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就職氷河期世代…だけど「楽しいことも結構あったじゃん」「50代の道しるべになる一冊を」…「50代上等!」著者・常見陽平さんに聞く

スポーツ報知 / 2025年1月22日 17時0分

「50代上等!」の著者・常見陽平さん。悲観一辺倒ではない世代論に仕上がった(カメラ・軍司 敦史)

 働き方評論家で千葉商科大国際教養学部准教授の常見陽平さん(50)がこのほど、5年ぶりの著書「50代上等!理不尽なことは『週刊少年ジャンプ』から学んだ」(平凡社新書・税別1000円)を上梓した。バブル崩壊後の「ハシゴを外される」不遇を味わい、「就職氷河期世代」「ロスジェネ世代」として何かと暗いイメージに包まれたアラフィフに向け、ポジティブに生きるためのヒントが詰まった一冊だ。256ページに込めた熱き思いを聞いた。(編集委員・加藤弘士)

■「楽しいことも結構あったじゃん」

-常見さんと私は誕生日が3日違いの同世代で、地方の公立高校で学び、大学進学と同時に上京したという共通項があります。結論から言いますと、めちゃくちゃ響く一冊でした。心のモヤモヤが晴れて、1996年9月7日のパンクラス東京ベイNK大会でバス・ルッテンに負けた船木誠勝が放った名言「明日また生きるぞ!」を叫びたい感じです。

常見 ありがとうございます。過去何冊も書いてきましたが、こんなに友達が読んでくれて、同世代から熱い感想をいっぱいいただいたのって、初めてなんじゃないかなと。

-我々の世代は「就職氷河期世代」「ロスジェネ世代」で括られ、いかんともしがたい時代の不遇を味わいました。お兄さんお姉さんらが元気だった「バブル世代」と比較して、「損した」「得られるはずの果実を甘受できなかった」という総括をしがちだし、されがちです。

常見 僕はもうリアルにね、何よりも北海道拓殖銀行の破綻に衝撃を受けましたよ。

-社会人1年目、忘れもしません。巨額の不良債権を抱え、1997年11月17日に経営破綻しました。戦後初めて大手銀行が破綻した事例でした。

常見 古い価値観だと言われそうだけど、札幌育ちの僕からすると、「札幌北か札幌南-北大-拓銀」というのが典型的な北海道エリート像だったんです。それが破綻するんだって、社会に出ていきなり大ショックでしたよ。でも確かにしんどいことは多かったし、大手メディアからはそのように括られる世代なんですが、よくよく考えたらそれだけじゃなかったとも思うんです。

-といいますと?

常見 中学時代はバンドブームで楽しかったな、みんな布袋やブルーハーツに夢中になったよな、深夜番組に夢中になって眠い目をこすって見たりしたよな、ナイキの「エアマックス95」が争奪戦だったな、大学時代はインターネットが出てきて、何かが変わる予感がしたよな…とかね。楽しいことも結構あったじゃんって。そこにしっかりフォーカスして、同世代を勇気づける本にしたいなって思ったんです。

-過去の不遇や、将来の不安といった悲観一辺倒ではない世代論ですね。

常見 確かに今でも仕事とか親の介護とか、50代にはいろんなことがあります。でもつらいことだけじゃない。楽しいこともあるよねって確認したくて。自分たちの「就職氷河期しぐさ」「自己責任グセ」に終止符を打ちたいという気持ちで書きました。

■「今日が人生で一番若い日」って思う

-読み進めていく中で、うっすらとある50歳の戸惑いの原因に「自分はいつまでも若いと思っている」と書いてあって、めちゃくちゃ刺さりました。

常見 年齢って非常に複雑なんです。記録に残る数字上の年齢…1974年に生まれたから50歳というだけでなく、精神的年齢、肉体的年齢、さらには社会的年齢とかがあるんです。

-「社会的年齢」とは何でしょうか?

常見 結局、会社の中でも先輩が跋扈しているな、上にまだまだいるな…となれば、自然と社会的年齢は低くなります。ある意味アンチエイジングだけれども、年を取らせてくれねえんだな、みたいなのもある。

-子供の頃に想像していた50歳の姿と、今の自分の見た目もそうだし、あとは置かれている立場とか心もようとかって全然違うじゃないですか。我が身を振り返ってみると、笑っちゃうぐらい未完成で未成熟です。一方でめちゃくちゃ、フットワークも軽い。

常見 50歳というものが、昔に比べると大きく変わっているんだと思います。僕がそれをすごく感じているのが、26年前の1999年9月15日に、矢沢永吉さんが50歳のバースデーライブを行ったんですね。

-行きました。僕は24歳でした。横浜国際総合競技場(現・日産スタジアム)の「ありがとうが爆発する夜」ですね。

常見 その時の永ちゃんのMCが「矢沢、続けられるまでやります」「50歳までロックやってる日本人、他にいないよ」みたいな感じだったんだけど、今、50歳のロックミュージシャンっていっぱいいるし、何よりも永ちゃんは75歳になってもマイクスタンドをぶん回してるわけです。

-ホントですね!

