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「新日本プロレス」海野翔太、1・4&1・5東京ドームへ「今の思いと今後を語る」《中編》「戦う原動力」と「入門前にぶつかった父との葛藤」

スポーツ報知 / 2024年12月27日 12時0分

海野翔太

 新日本プロレスの海野翔太がこのほど、スポーツ報知の取材に応じ、来年1・4東京ドームで挑むIWGP世界ヘビー級王者・ザック・セイバーJr.への思いを激白した。

 27歳の海野は、1997年4月17日、レッドシューズ海野レフェリーの次男として東京都世田谷区に生まれる。17年4月13日に新日本プロレスでデビュー。19年11月から英国へ武者修行。3年間の海外生活を経て22年11月5日にエディオンアリーナ大阪大会で凱旋帰国する。今年5月11日には米国オンタリオ大会でジョン・モクスリーが持つIWGP世界ヘビー級王座に初挑戦するなどトップ戦線に駆け上がってきた。

 今年の「G1クライマックス」でザックに勝利するなどの実績を引っ提げIWGP世界ヘビー級王座への挑戦を表明。1・4東京ドームでの一騎打ちをもぎ取った。ここで勝てば翌日の1・5ドームではAEWのクラウディオ・カスタニョーリを相手に初防衛戦を行う。様々な経験と紆余(うよ)曲折を経てたどり着いた初のドームでのメイン。スポーツ報知では、プロレス界の新世代を担う海野の言葉を3回に渡り連載する。2回目は「戦う原動力」と「入門前にぶつかった父との葛藤」。

 前編で「闘魂」「アントニオ猪木」について語った海野に聞きたいことがあった。それは昨年秋に公開された映画「アントニオ猪木をさがして」の中で海野が語った言葉だった。映画では2002年2月1日の札幌大会でリングに登場した猪木さんが蝶野正洋、永田裕志、棚橋弘至らに「てめぇは何に怒っているんだ」と問いかけた「猪木問答」のシーンが流れた。この「怒り」をテーマに棚橋と札幌の小料理店で同席した海野が「僕は怒りはないです」と明かした。この発言の真意を海野は昨年秋の映画公開前のイベントで「怒りがないわけじゃないです。戦っていれば喜怒哀楽もありますし、もちろん怒りもあるんですけど、それが僕の中では原動力にならない」と説き「戦いに怒りは必要かもしれないですけど、(ファンの)みなさまに対し怒りは必要はない」と明かしている。改めて映画で発した「怒りはないです」の真意を聞いた。

 「僕は怒りをエネルギーに変えるのではなく、何よりも応援してくれるお客さんを喜ばせたいという思いがエネルギーなんです。それは、新日本プロレスの選手全員、スタッフ全員、リングスタッフ全員、プロレスっていうジャンルに携わってくれる方々。取材班もそうですし、カメラマンもそうですし、そういう人たちがプロレスが好きであればあるほど、そういうエネルギーがあればあるほど、自分自身がプロレスをもっと盛り上げて、周りで支えてくれるみなさんがおいしい御飯が食べられるようにプロレスを世界に届けたい、プロレスをもっと国民的にしたい、大きくしたいという思いが僕自身のエネルギーに変わるということなんです」

 さらにこう続けた。

 「僕自身の中に怒りがあるかないかという話でなくて僕の中での原動力は怒りではないということなんです。あくまでもプロレスを支えてくれる方々がおいしい御飯を食べられるように日々の生活で幸せに過ごせるように、そのためにプロレスはもっと経済を回していかなきゃいけないし、プロレスをもっと盛り上げていかないといけない。だから怒りが原動力でなく、そういう気持ちを持ってプロレスの試合に臨んでいますし、そこで周りを幸せにできたら選手自身も幸せになれると思いますし経済も回るし、その思いがプロレスに対しての原動力となって試合に挑みますという意味での『怒りはないです』という発言です」

 猪木は、プロレスへの向き合う姿勢として「人生の中での怒りをリングにたたきつけろ」。「オレにとってプロレスは生き様だ」と繰り返し発していた。この猪木の思いをどう捉えているのだろうか?

 「あくまで試合に対する挑み方と試合へ挑むまでの挑み方は違うと思っています。常に怒りをもって試合前から挑む人もいれば、周りから支えてくれる人たちに感謝を持って試合前に挑み試合では相手に自分の生き様をぶつけて、それが怒りに変わることもあるでしょうし…それは、試合の中で本物の感情が生まれない限りはわからないと思う。なぜなら、本当に怒る時は自分では予測できません。本当に怒る時に今から怒りますっていうのは偽りだと思っています。ですから、当たり前なんです、試合に対して生き様をぶつける、怒りをぶつけるっていうのは。それは、大前提の話であって試合の中でいかに本物の怒りがでるか、いかに自分の生き様をぶつけられるかっていうのは試合の中の生の感情が出ないと味わえません。だから、試合に挑むまでのモチベーションとして怒りを考えても個人の部分でしかない、それで新日本プロレスの社員、プロレス界に携わってる取材班や、プロレスというジャンルが好きでいてくれる人たちが、幸せになるかって言うとそうじゃないと思います。そういう方たちの思いをすべて背負った上で試合では生の感情でぶつかっていくのが僕の原動力です。繰り返しになりますが僕自身の中で怒りがないわけではなくてそういう気持ちを背負ってそういう人たちにおいしい御飯を食べて欲しいと思って、それこそがプロレスを盛り上げる着火剤になって起爆剤になってくれたらいいなと思って、試合の中で怒りが生まれている状態」

 本物の感情とは?

