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【箱根への道】大学卒業で引退の撤回は「絶対にありません」青学大・若林の決意 「チームのため」連覇を置き土産に

スポーツ報知 / 2024年12月10日 6時0分

最後の箱根駅伝5区に向けて、千葉・富津合宿で走り込んだ青学大・若林(カメラ・竹内 達朗)

 伝統の箱根駅伝は前回、節目となる第100回大会を終えたが、学生ランナーの情熱は全く変わることなく、継走は続く。スポーツ報知では第101回箱根駅伝(来年1月2、3日)に出場する全21チームを本紙で日替わり特集する。その中でも注目校を「もっと大学駅伝」で随時掲載。箱根路で圧倒的な強さを誇る青学大は2年連続8度目の優勝を狙う。連覇のキーマンは前回5区で区間新記録の区間2位と好走した若林宏樹(4年)だ。山のスペシャリストはトラックでも1万メートル27分台と学生トップクラスの実力を持つが、卒業を区切りに引退する。最後の箱根路、そして、競技人生ラストランとなる別府大分毎日マラソン(2月2日)でランナーとしてすべてを出し尽くし、次の“世界”に向かう。

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 競技人生のカウントダウンに入った4年生の若林は、一歩一歩を大切に走っている。

 「昨年の今頃より調子はいい。気象条件が同じなら、前回以上のタイムは出せると思います」

 11月29日から12月5日まで千葉・富津市で行われた強化合宿で精力的に練習に励んだ若林は冷静に話した。

 今季、学生3大駅伝開幕戦の出雲駅伝(10月14日)、第2戦の全日本大学駅伝(11月3日)はいずれも国学院大が優勝、駒大が2位、青学大が3位。最終戦の箱根駅伝でも3強が優勝争いの中心となる。前回の箱根では若林が従来の区間記録を32秒更新する1時間9分32秒の区間2位と力走し、優勝に貢献した。今回も若林が切り札となる。「前回以上のタイム」を有言実行すれば青学大の連覇が近づく。原晋監督(57)は「国学院大、駒大は強いが、5区で青学大にアドバンテージがある」と若林への信頼は厚い。

 若林の箱根5区に懸ける思いは強い。1年時から5区を走り、区間3位で優勝メンバーとなった。しかし、2年時は元日に体調不良に陥り、欠場。6区予定だった脇田幸太朗(当時4年)が5区を走り、区間9位。脇田に代わって6区を走った西川魁星(当時4年)が区間20位。青学大は山で苦戦して3位。連覇を逃した。だが、そのまま、終わらなかった。2~3日、静養して回復すると、箱根駅伝翌々日の5日に神奈川県内で20キロ上り坂タイムトライアルを敢行。山への執念で3年時のリベンジにつなげた。

 最後の5区に向けて現在、絶好調だ。11月23日のMARCH対抗戦1万メートルで27分59秒53で走破。日本人学生歴代34位の好記録だった。

 山のスペシャリストはトラックでも学生トップクラスのスピードを誇るが、卒業を機に競技の第一線から退き、国内最大手の生命保険会社「日本生命保険相互会社」に一般の新入社員として就職が内定している。日本学生陸上界において、1万メートル27分台の自己ベストを持ちながら大学卒業を区切りに引退する初の選手となる。「実業団で競技を続けることを考えた時期もありましたが、3年生の時に、陸上は大学まで、と決断しました。中学生の頃から箱根駅伝が一番の目標だったからです」と、きっぱり話した。

 ただ、箱根がラストランではなく、2月2日の別府大分毎日マラソンに出場を予定している。「地元の和歌山でお世話になっている方々からマラソンの和歌山県記録(1995年に江崎豊がマークした2時間18分36秒)を更新してほしい、と言われましたので。そのタイムは超えたい。2時間10分を切れればうれしい」と話す。

 好記録が出た場合、引退撤回もありえるだろうか? 陸上ファンが気になる問いに若林は間髪入れずに断言した。

 「それは絶対にありません。やめることを生半可な気持ちで決めていません」

 冷静沈着。泰然自若。頭脳明晰(めいせき)。後輩だけではなく同期からも「若さま」「若さん」と呼ばれ、一目、置かれる存在だ。中国電力のサラリーマン時代に「カリスマ営業マン」の異名を持っていた原監督は「箱根駅伝を目指す過程で培った計画力や体力をビジネスの世界で生かしてほしい」とエールを送る。

 「最後の箱根は青学大のために、別大マラソンは和歌山のために走ります。今まで支えられる側だったので、卒業後は生命保険会社の社員として人を支える仕事をしたい」と若林は言葉に力を込めて話す。

 箱根駅伝の理念は「箱根から世界へ」。その「世界」は陸上競技だけにとどまらない。若林宏樹のような人材が育ち、巣立っていくことも箱根駅伝の魅力だ。(竹内 達朗)

 ◆第100回箱根駅伝の5区VTR 青学大の若林は、2位の駒大と1分26秒差の先頭でタスキを受けると力強く山を駆け上がり、2分38秒まで差を広げて2年ぶりに往路優勝のゴールテープを切った。区間賞は2年連続で区間新記録を打ち立て、チームを往路過去最高の3位へと導いた城西大・山本唯翔(現スバル)となったが、若林も区間新記録で走破し、区間2位と大健闘した。

 ◆若林 宏樹(わかばやし・ひろき)2002年9月3日、和歌山・下津町(現海南市)生まれ。22歳。下津二中3年時に全国大会3000メートル10位。京都・洛南高では全国高校駅伝1年5区14位、3年1区3位。21年に青学大地球社会共生学部に入学。自己ベストは5000メートル13分41秒32、ハーフマラソン1時間1分25秒。尊敬する選手は神野大地(31)=M&Aベストパートナーズ選手兼監督=。好きなタレントは上白石萌歌。弟の良樹は青学大陸上部1年。168センチ、53キロ。

 ◆青学大 1918年創部。箱根駅伝は43年に初出場。2004年に原監督が就任。09年大会で33年ぶりに本戦出場を果たし、15年から4連覇。20、22、24年も制して優勝7回。出雲駅伝は優勝4回。全日本大学駅伝は優勝2回。16年度は学生駅伝3冠。練習拠点は東京・町田市と神奈川・相模原市。タスキの色はフレッシュグリーン。長距離部員は選手46人、学生スタッフ15人。主なOBは「3代目・山の神」神野大地(M&Aベストパートナーズ選手兼任監督)、ハーフマラソン日本記録の小椋裕介(ヤクルト)、福岡国際マラソンで日本歴代3位の2時間5分16秒で優勝した吉田祐也(GMOインターネットグループ)。

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