常見 昔に比べて年齢の取り方がバグってる感じがした時に、健康のことはやっぱり気をつけた方がいいし、いろいろ不安もあるけれども、自分が「50歳だから〇〇するのをやめよう」「もう50歳だからダメだ」みたいなことを考えずに、「今日が人生で一番若い日」って思うことがとても大事だと、僕は思うようになったんです。

-年齢を一旦忘れることで、生き方も楽になっていく。

常見 年齢って極論、自分の心が決めるもんじゃないのって。だから僕は、年齢に関係なく自分らしく生きることにしました。ある意味、市場拡大だったって話でもあるんだけれども、特にサブカルチャー的な趣味…それこそロックとかゲームとかって、いい意味で大人がやっても恥ずかしくなくなった。バスに乗っているときに、優先席に座っているおばあさんがパズドラやってると、なんか心が洗われたし。

-たまに見ます。悪くない光景ですよね。

常見 世の中、中高年が楽しくてなんぼなんじゃないのって気もします。「かわいそうな世代」を超えていこうよって訴えたい。「イカ天」見てギターをかき鳴らしたり、ラジオの深夜番組でパーソナリティーが攻めていること言ってドキドキしたあの感覚も大事にしながら、もっと元気に楽しいことをやろうよって呼びかけたいですね。

■幸せのカギは「時間の主導権を握る」

-人生が楽しくなるのもへこむのも、人間関係が重要だと思います。常見さんは本書で「周波数が合わない人、会っても疲れる人とは距離を置く」ことを提言しています。

常見 全部ブロックしろ、絶縁しろと言うわけじゃないんです。適度な距離の取り方とか、間合いって僕は大事にしていて。別に絶縁するんじゃないけど、この人とは食事しないとか、この人はプライベートな方に誘わないとかってことは、すごく大事にしています。

-20代の頃なんて、会社の上の人と行きたくない飲み会ばっかりだったじゃないですか(笑)。

常見 「きょうは早く帰ろう」と思っていたら、「おい、飲みに行くぞ」みたいな感じとか。しかもお前のことで悩んでいるのにっていう先輩や上司から「お前を励ます会を企画したんだ」って、うるせえよみたいな(笑)。それも不器用な上司や先輩なりの、優しさだと思っていたんだけど。

-さすがに憎んではいないんですけど、20代の仕事上のそういうのって、結構つらかったなってたまに、思い返すこともあるんです。今更どうしようもないんですけど(笑)。そういう意味では今後、本書で常見さんが書いている「時間の主導権を握る」が、とても大事だなと思います。

常見 時間の主導権さえ握っていれば、プライベートもビジネスも含めて、焦らないし、苦しまないし、余裕が生まれると思うんです。人生も後半戦ですから、無駄なストレスからは解放されて生きていった方が、幸せだと思います。

-この一冊を、どんな方々に読んでいただきたいでしょうか。

常見 同世代の方に「あなたのために書きましたよ」という一冊です。ある意味、卒業文集のような、学級新聞の壁新聞のような。50代の道しるべになるような本が、やっと書けたので、やっぱり同世代の方々に読んでほしい。50代の方が元気になれば、絶対に世の中は変わるし、明るくなるはずですから。明るく楽しく、前向きな話に…略して「ATM」に振り切った本です。ぜひぜひ、熱を感じて、元気になっていただきたいと思います。

◆常見 陽平(つねみ・ようへい)1974年4月4日、北海道・札幌市出身。札幌南、一橋大商学部卒。学生プロレスサークル「一橋大学世界プロレスリング同盟(HWWA)」にも所属。同大大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大国際教養学部専任講師。20年4月より准教授。いしかわUIターン応援団長、評論家、社会格闘家としても活動中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社新書)、『リクルートという幻想』(中公新書ラクレ)、『「できる人」という幻想 4つの強迫観念を乗り越える』(NHK出版新書)、『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版)、『「意識高い系」という病~ソーシャル時代にはびこるバカヤロー~』(ベストセラーズ新書)などがある。

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