エンゼルス時代から水原一平被告を見続けた記者が現地で傍聴…「らしいな」と感じた部分
スポーツ報知 / 2025年2月8日 6時30分
米カリフォルニア州サンタアナの連邦地裁は6日(日本時間7日)、ドジャース・大谷翔平投手(30)の銀行口座から約1659万ドル(約26億円)を盗み賭博の胴元側に不正送金したとする銀行詐欺罪などに問われた元通訳・水原一平被告(40)に対し、求刑通り禁錮4年9月を言い渡した。大谷への1697万ドル(約26億円)の賠償も命じた。3月24日(同25日)までに出廷し、収監される。村山みち通信員が裁判の様子を「見た」。
6日(日本時間7日)午後12時50分。カリフォルニア州中部連邦地方裁判所10階A法廷の傍聴席は、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平投手の元通訳だった水原一平被告の判決を取材する日米の記者たちで満員だった。予定通り13時ぴったりに法服をまとったホルコム判事が現れ、開廷した。
開廷時間の40分も前、がらんと静まり返った法廷に紺色のスーツに小さな水玉柄の紺色ネクタイを締めた水原被告とフリードマン弁護士が入廷した。これほど早く来たのは何かのアピールなのだろうか。水原被告の体型はそれほど変わったようには見えなかったが、目に入りそうな長さの前髪と耳が半分隠れるようなサイド、襟足だけは少し長いという髪型は自分で切ったのかと思わせるようなアンバランスさ。能面のようなのっぺりした表情でぼんやりと前を見ているような姿は前回と変わらなかった。
今までの裁判と大きく違ったのは水原被告ではなく、周囲の人たちの振る舞いだった。まず、いつも自信に満ち溢れた大きな声とジェスチャーを交えて水原被告の行動を弁明するフリードマン弁護士が、終始柔らかい口調で話すホルコム判事による度重なる真っ当な質問にタジタジになり、判決が下る前にすでに完全降伏のような様相だった。
「大谷選手のもとで働くストレスが原因で借金が膨らんだ」「大谷選手の口座にたくさんお金がなければこんなことにはならなかったはずなので環境のせいだ」等と説明するフリードマン弁護士に対して、ホルコム判事は穏やかな声で、例えばこんな質問をした。
「(水原被告は)妻の度重なる日本帰国の費用がかさんだことも生活費を圧迫したとのことですが、検察の書類によるとファーストクラスの航空券を出していたのはミスター大谷ですよね?」
「ここに提示された金額はすべてエンゼルスからの給料ですか? ミスター大谷からの収入はなかったのですか? 検察の資料にはミスター大谷からチップも貰っていたし、歯科治療代金も貰っていたと書かれていますが?」
「ミスター大谷の郵便受けを確認する役目は水原被告が自らから申し出たことですか? つまり、それを自らの仕事にすることで銀行から届く明細の手紙などがミスター大谷に見られないようにするためではありませんか?」
ホルコム判事の質問はどれも、大勢の人たちが「私もそれを聞きたかった!」と思っていたものだったと思う。2時間近く傍聴席に座りながら、判事の質問をきいて記者も何度か思わず膝を打ちそうになった。優しい口調で本質的なことを指摘される方が、声を荒げた発言よりも急所を射抜くものだが、有名人の敏腕弁護士としてハリウッドで名を馳せるフリーマン弁護士もホルコム判事の的を射た質問にうまく回答できず、判事はもとより傍聴席の記者たちを納得させることはできなかった。
検察が水原被告のギャンブル歴を調べたが、10代の頃からギャンブル依存症であるとは言えない、とした。2022年の水原被告の収入は8万5000ドルで、家賃も車も大谷が支払っていたのに生活苦になったというのは無理がある。「ギャンブルで勝ってミスター大谷に返金したかった」と言っているのに、勝った時には自身の銀行口座に入金していたことなどを指摘し、水原被告の二面性(=虚偽)を強調した。
その後、水原被告が1分間ほどの短い文章を感情をいれずに淡々と読み上げた。自分のしたことでミスター大谷に迷惑をかけて申し訳なく思っていることや自らの更生を誓ったあと、判決にお慈悲を乞って締めた。水原被告は先に判事に提出した手紙でも自分の非より、この事件は状況や環境によるものだと受け取れるように書き連ねていたので、この締めが判決の心象を悪くするような気がしたが、「らしいな」とも思ってしまった。判事は表情を変えずに黙って聞いていた。
そして、判決。ホルコム判事は容赦なく求刑通りの判決を言い渡した。57カ月の禁錮刑と盗んだ約1700万ドル(約26億円)の賠償金。即日収監ではなく、45日以内(現地3月24日正午までに)に自主出頭という「お慈悲の乞い」と諸所の罰金の免除だけは受け入れられた。
ホルコム判事がこの判決に至った理由は、多くの人の胸の内を晴らすようなものだった。
「私には、被告が盗んだ1700万ドル(約26億円)というのは衝撃的(ショッキング)に高額です。ほとんどの人々が一生をかけても作れない金額。何度も何度も人生を繰り返しても(作れない金額)。水原被告が(自らが遣った)金額をすべて返金することを願い、それを(当局は)見続けます」
そして、判事はさらにこう続けた。
「水原の手紙は間違った説明と重要な事実の端折り(言わなかったこと)で埋め尽くされていて、彼の弁護士が言うことを裏付けられない。だから、私はこの手紙を信じない」
この判事の言葉に、自分の想いを重ねた人は多かったのではないだろうか。
水原被告は、もはや被告ではないが、大谷選手に長年献身的に尽くしてきた。それは事実だろうが、選手をサポートする仕事をどのような想いでやっていたのかは、本人しかわからない。エンゼルス時代に記者としてそばで見てきた水原元通訳のさまざまな働きぶりや彼の笑顔と、試合前後のクラブハウス裏の通路の隅で隠れるように電話をしたり、タバコを吸っていた姿の両方が浮かび、何が真実で何が嘘なのかは本人にしかわからないと痛感した。
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