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「僕らより面白くできるんだったら」 “ミスターM―1”笑い飯が若手漫才師たちに求めるもの 

スポーツ報知 / 2024年12月21日 10時0分

「笑い飯」の西田幸治(左)と哲夫(カメラ・小泉 洋樹)

 お笑いコンビ「笑い飯」の哲夫(49)、西田幸治(50)が、お笑いライブの東京公演「笑い飯の漫才天国in東京~イキのいい若手大集合スペシャル~」(来年1月20日、東京・品川区きゅりあん大ホール)を行う。吉本興業所属芸人以外も含めて、有望な若手を集結させた。漫才師日本一を決めるテレビ朝日系「M―1グランプリ」(22日・後6時半)が迫る中、来年で結成25周年を迎える2人に今のお笑いの現状を聞いた。(増田 寛)

 マイクの前ではネタで爆笑をかっさらうが、舞台から降りると意外にも寡黙な2人がいた。さまざまな芸人の取材を行ってきたが、ほとんどの芸人から「ウケを狙おう」という姿勢が見え隠れし、コンビであれば掛け合いが起こることが多い。ただ、来年結成25周年を迎える2人は、無駄をそぎ落とした言葉で、職人のごとく的確に答えていく。

 西田「もう気がつけば結成25年。あっという間でしたね。挫折? うーん、特にないなぁ」

 哲夫「M―1でなかなか優勝できなかったことを挫折と捉える方もいますが、『M―1の悔しさはM―1でしか晴らせない!』みたいなことは特になく、モチベーションでもなかったですね。毎年、決勝まで進めるチャンスがあっただけです」

 初回の01年大会から出場し、02年から9年連続で決勝戦に進出。10年に優勝を勝ち取り、お笑いファンから“ミスターM―1”とも呼ばれる2人。哲夫は今回の審査員にも名を連ねている。その原動力は「ダブルボケ漫才」。お互いがボケとツッコミを交互に代わって漫才を展開する唯一無二のシステムだ。

 哲夫「昔の漫才でも、両方ボケ、両方ツッコミというのはありました。とはいえ、両方ボケる設定っていうのが少ないので、この設定にはポリシーを持ってます」

 西田「コンビを組んだ当初からダブルボケでしたね。でも最初はツッコミがなかったかな。“ボケボケ”。交代でツッコミ入れるシステムは、劇場やオーディションの実戦で完成していきました」

 今年のM―1は、過去最多となる1万330組がエントリー。年々、大会の注目度も上がり、レベルも上がっている。笑い飯は、新たな漫才のスタイルを切り開いたが、先駆者の2人も、漫才の進化に目を見張る。

 西田「いろんな種類の漫才が出た後なので、大変だろうなと思います。いろいろと比べられてしまうから、その重圧というのはありますよね。それでも新しい笑いが生まれるわけですから、常に変化していますよね」

 哲夫「みんな、すごい切り口で考えて笑わせにきますよね。漫才が多様化していると実感してます」

 2人は今の過熱し続けるお笑いブームをどう感じているのか―。

 西田「YouTubeとかもあって、お笑いの研究はすごくしやすいと思います。僕らの頃は、実際に劇場にお金を払って見に行かないといけなかったですから。今は、ネットで検索すればネタ動画が出てくるので、自分がもし今若手だったら、YouTubeにかじりついてるでしょうね」

 お笑いといえば、テレビの影響力は計り知れない。最近は、トーク番組だけでなく、ネタ番組も増えてきた。芸人のお笑いに対する意識だけでなく、テレビのお笑い番組に対する姿勢も変わったと実感している。

 哲夫「一時に比べてネタの番組が増えました。良い傾向です。以前は、テレビの求めるネタと芸人のやりたいネタがマッチしない時代がありましたが、お笑いブームのおかげで、テレビも芸人がやりたいネタを求めてくれるようになりました」

 来年、笑い飯が行うお笑いライブには、注目の若手漫才師が多数出演する。

 西田「本当にM―1チャンピオンが出てもおかしくはない。おすすめの若手? いますが、カセになると申し訳ないので言えません!」

 あえて若手とのライブを行うのには、「大御所ではなく“中御所”でいたい」という思いがあるという。

 西田「面白い人とやりたい。大御所も若手も関係なく、とにかく面白い人とお笑いをやりたいです。若手と交じってやる姿勢でいえば『ザ・ぼんち』さんはすごいです。あの年齢で賞レース『THE SECOND』に出たり。尊敬しますね」

 哲夫「『ザ・ぼんち』さんもずっと劇場に立たれている。自分たちも劇場の出番をずっといただくのは一つの目標。僕らは皆さんの背中を追いかけてます。芸は継承なので、絶やさないように追いかけ続けないと」

 今の笑い飯のスタイルも継承してほしいか―。そう聞き終える前に2人とも「やりにくいやろなぁ」と後輩たちをおもんぱかった。

 西田「全然、まねしてもらって良いです。ただ、うちらがいるので、『僕らより面白くできるんだったらどうぞ!』みたいな。でも、超える若手が出てきてもおかしくはないですよね」

 哲夫「1回交代でボケただけで、『なんか笑い飯パクってる』って言われてしまうので気の毒ですね。我々のスタイルを継承してくれるコンビが出てきてほしいですが…。でも、若い人らで、最近はどっちがボケかわからない漫才も増えてきたので、時代は着実に巡っていると感じます」

 取材後、間髪を入れずにまたマイクの前に戻って行った2人。今日も2人は板の上で職人のごとく継承者を待ち続ける。

 ◆笑い飯 西田幸治(にしだ・こうじ)1974年5月28日、奈良県生まれ。50歳。哲夫(てつお)1974年12月25日、奈良県生まれ。49歳。2000年7月にコンビを結成。“Wボケ”という独特のスタイルで高い評価を受ける。04年、NHK上方漫才コンテスト最優秀賞。05年、上方お笑い大賞最優秀新人賞。14年、24年に上方漫才大賞で大賞。

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