「ボコ！」「ガキ！」「パカ！」強打で５４分圧倒…５６年ぶり快挙の園部八奏、名前の由来は“無限大”

勝利の瞬間、ガッツポーズで笑顔を見せる園部

◆テニス　▽全豪オープン　第１４日（２５日、オーストラリア・メルボルン）

　【メルボルン２５日＝吉松忠弘】ジュニアの部の女子シングルスで、ジュニア世界ランキング７位の園部八奏（わかな、１７）＝与野ＴＣ＝が、４大大会ジュニアの日本女子として５６年ぶりにシングルスで優勝した。同１０位のクリスティナ・ペニコバ（１５）＝米国＝に、わずか５４分の６―０、６―１で完勝。車いすテニス女子シングルスでは、パリ・パラリンピック２冠の上地結衣（３０）＝三井住友銀行＝が５年ぶり３度目の優勝。同男子シングルスでパリ・パラ優勝の小田凱人（１８）＝東海理化＝は準優勝だった。

　６９年ウィンブルドンの沢松和子から５６年。半世紀を超えた歴史的な勝利は、豪快なテニスとは裏腹に、少し控えめだった。右手を上げ、ニコリとはにかむだけで、相手との握手に歩を進めた。「心の中では、めちゃくちゃ（喜びが）大きかった」。追い上げるのが得意な相手だけに、ホッとしたのが先に立った。

　あっという間の５４分だ。「ボコ！」「ガキ！」「パカ！」といった強い打球音が、センターコートに響き渡った。「めちゃくちゃうれしい。意外といつも通りのプレーができた」。振り切る強打で、圧巻の８ゲーム連取。合計１３ゲームは、全豪ジュニア女子シングルス決勝史上最少ゲーム数タイの圧勝劇だった。サーブは、決勝で自身最速の時速１７７キロをマークした。

　ジュニアの日本女子としては、初のセンターコートに入った。１万５０００人収容のコートなど「初めてです」。しかし、コートに向かう前、コーチと談笑しながら、せっせとリップクリームを塗る園部だった。「１、２ゲームたったら、（緊張は）ほぼなかった」

　２２年に日本テニス協会名誉顧問である盛田正明氏が設立したテニス基金の援助を受け、米フロリダにあるＩＭＧアカデミーに留学した。錦織圭と全く同じ道のりを歩む。たまに、拠点で錦織に打ってもらうという。

　昨年末にアドバイスをもらったと、目をくるくるさせながら話す。「コートチェンジの時に、走ってタオルを置きにいくといい。スキップしたり、体を動かすと気持ちがリセットする」。すぐに実践に移し「すごくいい」。もちろん、この日も取り入れた。

　１７４センチの身長は、まだ伸びているという。日本女子にとって、まさに大型新人の誕生だ。「今年の目標はプロの大会で優勝すること」。ジュニアは４大大会だけの出場に限定する。ただ「もう一度、ロッド・レーバー（往年の名選手。センターコートの冠名称）でプレーしたい」。その舞台は、プロに取っておく。

　◆園部　八奏（そのべ・わかな）

　▽生まれ　２００８年１月１７日、さいたま市。１７歳。

　▽家族　両親と兄の４人。兄が友だちと始めたテニスを見て、４歳で始めた。

　▽サイズ　１７４センチ

　▽主な成績　２１年全国選抜ジュニア１４歳以下優勝。２１年１４歳以下国別対抗戦ワールドジュニア代表。２４年全米オープン・ジュニア準優勝。

　▽盛田テニス基金　２２年に同基金のテストに合格。英語は「全然、全然」としゃべれなかったが、身ぶり手ぶりで克服。

　▽左利き　テニスや文字を書くのは左だが、お箸は右。

　▽あこがれの選手　ウィンブルドン２度優勝のクビトバ（チェコ）。同じ左利きでばんばん打つところが一緒

　▽プレースタイル　フォアは片手、バックは両手打ち。サーブとフォアハンドを中心とする強打が軸

　▽得意なショット　フォアハンド

　▽趣味　ＹｏｕＴｕｂｅ観賞

　▽「八奏」の由来　「八」を洋数字にすると、無限大を意味するインフィニティ（∞）に似る。両親が無限に奏でるという意味で名付けた。