逃げずに「描ききる」 NHK大河に見たドラマ制作の新時代
スポーツ報知 / 2025年1月19日 16時0分
◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
江戸のメディア王・蔦屋重三郎の生涯を描くNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺」がスタートした。5日の初回から、蔦重が育った遊郭・吉原の抱える闇がリアルに展開。遊女が身ぐるみはがされ、裸で打ち捨てられたシーンは視聴者を震え上がらせ、ネット上でも多くの感想が寄せられた。
「べらぼう」には大河ドラマで初めて、センシティブなシーンで制作と俳優の調整役を担うインティマシー・コーディネーターの浅田智穂さんが起用されている。制作統括の藤並英樹氏によると「台本の気になるシーンについて、演出とプロデューサー、浅田さんがピックアップしていく。大きい役、小さい役、エキストラに関係なく、すべての俳優さんや所属事務所とのヒアリングを一人ずつ進めていく」という流れ。「事務所はOKと言っているが、実は本人が『嫌だ』と思っている…ということも防ぎたい」と細心の注意を払う。
当該シーンは、女性スタッフの協力を得るほか、撮影時の人数制限も徹底する。子役がそのようなシーンに参加する場合は、子役の周囲をシートで覆い直接的に目に触れないようにするなど、誰にとってもストレスなく撮影に向き合えるように作品作りをしている。蔦重という人物を描く上で吉原は避けて通れない存在。逃げずに「描ききる」という覚悟を感じた。
数年前から芸能界の性加害の問題が多く聞かれるようになった。表面化するようになったのは業界として一歩前進ではあるが、つい最近まで「体当たり演技」がもてはやされていた時代があったのも事実だ。いいシーンだったとしても誰かの犠牲の上にあるのでは意味がない。丁寧に対話し、なし崩し的なジャッジをさせないことが結果的に作品のクオリティー維持にもつながる。新たな風を吹き込んだ大河ドラマの今後にも期待したい。(芸能担当・宮路 美穂)
◆宮路 美穂(みやじ・みほ) 2007年入社。レイアウト担当を経て芸能担当。インタビューコーナー「宮路美穂の人生入門」は9年目に突入。
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