石原さとみ「今の私の大きな夢です」０３年新人賞、今年の主演女優賞、将来の助演女優賞で“女優３冠”かなえる…報知映画賞表彰式

２１年ぶりの表彰式で満面の笑みを見せた石原さとみ（カメラ・小泉　洋樹）

　「第４９回報知映画賞」の表彰式が１６日、東京・渋谷区のセルリアンタワー東急ホテルで行われた。「ミッシング」（吉田恵輔監督）で主演女優賞の石原さとみ（３７）は、２００３年に「わたしのグランパ」（東陽一監督）で新人賞を受賞して以来、２１年ぶりの報知映画賞表彰式。“女優３冠”に向け「またこの場に戻ってきたい」と近い将来の再受賞を誓った。前回の表彰式にも出席した両親がこの日も駆けつけ、「最高の親孝行ができた」と涙した。

　うれしさで思わず石原の目から涙がこぼれた。７年前、自身の殻を破りたいと吉田監督に自ら直談判して出演した作品で、自身初の主演女優賞を勝ち取った。「お芝居の方法、役を生きることへの覚悟など、多くのことを学べた。役者の肩書には自信がなかったけど、一歩を踏み出せた。本当にありがとうございます」。２４日の誕生日を前に「早めのプレゼントとしては大きすぎる！　来年が怖くなる！」。そう話すと、シースルー素材の純白ドレスに包まれた身を揺らしながら、ようやくいつもの笑顔がはじけた。

　２１年前は、新人賞を受賞して登壇した。「当時は訳も分からず座っていた。でも、今回は緊張して、おなかも痛くなった。登壇される方が全員輝いて見えた。それくらい大きな賞」と、見える景色も違った。

　ただ、同じ光景もあった。「両親が２１年前と同じく表彰式に来てくれて。病気を乗り越えて駆けつけてくれた。最高の親孝行ができた。２１年の時を経て、また両親と参加できるなんて感慨深い。とにかくありがとうと言いたい」。出演舞台を見に来ることなどはあるが、公の場に両親が訪れることはほとんどない。今でも鮮明に覚えているという２１年前、両親は号泣してお祝いしてくれた。今回は自身が泣いて喜んだ。

　幼い一人娘の失踪事件をきっかけに、さまざまな情報に翻弄（ほんろう）されていく母親・沙織里を演じた。一昨年に第１子出産を発表後初の演技で、新境地を切り開いた。「ブランク明け初のお芝居としては、勇気が本当にいる作品。『どうしよう…、どうしよう…』と思いながら家を出た。そんな経験は過去にはなかった」。だからこそ、現在も「根を張って生き続けている」と、女優として大きな転機となった。

　転機の先に、新たな目標も生まれた。報知映画賞で新人賞、助演女優賞、主演女優賞の“３冠”を達成しているのは、原田美枝子（６５）だけ。史上２人目に向けてリーチがかかった。「すごいこと聞きました！　そこは憧れですね。またこの場に戻ってきたい。助演女優賞となれば難しいだろうけど、コンプリートがかなったら奇跡的なこと。今の私の大きな夢です」

　石原にとって、報知映画賞は「自分にとって大きな区切りでいただける賞。また受賞するには再び大きな成長をしないといけない。これから定着していく自分のイメージを壊すような役柄に出会わないといけない。でも、自分の新しい引き出しを開けられるのは楽しみ」。３度目の受賞に向かって再び女優業にまい進する。

（増田　寛）

　〇…吉田監督と、夫役だった青木崇高（４４）が花束ゲストとしてサプライズ登壇した。吉田監督は「自分のことのようにうれしい。自分の中では、石原さんは１００点のお芝居だったけど、それが見る方にも伝わってよかった」と祝福。青木も「撮影中はこんな笑顔は見られなかった。演技ではなく、そこには沙織里がいた」と石原が役になりきっていたことを振り返り「大変だったと思うけど、おめでとう」と拍手を送った。

　◆石原　さとみ（いしはら・さとみ）１９８６年１２月２４日、東京都生まれ。３７歳。２００２年、ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを獲得し芸能界入り。０３年の映画「わたしのグランパ」で女優デビュー。同年のＮＨＫ連続テレビ小説「てるてる家族」のヒロインを演じる。主な出演作にドラマ「失恋ショコラティエ」「アンナチュラル」など。２０年に結婚、２２年に第１子出産を公表。

　◆選考委員　荒木久文（映画評論家）、木村直子（読売新聞文化部映画担当）、見城徹（株式会社幻冬舎代表取締役社長）、藤田晋（株式会社サイバーエージェント代表取締役）、松本志のぶ（フリーアナウンサー）、ＹＯＵ（タレント）、ＬｉＬｉＣｏ（映画コメンテーター）、渡辺祥子（映画評論家）の各氏（五十音順）と報知新聞映画担当。