「すごくラッキーだった」巨人・田中将大の財産になった１年間 フル回転を決意した原動力

初めてジャイアンツ球場に現れた田中将。鋭いまなざしでキャッチボールに集中する（カメラ・今成　良輔）

　巨人に新加入した田中将大投手（３６）が２４日、初めてＧ球場を訪れて自主トレを公開した。楽天を退団して新天地を求めた超大物右腕の注目度は高く、報道陣約６０人、ＴＶカメラ１０台が見守った。ヤンキース時代に共闘し、米野球殿堂入りを果たしたイチロー氏（５１）＝マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター＝から「頑張れよ」と激励メッセージを受けたことを明かし「とにかく日本一」とフル回転を決意した。

　マー君を歓迎するように、日が差し込んだ。午前９時１３分。ＴＶカメラ１０台、報道陣約６０人がスタンバイする中、田中将がＧ球場に足を踏み入れた。全身黒のウェアに身を包み、グラウンドに一礼。「新鮮な気持ちです。こんな気持ちに今でもなれるのはありがたいこと」。そして復活に向けて、自らムチを入れた。

　「とにかく日本一。個人としてはしっかり１軍の戦力になること。去年何もしていないので大きなことは言えない。チーム内の競争に勝つ。まずそこから」

　気迫すらにじむ始動には、一つワケがあった。２０１４年にヤンキースでチームメートだったイチロー氏が２２日、アジア人で初めて米殿堂入り。メッセージを送ると「頑張れよ」と熱く激励された。共闘は１年だったが「すごくラッキーだったなって。イチローさんと同じユニホームを着てプレーできたことは非常に大きな財産」。重みある一言もありがたく受け取った。

　プロ１９年目。右肘の手術明けだった昨季は０勝に終わり「年齢を重ねるほど準備に時間がかかる」と痛感している。指針になるのは常にレジェンドの背中。「イチローさんは常に準備を欠かさない。いつでも行ける状態にされていたのをバックヤードから見ていた」。例年、シーズン後はノースロー期間を設けていたが、今オフは「継続的に球を投げて体を動かす」と変化を加えた。年明けの沖縄自主トレから２３日までにブルペン入りは既に４度。開幕ローテ入りにも「もちろんそこは入っていきたい」と意欲。決意が体を突き動かしている。

　発奮材料はまだある。小学生時代に兵庫の「昆陽里（こやのさと）タイガース」でチームメートだった坂本と新天地で再会する。「ジャイアンツ入団が決まって、そこは自分が楽しみにしていることの一つ。何とか同じフィールドに立って、お立ち台に上がれたら。古くから知ってくれている人たちは面白いだろうし、そうできるように頑張りたい」と最高の景色を思い描いた。

　昨季１５勝の菅野が抜け、投手陣最年長となる３６歳。ランニング、ダッシュ、キャッチボールで汗を流した１時間２０分の間、日米１９７勝右腕のもとへ若手選手が次々とあいさつに訪れた。その度にサングラスを外し、柔らかい表情で「田中です」と丁寧に握手を交わした。「（後輩と）一緒に成長していきたい」。謙虚に繰り返した後、思いがあふれた。「いろんな経験はしてきているので、伝えられることはあると思う。それも一つ、自分の使命」。春季キャンプはＳ班始動。求められていることは誰よりも分かっている。（堀内　啓太）

　◆田中将のＧ球場初日

▽８時１０分　球場入り

▽９時１３分　三塁側の屋内練習場からグラウンド登場。カメラ台数やシャッター音の多さに「靴ひも結んでるだけっすよ…」と苦笑い

▽　同　１６分　左翼フェンス沿いからウォーキング開始

▽　同　２２分　ウィーラー巡回打撃コーチと談笑

▽　同　２７分　ランニング開始

▽　同　４３分　内海投手コーチらと６分間会話

▽　同　５１分　出力を上げて左翼から中堅までダッシュ開始

▽　同　５３分　再び内海コーチと会話

▽１０時０３分　ダッシュ１０本終了

▽　同　０５分　川相２軍野手総合コーチに自らあいさつ

▽　同　０７分　キャッチボール開始

▽　同　３２分　計１２７球を投じてキャッチボール終了

▽　同　５１分　囲み取材終了

▽１１時５９分　Ｇ球場でランチ後に球場を出る

　◆過去の主な巨人移籍選手の初Ｇ球場

　▽落合博満　中日からＦＡ移籍の９４年１月２３日。球場ではなかったが、よみうりランド遊園地でのイベント「ＧＯＧＯジャイアンツ」に出席。原、篠塚らからあいさつされ「初顔合わせって、昨年までもシーズン中に顔合わせてるんだから」。

　▽工藤公康　ダイエーからＦＡ移籍の００年１月２８日に自主トレ。松井、上原、江藤らと対面。報道陣の多さに驚き、松井に「マスコミ対策を教わりたい」。

　▽ラミレス　ヤクルトから移籍の０８年１月２４日に自主トレ。坂本らと対面してファン５０人にサイン会。「そんなの関係ねぇ！」などの本塁打パフォーマンスを披露。