193センチGKから料理研究家へ 元Jリーガーが語る引退後のキャリア形成「食の重要性が広まれば」
スポーツ報知 / 2024年12月12日 20時0分
2024年のJリーグは終了し、各チームでは引退、契約満了などのニュースが飛び交う時期となった。選手たちにとっては大きな岐路、と言える時期。その中で2023年の引退後、すぐに料理研究家、実業家として実績を積んでいる小泉勇人氏(29)に、引退後のキャリア形成を聞いた。(取材・構成 =金川 誉)
選手にとって、誰にも訪れる引退。その瞬間を、小泉氏ははっきりと覚えている。
「(2023年)2月14日でした。ホテルでぱって、朝目覚めた瞬間にやめようって。それまでめっちゃ悩んでいたんですけど、決断は一瞬でした。その瞬間に関係各所に連絡をして。次の日にYoutubeで発表しました」
193センチの長身を誇るGKとして、プロ9年間のキャリアを歩んできた。18歳で下部組織から育ってきた名門・鹿島へ加入し、水戸、盛岡、群馬、甲府と渡り歩いた。出場はJ2で1試合、J3で12試合。しかし選手としてのキャリア以上に、彼が注目を集めたのが、コロナをきっかけに始めたインスタグラム(@zumi_meshi)での自炊記録発信だった。現在はフォロワー15万人にも達し、サッカーに興味のない人々からも注目を集める存在となっている。
「食事に関しては、工夫すれば安くても、健康だったりパフォーマンスをアップすることができると思っていて。だったら自炊して費用を抑えて、自分のパフォーマンスが良くなって、さらに別のトレーニングなどにお金を使えるようになれば1番いい、という思いでした」
選手として成長するために始めた自炊を、コロナをきっかけにSNSで発信するように。体作りなどに必要な栄養素を備えたアスリート飯が、サッカー少年などの親世代にも注目を集めて“バズった”。
「元々は料理が好きでやっていた、というより、いかにしてパフォーマンスを上げるか、ということで料理を始めました。それでも(2022年の)開幕前にコロナにかかってしまって…。1番大事な時期に。そこに向けて頑張ってきて、食事も整えて。もちろん試合に出られるかどうかはわからないですけど、コンディションを上げてきたところでコロナに。(数週間の離脱となり)これは2番手、3番手のGKにとっては、スタートから大きく出遅れて、シーズンを棒に振る可能性も高いぐらいのこと。終わった…って思ったんですけど、その時にこれはサッカー選手とは違うことで価値をなんとか発揮していかないと、と誰かに教えられているんじゃないか、と自分の中で変換して。コロナ期間に家から出られない時間で、家の中を(写真映えするように)ガラッとDIYして、家具とか家電とかも全部買い換えて、床も全部張り替えて。SNSをがっつりとやり始めました」
結果、この決断は小泉氏にとって大きな転機になった。引退後は、知名度を生かして食事の個人指導をオンラインやライブでスタート。現役時代に育ててきたSNSでの発信力もあり、収入も現役時代以上に安定。現在では食のインフルエンサーとして活動しつつ、様々な企業のアドバイザー、トップアスリートの食事指導、さらに自身の事業も展開し、多忙な日々を過ごしている。
「サッカー選手としての価値の出し方は、もちろん試合に出て結果を出すこと。ただ、価値提供の仕方は、他にもいくらでもあると思っています。僕は現役時代、食事でしっかりと準備を整えている僕が、ピッチに立って試合に出ていく過程を見せていくことによって、この食の重要性がもっと広まればいいと思っていました」
大金を稼ぐ選手であれば、シェフを雇って食事を任せることもできる。しかしトップアスリートに至るまで、プロを目指す育成年代やその家族、若手の選手たちにとっては、意識の変化が必要だと小泉氏は感じている。ただ必要な栄養素を取るというだけではなく、自分にあった食事とは何かを考え、そしてその習慣を身につけていくということだ。
「例えばGKとFWでは必要な能力が違うように、ポジションやプレースタイルによって食べるべきものも違う。それを考える、という習慣が広まればいいし、その意識が子供たちやその親御さんにも広まれば、日本サッカーの発展にもつながっていく。それは決してお金をかけなくてもできる。僕は現役のラストは、1か月の食費は3万円以内でした。そんな意識を少しでも広めることができれば。そんな活動を続けながら、将来的にはサッカー界にもっと貢献することができればいいなと思っています」
◇小泉 勇人(こいずみ・ゆうと)1995年9月14日、茨城県神栖市出身。29歳。鹿島の下部組織から、14年にトップチーム昇格。17年途中にJ2水戸へ期限付き移籍。その後はJ3盛岡、J2群馬、甲府でプレー。自炊のインスタグラム@zumi_meshiが人気で、自身のブランド@en.s.lifeも展開している。
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