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欧州新拠点から世界の最高峰へ…Jリーグヨーロッパ初代プレジデント秋山祐輔氏に聞く

スポーツ報知 / 2025年2月8日 9時0分

24年7月、鹿島との親善試合でシュートを放つブライトン・三笘(カメラ・今成 良輔)

 スポーツ報知ではスポーツをあらゆる側面から深掘りする企画「スポマニア」を随時掲載でスタートする。初回は、Jリーグが元日から欧州拠点として英国ロンドンに設立した「J・LEAGUE Europe(Jリーグヨーロッパ)」。初代プレジデントに就任した秋山祐輔氏がインタビューに応じ、Jリーグの“欧州進出”の先に見据えるビジョンなどを明かした。(取材・構成=金川 誉)

 Jリーグが欧州に拠点を置く―。「なぜ欧州?」「何をするために」との疑問が湧く。数多くの顧客を抱えていた選手エージェント(代理人)から、初代プレジデントに転身した秋山氏が強調したのは「欧州の景色をどうJリーグ、Jクラブ、日本サッカーに持ち込むか。接点を増やしていけるか」という点だ。

 「一つの方法論として、Jクラブ、Jリーグのレベルを上げていくために、監督などの人材情報をはじめとした、さまざまな情報、ノウハウ、ネットワーク、知識などを行き来させたい。日本からでもできなくはないと思いますが、欧州に拠点を置いて推進した方が、スムーズかつスピーディーにいくんじゃないかという考えの中で、拠点を作りました」

 今や選手たちの欧州移籍は日常となった。浦和のドイツ1部フランクフルト、FC東京のポルトガル1部ベンフィカをはじめ欧州クラブと提携し、そのノウハウを取り入れているクラブも増えている。一方で、J1~3の計60クラブ全てにその意識が浸透しているわけではない。資金面に恵まれないクラブほど、そういった機会に恵まれない、という現実がある。

 「極論、J3まで全クラブが(欧州クラブと)提携関係を持つことで欧州のさまざまな知見、いいものが入ってくる座組は作れるんじゃないかとは思っています。そういう意味ではクラブ提携して終わりではなくて、その先に何があるかっていう話です」

 具体案として挙がるのが欧州でのキャンプ実施だ。主に国内でシーズン開幕前のキャンプ(1月)を行っており、練習試合もJクラブ同士や大学生相手がほとんど。トルコでキャンプを行う広島の例もあるが、国内がメイン。Jリーグは現在の春秋制(2月~12月)開催から、26年途中からは欧州と同じ秋春制(8月~5月)へと移行する。この機会を、秋山氏はチャンスだと捉えている。

 「プレシーズンのキャンプを、なるべく多くのクラブがヨーロッパで行う仕組みが作れないか、と考えています。キャンプで関わることによって、(欧州クラブとの)垣根が低くなって、情報も含めて交流が活発化されればされるほど、有効化されると思う。ドイツ、オーストリア、オランダなどのクラブはオーストリアキャンプが多い。そこに(Jクラブが)入っていくことで、いろんな障壁、バリアをなくしたい」

 契約などの手続きを踏んだものではなく、日常的な交流が生まれる。

 「向こうのチームと話す、強化部の担当者同士が話す。監督、社長でもいい。わざわざ研修に行くより、もっと気軽に、もっと普通に交流というものができた時に、結果的にはJリーグのレベルが向上するんじゃないかと思います」

 選手たちにもメリットは大きい。そのレベルを肌で感じ、目指すべき基準を知る機会となる。日本代表や、欧州でプレーした一部の選手しか知り得なかった差を、毎年のように確認することで「ボディーブローのように効いてくるんじゃないか」(秋山氏)というアイデアだ。

 一方で欧州クラブとの接点が増えるほど、さらなる選手流出が進み、Jリーグが空洞化する、という懸念もある。

 「時期を切り取ったら、そういう時期が出てきてしまう可能性はあります。でも例えば、オランダ、ベルギーリーグは(プレミアリーグなどに選手を抜かれても)空洞化させていない。育成に力を入れている点もそう。またベルギーで言えば、彼らは選手を抜かれた時に思ったわけです。選手の供給先は(現時点では比較的安価に獲得できる)日本だ、と。日本人選手を獲得して、5倍、7倍(の移籍金)で上位リーグに移籍させる。そういった方法論に目をつけた。日本だって、アジア人の選手をJリーグ経由で欧州に移籍する時代が来たっていい。タイ代表、ベトナム代表の優秀な選手は全員、Jリーグにいるなんて時代が来てもおもしろい。だから空洞化を防ぐ方法はいくらでもあるんじゃないかと、考えています」

 Jリーグは昨季の総入場者数が1254万265人を記録。リーグ戦における最多入場者数を更新した。さらに成長を続けていくためには、新たな挑戦も必要な時期とも言える。

 「日本サッカーは日本経済ともつながっているのですが、スポーツの中で言うと、サッカーは一番グローバル。外の力も活用しながら、国内に取り込んでもう一回吐き出していくみたいなスキームは作っていかないと、行き詰まっていく。行き詰まらせないために、何かをしないといけない。Jリーグが、いや、本当に日本サッカーが、代表もW杯で勝って、Jリーグそのものが世界のトップ10から5に入ってくるようなリーグになって、外国人も日本人も、選手も監督も普通にいろいろな有名選手がいる、というところまでいけたら最高です。そのためには、まずは強くなること。もっと強くなって、もっといいリーグになって、もっと日本代表も強くなって、といういいサイクルを作り上げることに貢献したいと思っています」

新ルート構築にも期待

 1993年に開幕したJリーグは全体の流れとして、外国籍の監督、選手の獲得をブラジルに頼ってきた。欧州では放映権料バブルを受けて、監督、選手の年俸も高騰。獲得するには多額の資金が必要で、比較的人件費が抑えられるブラジル人と契約する方が経営面にも易しかった。ただ、ブラジルも近年は欧州出身者がクラブ監督を務め、選手も欧州にプレーの場を求めている。サッカーの最先端は欧州にある。

 Jリーグも分かっていたが、なかなか手を出せなかった。まずはルートの問題。欧州にいる監督、選手はさまざまな立ち位置のリーグが陸続きで存在するため、Jリーグは選択肢に入りにくい。J1上位の強化担当者も「(これまでの取り引きから)南米系にはルートがあるが、欧州にはツテがない」(J1クラブの強化担当者)とこぼす。紹介サイトに年間数百万円を支払い、リストアップ、コンタクトを試みるのが現状だという。

 Jリーグの欧州拠点でルートの構築、Jリーグの認知拡大の役割も期待される。

 ◆秋山 祐輔(あきやま・ゆうすけ)1974年4月20日、東京都生まれ。広告代理店勤務を経て、選手代理人(エージェント)に転身。契約選手には、南野拓実(モナコ)、上田綺世(フェイエノールト)、鈴木唯人(ブレンビー)、大迫勇也(神戸)ら日本代表クラスの選手がおり、多くの海外移籍をまとめた。エージェントを卒業し、2024年10月にJリーグヨーロッパのプレジデント就任。

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