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貫禄が浮き出た年輪の芸 阿古屋を完璧に演じられるのは現在、玉三郎だけ…【大島幸久の伝統芸能】

スポーツ報知 / 2025年2月9日 12時0分

「阿古屋」で胡弓を演奏する坂東玉三郎(C)松竹

◆歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」(25日千秋楽)

 中村屋一門が大切にしてきた猿若祭は特に18世勘三郎が心血を注いでいた。夜の序幕「壇浦兜軍記・阿古屋」で坂東玉三郎(74)が遊君阿古屋を演じている。

 勘三郎の子息・勘九郎、七之助兄弟の出演はないが、勘三郎は勘九郎時代、代官・秩父庄司重忠を1回、また2回演じた敵役・岩永左衛門は何とも憎々しく、だが愛嬌(あいきょう)たっぷりの面白さで玉三郎を引き立てていた。2人は盟友である。

 玉三郎が女形最高の難役と言われる阿古屋に初めて挑んだのは国立劇場開場30周年の平成9年1月。代表作にしていた6世中村歌右衛門の許しと助言を得て見事に演じ抜いた。豪華衣装、陶然とさせる立ち姿の美しさ。眼目の琴、三味線、胡弓(こきゅう)の三曲を演奏する“琴責めの段”は川瀬白秋の指導を受けて無心のような演奏だった。16回目の今回は歌舞伎座6年ぶり。恋人・平景清の行方を聴聞されるため呼び出され、捕手6人に促されて花道に登場。それは円熟した美貌(びぼう)美となっていた。

 三曲の演奏を始めた。最初の琴は10分間、三味線が8分、胡弓を8分と30分近い演奏。琴では恋人を思い出すうっとりとした笑みと恥ずかしさ、三味線になると神妙に、そして毅然(きぜん)と。胡弓では美しい形で遊君の位と意地を張りのある声で披露した。

 初演から一向に衰えない若々しい美貌、揺るがない演奏力、また堂々とした貫禄が浮き出たのは年輪の芸だ。初舞台から67年。阿古屋を完璧に演じられるのは現在、玉三郎だけだ。驚異の女形である。(演劇ジャーナリスト)

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