 ◇大川桜弥(おおかわ・さや)関西福祉科学大高出身、立命大総合心理学部4年。日本拳法参段。昨年から女子主将を務める。中学の部活はバスケットボール。大阪の実家から大学へ通学し、妹の彩葉(あやは)さん(1年)も立命大日本拳法部に所属する。昨年の総合選手権大会で全国3位。日本拳法の魅力は「体格が違う相手と戦い、戦法も違うところが面白い」という。「日本拳法でメンタルを鍛えられ、自分と言えば日本拳法とはっきり言えるようになった。同じ高校の後輩には絶対負けたくない」そうだ。卒論のテーマは外見的魅力と笑いの要素の関連性。お笑いコンビの「9番街レトロ」のファンで東京の劇場まで行くほど。試合後に食べるうなぎが好物。卒業後は放送・通信業界に進む一方で、自身が通う道場で子どもたちを指導する予定。古着をリメークしてファッションを楽しむ一面も。

 ◇宝得未知(ほうえ・みち)大阪高出身。立命大産業社会学部3年。日本拳法参段。アルバイトをしながら京都市内で独り住まい。中学の部活は吹奏楽部。ピアノを2年習った。2年前の総合選手権大会で全国3位。日本拳法の魅力は「身長が低いから負けるわけでもないし、高いから勝てるわけでもない。だれが勝つか分からない所」と実感を込めて話す。「高校で競技を始めた同期が関学大にいて、経験者の意地として絶対に負けたくない。日本拳法で精神力と継続力を鍛えられ、人生のやりがいを見つけた」そうだ。その一方で「大学を終えて引退し、やりがいがなくなった時が怖い」ともいう。卒業後は小学生の頃から夢だった美容関係の仕事を目指す。姉・美咲さんのように道場で指導を行う予定。「宝得」の苗字は家族と親戚以外で聞いたことがないという。

 ◇野村麻央(のむら・まお)大商大堺出身。立命大産業社会学部2年。日本拳法参段。大阪の実家から通学する。中学の部活は柔道部。父のいる道場では、今年の総合選手権大会18歳以上成年の部で最年少優勝した明大1年・土屋泰生さんとも練習をともにした。兄・竜星さんも明大で活躍し、今は道場で指導している。昨年は1年ながら全日本学生個人選手権で2位。日本拳法の魅力は「いつから始めても優勝を目指せる競技」という。実家近くのアイスクリーム店でアルバイトをし、海を見に行くのがリラックス方法。同期のライバル、岩木美朱(関大)とは「ライバルでも友人で一緒にご飯を食べる仲」だそうだ。試合後の焼肉とチョコレートが好物。卒業後は本格的に指導者の道へ進むことも考えている。ヒップホップ、K-POPなどダンスが好きな一面も。

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