「ドクターＸ」の最後が「女優・米倉涼子」の新たなスタート…担当記者の「取材ノート」

ファンの声援に応える米倉涼子（右）と内田有紀

　女優・米倉涼子（４９）の主演映画「劇場版ドクターＸ」（田村直己監督）が１２月６日に公開される。米倉がフリーランスの天才外科医・大門未知子を演じる人気医療ドラマの初劇場版でシリーズ完結編。「ドクターＸ」としては最後だが、「女優・米倉涼子」としては、これが新たなスタートになる。

　テレビ朝日系ドラマで７シリーズ、全て同クール１位の高視聴率を獲得した人気シリーズ。２０１２年１０月に行われた第１シリーズの制作発表から取材し、全シリーズ・全話視聴している。何度か撮影現場を取材する機会にも恵まれ、白衣姿で華麗に歩く米倉の姿も間近に見てきたので、１２年間にわたるシリーズにピリオドを打つことが、非常に名残惜しい。

　視聴者の一人として「まだまだ『ドクターＸ』が見たい」と思っていたが、先日、米倉にインタビューして率直な思いを聞いたことで、シリーズに幕を下ろす決断をした理由が分かった。１２年のスタート時に３７歳だった米倉は今年で４９歳。「ミニスカートにヒールで走ったり、今は絶対にできない。私はもう５０近いから申し訳ないし、単純に寒いし…」。風呂場の湯船で両脚をＶ字に広げる、おなじみのシーンも「もうできない体になった。だから、今回の映画では最終日に回してもらって、何とか撮り終えました」と明かした。

　この１２年間、颯爽（さっそう）と大門未知子を演じる一方、病との闘いの日々でもあった。１９年に頭痛やめまいなどの症状が出る「低髄液圧症候群」を発症、２２年には「急性腰痛症及び仙腸関節障害による運動機能障害」に悩まされた。そのため、今回の映画化は「ドクターＸ」が復活するのと同時に、米倉自身が芸能界の第一線を走る女優として復活するための挑戦でもあった。

　天才外科医・大門未知子のイメージが定着することに対して「新しいスタートを切りたいと思うこともありました」と葛藤も明かした。今回の映画は集大成にふさわしいスケール感があり、繊細な心情も表現されていた。それを見て思った。「『ドクターＸ』が終わってしまうのは残念だが、今後は別の作品で米倉の人間味あふれる演技に期待したい」と。天国の西田敏行さんも見守ってくれている。

（有野　博幸）