巨人・阿部監督、田中将大復活へ魔改造コーチ「付きっきり」プラン 25年「不退転の覚悟で日本一再挑戦」
スポーツ報知 / 2025年1月1日 11時0分
巨人・阿部慎之助新監督(45)がスポーツ報知の新春ロングインタビューに応じ、就任2年目となる2025年の構想を明かした。昨年は4年ぶりリーグ優勝を果たしたが日本シリーズ進出を逃し、13年ぶり日本一へ向けて大型補強。打線の構想、守備位置、前楽天・田中将大投手(36)の再生プランなどを語り尽くした。スローガンは昨年と同じ「新風」を使い、「新風~2ND CHALLENGE~」。挑戦者の精神で頂点を目指す。(取材・構成=片岡優帆、田中哲)
―監督就任2年目。スローガンは昨年と同じ「新風」とし「~2ND CHALLENGE~」を付けた。
「昨年日本一になれなかった悔しさを糧にして、2025年は不退転の覚悟で再チャレンジする。日本一になるためには、殻を破って新たに巨人を背負う選手が出てくる必要がある」
―新戦力の台頭を願いつつ大補強で新たな風を吹かせた。投手では前中日のマルティネス、前楽天の田中将。4年ぶりのFA獲得でソフトバンクから捕手の甲斐、新外国人では米3Aでトリプルスリーの経験があるキャベッジも加入した。
「本当にいい補強をしてもらった。昨年と同じメンバーじゃ優勝できないと思うし、勝つために弱点を補う必要がある。そうじゃなきゃプロ野球じゃない。若い選手はこのままじゃダメだと思ってくれないと」
―昨年は投手陣の奮闘が光る一方で攻撃力が課題として残った。新助っ人が打線強化のポイントになる。
「キャベッジに5番を打ってほしい。和真(岡本)の後を打てそうな選手ということで獲得したから。3番をヘルナンデスにして外国人2人で4番の和真を挟む形が理想。昨年は点が取れないというのが明確に出たから。3、4、5番を固定できたら一番いい」
―現時点で思い描く「V2オーダー」は。
「1番は門脇とかに打ってもらいたい。だけど今のままじゃ弱い。もっと力強さが欲しい。丸が1番でもいいけど、丸は7番くらいにいた方が相手は嫌だろうなと。2番は尚輝(吉川)に打たせたい」
―キャベッジは外野と一塁を守れる。
「キャベッジは一塁で使いたい。センターのヘルナンデスと外国人2人が外野はちょっとね」
―そうなると岡本は。
「サードかレフトかな。勇人(坂本)とかがサードで元気だったらレフトが和真になるだろうし。和真には状況次第で動いてもらおうと。本人は外野の方がいいみたいだし」
―三塁に坂本や成長株の中山が入れば岡本は左翼に入る。その場合、外野の残る先発枠は右翼の1枠となり超サバイバルとなる。
「外野がさらに、し烈になるよね。現状でレギュラーと言えるのは和真と尚輝ぐらい。丸も競争。浅野とか若手と争ってもらう」
―投手では日米通算197勝の田中将が加入。戸郷、山崎、グリフィン、井上の先発4本柱、激しい競争が予想される若手とともに、オリオールズに移籍した菅野の穴埋めが期待される。
「まだまだできると思っているし、先発ローテーションの6番目くらいに入って一年間、ローテーションで回ってほしいよね」
―昨年の田中将は23年10月の右肘手術の影響で0勝に終わったが、復活を期待している。
「久保さん(久保康生巡回投手コーチ)と話す機会あって。マー君どうですかと聞いたら『菅野と一緒なんだよね』と言っていて」
―昨年は久保コーチに師事した菅野がフォームを見直して、23年の4勝から15勝とV字回復してMVPに。的確な指導力は「魔改造」と称される。
「久保さんに『マー君を預けていいですか』と言って。久保さんに付きっきりでやってもらおうかなと思っている。あれだけ投手をいじれる人っていないから。すごい貴重だと思う。そういう話を本人(田中将)にも直接した」
―投手では前中日の守護神マルティネスに9回、昨年まで抑えを務めた大勢に8回を託す方針だ。
「8回がうちの弱点だったから。そこをピシャッといければ相手が意気消沈するだろうし。それだけ大事なイニング。だからこそ8回を大勢に任せたい」
―昨年は救援陣を無理のない運用で柔軟に起用し、リーグトップの救援防御率2・27と強固なブルペンを築いた。
「今年も考え方は変わらない。3連投は9月から」
―昨年は戸郷に初の開幕投手を託した。前年の11月に早期決定して公表したが、今季は山崎も自身初の大役に意欲を見せている。
「今年はギリギリまで言うのをやめておこうかなと。開幕投手をやりたいなら頑張ってアピールして、ということで。もしかしたら、初戦から左投手を当てたいと思ったら井上もあるかもしれないし」
―昨年は自己最多タイの12勝を挙げ、3年連続2ケタ勝利でエースとなった戸郷にはさらに上を求める。
