「大勝ちしたいので頑張ります」カザフスタン出身初の関取・金峰山が初無傷勝ち越しで単独トップ

玉鷲（右）を寄り切りで破った金峰山（カメラ・清水　武）

◆大相撲　▽初場所８日目（１９日、東京・両国国技館）

　西前頭１４枚目・金峰山が無傷の８連勝で単独トップに立った。カザフスタン出身初の関取は玉鷲を寄り切り、勝ち越しを決めた。西前頭５枚目・千代翔馬は宝富士にとったりで屈して初黒星。綱取りの大関・豊昇龍は正代に押し倒され、痛い２敗目を喫した。賜杯争いは１差で千代翔馬と尊富士が追う。２敗は豊昇龍、大栄翔、王鵬、玉鷲の４人となった。

　金峰山の勢いが止まらない。立ち合いからもろ手突きで玉鷲に圧力をかけた。粘る４０歳に押し返されたが「焦ったらダメ」と踏ん張り、もろ差しから寄り切って８連勝。自身初の中日での勝ち越しを決めた。平幕が単独首位の全勝で前半戦を折り返すのは、昨年春場所で新入幕Ｖの尊富士以来。支度部屋では「あと全部負けてもいいやって思いますね」と冗談を飛ばしつつ、９日目の尊富士戦へ「大勝ちしたいので頑張ります」と手綱を締め直した。

　元横綱・朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏の紹介で１８歳で来日した。柔道経験者で相撲を始めたのは１９歳。日大で実績を積み、木瀬部屋から２１年九州場所で初土俵を踏んだ。相撲歴６年でカザフスタン出身初の関取となり、２３年春場所では新入幕で１１勝を挙げ敢闘賞。１９５センチ、１８０キロの恵まれた体格で番付を駆け上がったが、その後は首痛に悩まされ続けた。

　師匠の木瀬親方（元幕内・肥後ノ海）には数年前から「突っ張り相撲なんだから、突っ張っていかないとダメだ」と諭されていた。言葉では「はい」と返事したが、心の中では「右四つで勝てる自信があった」と素直に聞き入れなかった。だが、昨年秋場所後に十両に陥落して目が覚めた。「もう（番付を）落としたくない」。自身の姿勢を改めた。助言通りに「突っ張って前に出よう」と決めると、首などの負担が軽減され、結果も伴った。

　しこ名「金峰山晴樹」は師匠の故郷・熊本にある標高６６５メートルの山と、師匠と日大の同期で在学中に亡くなった元高校横綱の成田晴樹さんに由来する。八角理事長（元横綱・北勝海）も「もともと力はあったが、あれだけ攻められればね」と高く評価。２７歳の平幕が、新春土俵の主役に躍り出ようとしている。（林　直史）

金峰山あらかると

　◆金峰山　晴樹（きんぼうざん・はるき）

▽本名　バルタグル・イェルシン

▽出身　１９９７年６月２４日、カザフスタン生まれの２７歳。故郷のアルマトイは、同国南東部のキルギス共和国と中国の国境近くに位置する

▽スポーツ歴　柔道経験者で元横綱・朝青龍の紹介で１８歳の時に日出高（現・目黒日大高）に編入。その後相撲を始めた

▽入門　日大を経て、２１年九州場所で三段目１００枚目格付け出しで初土俵。２２年秋場所でカザフスタン出身で初の関取となる新十両、２３年春場所で新入幕

▽得意　突き・押し

▽好きなテレビ番組　車、筋トレ、ビフォーアフター系

▽好物　すし。サーモンは外せない

　◆カザフスタン共和国　人口約１９８０万人。面積は世界９位の２７２万４９００平方キロ。首都はアスタナ。国語はカザフ語。宗教はイスラム系が約７０％、キリスト系が１７％。スポーツ人口はサッカーが最も多く、カザフ相撲、ボクシング、柔道、レスリングなど格闘技も盛ん。主要産業は石油・天然ガス、鉱業、農業、冶金（やきん）・金属加工。通貨はテンゲで１ドル＝約５３０テンゲ。

　◆過去の主な外国出身力士　１９７２年名古屋場所で初優勝したのが米国出身で元関脇の高見山。元大関・琴欧洲はブルガリア出身。元幕内の大砂嵐はエジプト出身だった。