藤波辰爾、2024年に実現した夢の「お城プロレス」に手応え「プロレスの新しい価値観を世の中に出せた」…独占インタビュー
スポーツ報知 / 2024年12月31日 8時0分
プロレス界の“レジェンド”藤波辰爾(71)が大みそかの31日、スポーツ報知の取材に応じ、充実の2024年を振り返った。
今年は、長年の夢だった「お城プロレス」を11月16日に北九州市の小倉城で実現。さらに同月22日には後楽園ホールで新日本プロレスのジュニアヘビー級でトップの高橋ヒロムとの一騎打ちに挑み、敗れたが芸術的な名勝負で古希を超えてもメインイベンターであり続けるドラゴン魂を見せつけた。インタビューでは今年、実現した「お城プロレス」のさらなる発展を掲げた。
藤波は「今年は自分なりに動きのあった年」と充実の表情で振り返った。一番は、夢だった「お城プロレス」の実現だ。大分・国東で育った中学時代。3年時の修学旅行で見た大阪城に心を奪われ、以来、城の魅力にはまった。16歳で日本プロレスへ入門してからは巡業先で全国各地の城郭へ足を運び「城好き」を公言。お城を探訪するレギュラー番組を持つなど、プロレス界の内外で無類の「城好き」と知られている。
そんなドラゴンにとって城内でのプロレス大会の開催は長年、心に秘めてきた夢だった。この思いが北九州市に通じ様々な関係者の尽力で11月16日に小倉城で実現したのだ。天守閣前の広場にリングを設置。入場では、たいまつを焚き天守閣をバックにリングインした。
「小倉城は、興行という概念はまったくなくて自分自身がワクワクすることばかりだった。『こんな感じでリングを置きたい』とか、自分が絵を描いたままの状態で試合ができた」
大会には永遠のライバル、長州力、“闘魂三銃士”蝶野正洋もトークイベントでゲスト登場。試合では、藤原喜明、越中詩郎、船木誠勝、永田裕志らが参戦する充実のラインアップでファンを満足させた。
「いろんなご縁と協力があってこその大会。小倉の方に感謝です。その中で改めて教えられたことは、何よりもまず動くこと。お城でプロレスをやりたいというのはずっと夢だったんだけど、今までは実現に向けて思い悩んだりしてそれがかえって難しく考えてしまった部分がある。それが今回、様々な方々の協力があって動いたことで何かが開けてきた。思い悩んだり、細かいことはあとから詰めていけばいいんであって、何事もまずは動くことを学んだ」
「お城プロレス」はチケットは完売。さらに大会をNHKがニュース番組で報道するなど波及効果があった。
「プロレスの違った新しい価値観を世の中に出せたと思う。し方がある。来年は、さらに地方を歩いてみたい」
小倉城に続く「お城プロレス」開催に意欲を表す。実際、来年2月には、藤波が大好きな「彦根城」がある滋賀・彦根市で観光大使に就任予定。2月24日には委嘱式とトークイベントが同市で開催される。「国宝」でもある彦根城でのプロレスも視野に入る。
「今後、そういう話になってくれればうれしいし、できるんじゃないかなと思う。今は、そういう意味でリングに上がるからには、
自分自身が楽しみたい気持ちが強い。そんな自分の姿を見てファンが楽しんでもらいたい。12月28日に71歳の誕生日を迎えたんだけどこれが、これからのテーマです」
夢の実現に心をときめかせた2024年。一方で大きな勝負に打って出た年でもあった。自身が主宰する「ドラディション」の11・22後楽園。新日本プロレスというよりも日本のジュニア戦士でトップである高橋ヒロムとシングルマッチに挑んだのだ。レフェリーを獣神サンダー・ライガーが裁き、「昭和」「平成」「令和」のジュニアの歴史を辿り、飛び越えた一戦は、両者が時空を超えたハーモニーを奏でる名勝負となった。試合は15分44秒、ヒロムのTIME BOMBで敗れたが70歳の健在を満天下に示した。
「ヒロムは、思った以上にいい選手だった。対戦する前は、彼だけでなく今のジュニア全体に『軽い』っていう印象あった。だけど、実際に肌を合わせて、それが自分の勘違いだったことがわかった。彼には、僕らが(アントニオ)猪木さんから教えられて道場で汗を流して築いてきた芯があった。ロックアップをして組んだ時の足腰の強さに『あぁ、しっかり鍛錬しているんだな』と感じた。その時に彼自身が今、自分なりに精いっぱいに考えてどういうイメージを抱いてプロレスをやっているのかが見えた。その部分で猪木さんが作った新日本プロレスの魂を感じた」
だからこそ、試合後のリング上でヒロムを「思ったより強かったな」とたたえ「新日ジュニアは強えーな!まだまだ新日ジュニア、捨てたもんじゃないな」と口にした。それは、決して上から目線ではなく藤波が今のジュニア戦士に感じた「発見」であり、同じ野毛道場で練習を重ねた先輩後輩を超えた「同志」としての「敬意」だった。
「僕は猪木さんから『プロレスは闘いだ』と徹底的に教えられてきた。それが新日本プロレスの誇りだと思っている。その誇りをヒロムも持っていることを感じたから、あの言葉になった」
そして、トップであるヒロムとの一騎打ちで藤波自身も手応えをつかんだ。
「試合には負けたんだけど、試合後に正直、『もうちょっとオレ行けるな』と思った。今回は大会前にいろんな活動が入ってしまい、コンディションを調整する時間が少なかった。計画通りに調整していれば、もっとやれたと思った」
70歳でのシングル。挑んだ背景はプロレスラーとしての誇りだった。
「タッグマッチに逃げることもできるかもしれない。だけど、タッグだと自分のコンディションの都合でリングに出られる。シングルは逃げ場がない。現役として闘う以上、ただリングに顔を出せばいいという現役ではいたくない。常に逃げ場のないところに追い込まないといけない。これからも無理な環境で試合をしたい」(福留 崇広)
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