「続けていれば世界王者」豊昇龍、来日時には別競技で実力発揮 亡き恩師との「約束」果たし横綱へ
スポーツ報知 / 2025年1月27日 8時0分
大関・豊昇龍が3人による優勝決定ともえ戦を制して、逆転Vを成し遂げた。初場所後に、モンゴル出身では6人目の横綱昇進が確実となった。スポーツ報知では3回連載で、2場所連続の好成績を残した大関の心身の充実ぶりを探る。初回は高校時代の亡き恩師との絆。
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天国の恩師に届ける豊昇龍の綱取りだった。2015年にモンゴルから千葉・柏日体(現・日体大柏)高にレスリング留学した。当時の監督だった大沢友博さんが昨年秋場所5日目の9月12日、急性骨髄性白血病のため69歳で死去。温泉施設でくつろいでいる時に訃報(ふほう)に接した豊昇龍は、翌6日目の取組に敗れ、「ショックで朝は起きられなかった。負けてしまい申し訳ない」と悔やんだ。
14年10月にモンゴルで行われた選抜テストで、大沢さんに見いだされた。「何も知らない少年を、日本に連れてきてくれた」という恩人だ。入学約1か月後、豊昇龍は両国国技館で夏場所を観戦し、迫力に魅了された。その夜、同校関係者に翻訳アプリを使って「力士になりたい。横綱になりたい」と相撲転向を訴えた。その熱意を受け止め、最大限の理解を示してくれたのも大沢さんだった。
相撲部への転部後、指導した永井明慶氏(42)は「バク転やバク宙もでき、身体能力は抜群。将来性もあった豊昇龍を(レスリング部から)手放すのはつらかったはず」と振り返る。「レスリングを続けていても、間違いなく世界王者になっていた」と語っていたという大沢さんはその後も、異国で努力する教え子に愛情を持って接した。
昨年、大沢さんが入退院を繰り返していると知ると、豊昇龍は何度もお見舞いを希望した。だが、コロナ禍で親族以外の面会はかなわず。大沢さんの妻・智恵子さん(67)は「夫は余命わずかだと分かっていたけれど、大相撲を見て『闘病、頑張らなきゃな』と言っていた」と回想。豊昇龍の取組が病床での楽しみだった。
葬儀参列はかなわなかったが9日目(昨年9月16日)の取組後、茨城県内の自宅に向かい、遺体に手を合わせた。「最後に会ったときに約束した。もう上の地位は一つしかないから」と奮い立ち、遺族に「応援してください」と告げた。
豊昇龍は「生きている間に恩返しできなかったことが悔しい」と話したが、智恵子さんは「テレビの前で感動して、涙が流れてきた。きっと夫も天国で喜んでいるはず」と声を震わせた。悲しみを力に変え、力士になる覚悟を決めた原点の国技館で歓喜の瞬間を迎えた豊昇龍。横綱を手中にした裏には恩師との約束と、徹底した肉体改造があった。(特別取材班)
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