巨人・西舘勇陽、佐々木朗希と“切っても切れない”因縁…１９年夏の胴上げ投手と、それをベンチで見ていた怪物

Ｇ球場のブルペンでツーシームを投げ込む西舘（カメラ・今成　良輔）

　巨人の西舘勇陽投手（２２）が２０日、Ｇ球場で自主トレを行い新球ツーシームを試投した。今季の先発転向へ新たな武器の習得を模索する右腕は先発ローテ入りへの思いを口にし、ドジャースと契約合意した同じ岩手出身で同学年の佐々木朗希投手（２３）から刺激を受けていることを明かした。３月１５日にはドジャースとのプレシーズンゲーム（東京Ｄ）が控えており、約６年ぶりの“再戦”を思い描いている。

　西舘の声がＧ球場のブルペンで響き渡った。「次、ツーシームいきます！」。しなやかな腕の振りから繰り出された白球は右打者の内角へ食い込むような軌道を描いてミットに収まった。「遊びで投げながらですね。こういう時期だからこそ遊びでいろんなものができると思う」。まだ試行錯誤の段階ではあるが、先発仕様へ新球種に活路を見いだしている。

　今季狙うのは先発ローテの座だ。「１年間先発として投げることが目標です」。１年目は主に救援で２８試合１勝３敗１セーブ、防御率３・８２。争いは激しいが、負けるつもりはない。昨季は直球、カットボール、カーブを投球の軸としていた中で、自主トレでは新たに打者の手元で微妙に変化するツーシームの習得に挑戦。ものにできれば、配球の幅を広げる大きな武器となる。

　発奮材料がある。同世代で同郷の佐々木がドジャースと入団合意に達した。「高校から次元が違うと思っていた。身近というか、同じ地域の同級生が海を渡って頑張るということはすごいと思いますし、自分も刺激になる。自分のペースで僕も頑張りたい」。新たな舞台へ臨む“令和の怪物”へ尊敬のまなざしを向けながら、自らを鼓舞する。

　不思議な縁で結ばれている。同じ右投げの本格派。岩手・一戸町出身の西舘は陸前高田市で育った朗希を中学時代から知っている。１９年７月２５日、大船渡の朗希が登板を回避した３年夏の岩手大会決勝で胴上げ投手になったのも花巻東時代の西舘。甲子園行きをつかんだのは自身だが、朗希とは投手としての実力差を感じ取っていたという。「高校生の時はああいう選手がドラフト１位で行くんだなって思った」。ライバルというより、同世代の道しるべとして、リスペクトしてきた。

　そんな存在と約６年ぶりの“対戦”が実現する可能性もある。３月１５日には佐々木の新天地ドジャースとプレシーズンゲーム（東京Ｄ）を予定。期せずして、同学年右腕と投げ合うことができるかもしれない。「メジャー相手に投げることはなかなかない。レベルの高い人に向かって逃げずに強気にいきたい」。開幕前の対決で好投すれば、ローテ入りへ最高のアピール材料。「（投げるためには）まず自分が１軍にいないといけない」と表情を引き締めた。

　春季キャンプは１軍スタート。自主トレではシーズンを戦い抜くための土台をつくっている。「長いイニングを投げることが必要。けがだけないように、１年間ずっと投げたい」。期待の若手から先発ローテへ。西舘が同世代の怪物の背中を追いながら、進化を遂げる。（宮内　孝太）

　◆１９年岩手大会決勝ＶＴＲ　序盤から花巻東がペースを握った。９―１と大量リードの６回からエース・西舘が２番手で登板。４回６安打１失点の好投を見せた。一方、大きな注目を浴びた佐々木は故障防止の観点から先発を回避し、最後まで登板せず。１２―２で花巻東が２年連続１０度目の甲子園出場を決めた。西舘は「花巻東の歴史で初めての２連覇。非常にうれしい」と語った。