「(昨年15勝の)菅野くらい勝ってほしい。勝ち星というよりも貯金できるようになってほしい。10勝10敗じゃ意味ないからね。貯金10つくるとか。そういう目標を持ってやってほしい」
―15勝3敗、防御率1・67の菅野が抜ける投手陣。若手にもチャンスがある。
「菅野の穴をどう埋めるかが大きな課題。赤星、西舘、伊藤、平内、横川、堀田、又木、田中瑛、森田、京本ら先発にチャレンジする投手はみんなで競争してほしい」
―バッテリー部門では昨年は岸田、小林、大城卓の3捕手併用で優勝。さらなる強化へ「絶対的な司令塔が欲しい」と獲得を熱望していた捕手・甲斐がソフトバンクからFA移籍した。
「理想は固定。できたら、捕手は3人じゃなくて2人制にするかもしれない。小林、大城卓、岸田は競争だし、山瀬もいる。育成1位の坂本達(富士大)も見てみたい。甲斐が入って捕手の層が厚くなった。刺激になるだろうし捕手陣にとっていいことだと思う」
―投手陣への「困ったらど真ん中」指令は継続。積極的な走塁も引き続き推奨する。
「今年も一緒。ど真ん中って言ってもど真ん中に投げられないんだから。野手も一緒。全員に暴走族指令を出す」
―リーグ優勝の原動力になった機動力の部分では、俊足のドラフト2位・浦田(九産大)が加入。門脇らとの遊撃争いが激化する。
「ショートは決めていない。そこも競争になる。門脇、泉口、中山らがいるけど、浦田が良ければ使っちゃうかもしれないし」
―ドラフト3位の荒巻(上武大)はパンチ力のある左の強打者。
「荒巻は一塁、三塁を守れる。1軍の競争に入ってくる可能性は十分ある」
―大型内野手のドラフト1位・石塚(花咲徳栄)は坂本2世の呼び声が高い高卒ルーキーだ。
「体づくりも大事だけど、そのまま体だけつくって終わっていく選手をたくさん見てきた。だから、まずは体づくりなんて思わないでやってほしい。いいものは何歳だろうと使えばいい。良ければ1年目から使うよ」
―一人でも多くの若手が大きく飛躍すれば、チーム力はさらに上がる。
「そこに期待はしているけどね。浅野、秋広、佐々木とか可能性のある選手はたくさんいる。打てば使うわけだから。彼らには『遊び心を持て』という話をしたけど、打席の中で、ここで打てなかったらどうしようとか、そんなこと考えて野球をやる必要はない。打てばいいんでしょ、くらいの気持ちでやってほしい」
―野手では36歳の坂本、40歳の長野が精神的支柱となるが、ベテランに頼り過ぎる形は理想ではない。
「近未来、何年か先を考えても、彼らを押しのけて出てくる選手が出てこないと。いつまでも2人に頼っていたら勝てなくなる」
―2月の春季キャンプは多くの若手にチャンスを与えて見極める構想だ。
「キャンプはS班を作って(那覇移動までの前半の)宮崎では、ベテランは調整を一任することも考えている。S班は丸、長野、勇人(坂本)、マー君の4人くらいかな。マー君も1軍スタートの予定だけどアップだけ全体と一緒に入って、そこから別メニューで久保さんとやってもらう、みたいな。若い選手は競争。いろんなこと考えながら見ようと思っている」
―常勝軍団を作るためにはファームからの底上げも不可欠。ファームの新球場も3月に開業する。コーチ陣も一部シャッフルした。
「若い選手にはメチャクチャ練習してもらう。うまくなるには量をやるしかない。そのために川相さんと矢野謙次には(1軍から)2軍にいってもらった。ビシバシ厳しく鍛えてくださいって伝えてある。よみうりランドは素晴らしい施設がそろっているけど、そこに慣れてほしくない。嫌いな場所だと思えないと。居心地が良い場所になってしまうと『2軍でもいっか』となってしまうだろうし。そうなってほしくない」
―現役時代にリーグ3連覇の経験もある。連覇のために必要なこととは。
「最後に勝てばいいんでしょ、と思ってできる選手が何人いるか。勝負は9月だから。勝てない時期があったとしても動じない、心の強靱(きょうじん)な選手になってほしい。主将制を廃止して全員がキャプテンのつもりで、という話をしたけど、一人一人がそういう気持ちでやれば本当に強いチームになる」
―作戦、采配面では就任1年目の昨年、試行錯誤した送りバントの使い方にも変化がありそうだ。
「今年はバントで送って形を作ったりするのは終盤でいいのかなと。ゲッツーのリスクがあっても思い切って打たせることもしていかないと、点が入らないのかなとも思っている」
―昨年と同じ「新風」をスローガンに掲げて臨む就任2年目。13年ぶり日本一を目指す1年が始まる。
