川崎FW小林悠が語った今季限りで退任の鬼木達監督との15年間の歩み「人としてめっちゃ好き」…インタビュー後編
スポーツ報知 / 2024年12月4日 5時5分
J1川崎で8季指揮を執り、歴代最多4度のリーグ優勝を含む国内タイトル7冠に導いた鬼木達監督(50)が、8日の福岡戦(U等々力)でラストマッチを迎える。今季限りで退任する名将と、コーチ時代を含めてルーキーイヤーから15年ともに戦ってきたFW小林悠(37)が、このほどスポーツ報知のインタビューに応じ、恩師についての思いを語った。(取材・構成=後藤 亮太)
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17年にリーグ初優勝を成し遂げた後、川崎は鬼木監督のもと黄金時代を築き、18年には連覇を達成し、20、21年にも連覇するなど、5シーズンで4度のリーグ優勝を果たした。その強さの根源は、鬼木監督の伝えるメッセージにあったと小林は言う。
「鬼さんはいつも『自分に矢印を向けろ』と言ってくれる。例えば選手のミスで負けた試合でも、まず最初に鬼さんが『自分がもっとやれることがあった』と言うんですよ。鬼さんが自分に矢印を向ける監督だったから、選手も人のせいにしなかったし、まずは自分に矢印を向けるようになった。それは鬼さんと出会ってから特に自分の中で変わったこと。何があっても、まずは自分がどうだったか。いい試合、悪い試合がある中で、自分に矢印を向けて反省することで、やっぱり人としても、選手としても成長できる。鬼さんの人間性がそのまま選手に伝わっていたと思う」
そんな特別な時間に、終わりの時はきた。10月16日。鬼木監督の今季限りでの退任が発表された。その日の練習前のミーティングで選手たちに通達されたが、その瞬間、小林の頭の中には様々な思いが駆け巡った。
「鬼さんが前に出て話し始めると、涙が止まらなくて。例えば、今年自分がもっと点を取っていれば、鬼さんは辞めなくて済んだのかなとかいろいろなことが頭を巡って。ゴールで鬼さんを助けられたことが多かったので、今年はそれがあんまりできなくて悔しいという気持ちだった」
2日後にはG大阪戦を控えていたが、練習中も、小林の心は宙に浮いたままだった。
「喪失感はやっぱりすごかったですね。僕がプロに入ってからずっと一緒にやっていたので、来年からいないんだと思った時に、プロとして申し訳ないけど、練習に力が入らなくて、頭も働かなくて…ギリギリまで鬼さんに『使わないでください』と言おうか迷った。(試合では)ピッチに立てば体は動きましたけど、前日の練習とかは本当にやばいなって思いました」
それでも、同戦は1点ビハインドの後半23分に投入されると、後半36分に期待に応える同点ゴールを決めた。試合後。鬼木監督と抱き合った時、こう、言葉をかけられた。「やっぱり、悠が決めてくれたな」。思わず、涙腺が緩んだ。
「いや、もうあれもやばかったですね。涙が出たし、もっと早くやれていればって気持ちが出てきちゃって。そういう試合がもっとあれば、違う形になったかなとか思いますし…うん、だからこそ、すごい悔しかったです。点を決めたけど、やっぱり悔しかった」
そこから、刻一刻と、同じチームで戦う日は少なくなっていったが、退任が発表されて以降、小林は鬼木監督とあえて距離を置いているという。
「退任が決まってから、まだちゃんと話をしていないです。話をしたら、僕が感情的になって、試合どころじゃないなと思って。何とか試合をやるためには、鬼さんとなるべく目を合わせないようにしようという感覚だった。そのことについて話をしたら、今、気を張っているのが、全部崩れちゃいそうな感じなんで。話したいことはいっぱいあるけど、今は我慢しています。感謝だったりは、シーズンが終わってから話したいと思います」
小林にとって、鬼木監督はどんな存在か。シンプルな問いに、あふれたのは純粋な気持ちだった。
「いや、もう人としてめっちゃ好きですね。本当にまじめで、負けず嫌いで、練習もミーティングも長いんですけど、やっぱり勝ちたいから全部伝えたいし、やっておきたいと思うんですよ。(練習の)最初に『今日は1時間20分で終わるから』と言うんですけど、絶対に終わらない(笑)。みんなも絶対に終わらないと言いますけど、それもお決まりみたいになっていて。それが鬼さんだし、そうやって優勝してきたので。全部をひっくるめて、やっぱり好きなんですよね」
ともに戦う時間は、シーズン最終戦の8日の福岡戦で終わりを告げる。ただ、小林の心の中には、新たな思いが芽生えていた。
「鬼さんが(来季以降は)対戦相手の監督になると思うので、やっぱり鬼さんのチームに対して点を取りたいですよね。自分はまだまだやれるぞってところを見せたいし、『悠にやられた』って言わせたい。そのモチベーションはめっちゃありますね。ゴールを決めたら、感謝と尊敬の念を込めて、鬼さんの前でガッツポーズをしようと思います」
その光景もまた、二人の特別な物語の1ページになるだろう。
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