 「本物の感情こそが生き様です。それこそ怒りだと思います。その感情が出る瞬間に巡り合わない限りは、それこそ嘘偽りでやっているだけだと思っています。それを闘魂だ、怒りだっていうのは、逆に猪木さんをバカにしているのかと思いますし、生き様っていう言葉を簡単に使うなって気持ちにもなります。あくまで僕の原動力はプロレスに携わっているみなさま、ファンのみんなにおいしい御飯を食べて等しく幸せになって欲しくて会社を大きくしたいっていう気持ちが強いんです」

 デビューから8年。感情をコントロールできないほど「キレた」試合を聞くと「去年の11月(20日、有明アリーナ)の(ウィル)オスプレイ戦と、成田(蓮)との後楽園(今年1月23日)での試合」と明かした。そして、こう打ち明けた。

 「僕のベースは、感情だと思っています。そして、その感情は闘魂だと思っています。自分から怒りだなんだって言わなくても自ずと闘魂、怒りは出てきているんです。怒りは出そうと思っても出るもんじゃない。試合で何かされても100パーセントの怒りが出ているかどうかわからないしそのときのシチュエーションによって変わります。そこが難しいところでもあります」

 プロレスラーになる前に怒ったことを聞くと「ありますよ」と即答した。その出来事を打ち明けた。

 「父親にプロレスラーになることを反対されたことです。5年ぐらい大げんかしましたから」

 プロレスラーを志してから新日本プロレス入門までにわたる父であるレッドシューズ海野レフェリーとの葛藤を告白した。

 「中学2年の時にプロレスラーになるって決めたんです。そのころ家族で食事している時に父親から『お前、将来やりたいことあるのか?』って聞かれ『プロレスラーになりたい』って言ったら右ストレートが飛んできて『ふざけんな!甘い世界じゃねぇよ。なりたいだけでなれるもんじゃねぇんだよ。公務員になれ!公務員になってオレを楽にしろ』って…僕は、あまり感情的になってモノを言うタイプじゃないので、心の奥底にふざけんな、見返してやるっていう反骨心を秘めていました」

 中2でレスラーになりたいと思ったきっかけは何だったのか?

 「プロレスは父がレフェリーだったので近い存在でしたけど子供の頃は興味がなくて、会場に行くといつも仲良くしてくれるお兄ちゃんがなんでこんな痛い思いをしているの?見たくないんだけど…っていう感じでした。それが2008年(8月26日)の父親の20周年興行(後楽園ホール)があった時に初めて特別リングサイドでプロレスをちゃんと見たんですが、その時に衝撃を覚えました。特に男たちがぶつかる音が衝撃的で『プロレスってすごい!』って衝撃を受けて、そこからテレビでワールドプロレスリングを録画してをちゃんと見るようになりました」

 そして今でも忘れない東京ドームがある。

 「2009年の1・4。棚橋さんが武藤さんに勝った大会を見てプロレスに完全にはまりました。その前のセミファイナルに三沢(光晴)さんが登場したんですが(杉浦貴と組んで中邑真輔、後藤洋央紀と対戦)その三沢さんの入場がすごくて…テーマソングがかかると会場のボルテージがギア3ぐらい一気に変わるんです。東京ドームが壊れるんじゃないのっていうぐらいの地響きに子供ながらに鳥肌が立ちました。それが小学校5年生でした。中学に入ったら小中学生立ち見券で兄と後楽園に見に行くようになりました。父に見に行くことを言ったら怒られるのでばれないように見に行ってました」

 中2で父に「プロレスラーになる」思いを伝えるが猛反対。当時は野球に熱中していたが、高校卒業までプロレスラーになる鍛錬を欠かさなかった。

 「反対されましたが、絶対にプロレスラーになるという思いを行動で貫いていました。高校は野球部でしたけど、終わったら友達と遊ばず毎日、プロレスラーになるための練習をしていた」

 一貫して反対だった父が根負けする時が来る。

 「一時期、新日本プロレスがオフの時に草野球大会をやっていたんです。その打ち上げで早稲田にある焼き肉屋さんに行っていたんですが、その食事の席で父が僕を目の前にして『こいつ、いい加減にしてくれねえか。レスラーになりたいって言ってる。どう思う?自分の子供だったらやめさせるだろう』とみなさんに聞いたんです。その時、棚橋さんもいらっしゃって棚橋さんは『オレも両親に反対されたけどなったよ』って言ってくださいました。そして、その時にこの焼き肉屋さんのマスターが父を一喝したんです。『息子が本気でこんだけなりたいって言っているのに否定する親がいるかよ!』と。この言葉に父は『オレは、知らねぇから、勝手にやれ!」って根負けしたんです。なので僕は『勝手にしろ!』って言われたので勝手に新日本プロレスへ履歴書を送って入門テスト受けて合格しました」

 この入門に至る父との葛藤がプロレラー「海野翔太」のベースになっている。

 「あの時の反骨心があったからこそ、ここまで来られたと思います。父に反対されず『なっていいよ。頑張ってね』と言われたらその程度のレスラーにしかなっていないと思います。僕は何事に対してもあきらめたくない。今のスタイルもあきらめたくないっていうのが根源です。それが猪木さんがおっしゃった生き様だろうと思います。見えない部分で苦労してきたことがあったから、生の感情がある。その感情が積み重なれば積み重なるほど闘魂は大きくなる。そして、それが自分の生き様を表してくれると思います」

(敬称略。福留 崇広)

 ◆海野の東京ドーム2連戦

 【1・4】IWGP世界ヘビー級選手権 60分1本勝負

王者・ザック・セイバーJr. vs 挑戦者・海野翔太

 【1・5】スペシャルシングルマッチ(1・4でザックに勝てばIWGP世界ヘビー級王座初防衛戦)

海野翔太 vs クラウディオ・カスタニョーリ

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