「選手たちは『やってやろうじゃねえか』という前向きなチャレンジ精神で思い切ってやってほしい。選手、監督、コーチ、スタッフ一丸となって、昨日より今日、今日より明日。日々新たにをモットーに成長して巨人の伝統に新しい風を吹き込んでいきたい」
◆取材後記
昨年の新春インタビューと同様、ダイヤモンドを描いたホワイトボードと全選手のネームプレートを用意し、守備布陣や打順の構想を聞いた。
阿部監督は私たちが一塁に置いていた「岡本」の札を自ら外し「こっちにするかもな」と三塁に配置。さらに「サードで勇人とかが良かったらこっちかも」と、岡本をレフトに置く青写真も描いた。
逆襲に燃える坂本や中山らが三塁ならレフト岡本。坂本や中山以上に打つ選手がレフトに入ればサード岡本もある。全体像について阿部監督は「まだ全然見えない」と柔軟に見極める方針で、競争次第でいい意味でさまざまな可能性がある。
1年目と同じ新風をスローガンに採用。「もう一回、日本一に向けてチャレンジだから。日本一になったら変えるよ」と迷わず決めたという。リーグ優勝しながら最大目標の日本一を達成できなかった昨年の悔しさを胸に、原点の初心を忘れず挑戦する。力強い言葉に覚悟が詰まっていた。
(巨人担当キャップ・片岡優帆)
◆記録メモ
1950年の2リーグ制後、巨人で1軍に出場した高卒新人は、投手が19年の戸郷まで20人、野手は23年の浅野まで25人、計45人いる。59年王貞治が最多94試合に出場。93年松井秀喜はセ・リーグの高卒新人で最多の11本塁打を記録した。坂本は07年、岡本も15年の1年目からデビュー。本塁打は松井の後に岡本、浅野が各1本で計7人がマークしている。
◆巨人の新ファーム球場 「TOKYO GIANTS TOWN」(東京・稲城市)の中核施設となる新球場「ジャイアンツタウンスタジアム」(略称・Gタウン)が、3月1日に開業する。55~98年の多摩川グラウンドのように、選手とファンの距離の近さを意識。大型ビジョンやエキサイトシートも設置され、27年には水族館もオープン予定。
◆阿部 慎之助(あべ・しんのすけ)1979年3月20日、千葉県生まれ。45歳。安田学園で通算38本塁打。中大を経て2000年ドラフト1位(逆指名)で巨人入団。1年目から強打の捕手として活躍し、12年に首位打者、打点王、最高出塁率に輝きMVP。ベストナイン9度、ゴールデン・グラブ賞4度。通算2282試合で打率2割8分4厘、406本塁打、1285打点。19年限りで現役引退し、20、21年は2軍監督。22年1軍作戦兼ディフェンスチーフコーチ、23年ヘッド兼バッテリーコーチを経て、24年から1軍監督。右投左打。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【巨人】70億円大補強で臨む2025年スローガンは2年連続「新風」 阿部監督がハッパ「殻を破って」
東スポWEB / 2025年1月1日 12時14分
-
巨人 今季スローガンは「新風~2ND CHALLENGE~」 阿部監督日本一奪回へ「不退転の覚悟で」
スポニチアネックス / 2025年1月1日 5時2分
-
【巨人】創設90周年でリーグ優勝 オフは大補強 今季の軌跡、主なできごと
スポーツ報知 / 2024年12月30日 14時37分
-
巨人はなぜ田中将大を獲得したのか 今季1軍未勝利も...元ヘッドコーチが獲得を熱望した理由
J-CASTニュース / 2024年12月25日 11時41分
-
FA最大の目玉捕手に剛腕、元ヤ軍エースら…巨人の“お家芸”復活で「日本一以外許されない」
Full-Count / 2024年12月18日 15時38分
ランキング
-
1イチロー氏&松井秀喜氏が激論…日本野球の“未来予想図” レジェンドがぶつけ合った本音
Full-Count / 2025年1月3日 17時0分
-
2箱根駅伝の“超高速化”にOB驚愕「この時代じゃなくて良かった」 史上初の6区56分台が与えた衝撃
THE ANSWER / 2025年1月3日 19時33分
-
3ヤンキース最悪の契約に日本人 NYメディア“風化”させず…ファン同調「酷かった」
Full-Count / 2025年1月3日 16時1分
-
4清原和博氏 伝説の乱闘劇の裏側「着地した瞬間我に返った」 翌日謝罪も罵声「こら小僧!なめてんのか!」
スポニチアネックス / 2025年1月3日 20時37分
-
5箱根駅伝で「初めて見る展開」 青学大が連覇の前に見せた“乾杯”に反響「目頭熱くなった」
THE ANSWER / 2025年1月3日 21時3分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください